19 農閑期
楽しんでいただければ幸いです。
1537年冬 二階堂氏 ~須賀川城~
「どうだ行有、上手くいきそうか?」
「ええ照行様、今のところは順調のようです」
良かった。料理担当の者達との試行錯誤の結果、蕎麦切りは適当な配分量が決まりつつあるようだ。
「おそらく季節によっては微調整も必要だろうが」
「そこは料理人に任せていけばよいかと」
結局、蕎麦切りの制作に俺はあまり口をださなかった。
まあ、細かいところが分からなかったから出せるはずもないんだが。
その代わり、完成形を知っているのが俺だけだったので、何度も試作品を食べさせられた。
1日3食蕎麦だった日が4日も続いた時には、蕎麦を見るのが嫌になった。
ちなみに、個人的には蕎麦よりもうどん派なので余裕が出来たらうどんも打ってもらおうと思っている。
救荒作物で作っている麦はこれまで大麦ばかりだったのが、増産では小麦の作付けを頼んでいるのだ。
同時に碾き臼による製粉を一般化させて農民の労力を減らしていきたい。
農民達は米もそうだが、精米、製粉をする場合、人力の搗き臼で行うことから労力が大きく、小麦粉はぜいたく品とされている。
ただし、これも水車による精米、製粉が始まれば解決するはずだ。
問題は、この管理をどうするかだが・・・。
「行有、水車の方も試作は完成したらしいな」
「はい、揚水用の水車を作った者がおりましたから、照行様の図面を見ておおよその形が分かったので完成までに思ったよりも時がかからなかった様です」
素人の絵でも何とかなるもんだな。優秀な職人だ。
「それでは、これから水車小屋の管理を任せる者達だが、後家さんにやらせようと思っているが、どうだ?」
「良いお考えかと。照行様がご考案した千歯こきにより仕事が大きく減ったとの話もあります。幸い、印地により狩りが多く行われ、肉の加工を回しているので今のところ問題にはなっておりませんでしたが」
我が領内では、印地が流行して上手い者は鳥を石で打って捕まえることができる。
ただし、表向きは肉食を禁じられている宗派もあるので、加工をした上で薬として食べている。
このためなぜか我が領内の者は定期的に体の不調を訴える者がいるのだ。(もちろん仮病だが)
大崎に行った際にも、印地隊で同じ事をして薬(加工肉)を食べていた者達が多くいたため、一部で二階堂氏の兵は弱兵だと侮られたらしい。
多くの宗派では僧侶に妻帯肉食を禁じてはいるものの、信徒に関してはある程度寛大だ。
四つ足は好まれないが、鳥は大方大丈夫らしい。
兎が一羽と数えられるのも、鳥に見立てて食べていたからだという話があるくらいだ。
ちなみに、後家さんが薬となる加工肉を作っているためか、一部ではこれが後家ぐすりと呼ばれているらしい。
一部の男どもが妄想でヒャッハー!する光景が思い浮かぶのは俺だけだろうか?
「これから大工や石工などの職人は重要になってくる。優遇して囲い込め。既に伊達氏では優遇策を進めている」
「そうですね。西山城で貴重な本を写本させていただきましたが、稙宗様がお考えになった政策でも職人を優遇して領内に留まらせるようにしておりました」
戦国時代のチートである伊達氏は内政が優秀なのだ。
稙宗殿は伊達氏への中央集権化を目指して着々と手を打ち始めている。
「いい所は積極的に取り入れなければな。石工には碾き臼を作らせたい。始めは人が手で回すもので良いが、大工と協力して水車の力で回す碾き臼を作らせてくれ。これで生産力が大きく上がる」
「そうなれば領民も豊かになり、周辺から噂を聞て二階堂領へ移る者も出るかもしれませんね」
この時代は、人別帳も完全ではなく民があまり管理されていなかったので、どこの集落に誰がいるかなど把握できていない。
よって貧しい土地や厳しく年貢を取り立てるところでは農民の逃散が起こるのだ。
場合によっては、集落側が自分たちでどこの大名につくかを決めることもあるので領民の管理には注意が必要だったりする。
来年に向けて、やれる改革は全てやっておきたい。なぜかって?
それは、伊達氏から正式にまつ姫が二階堂へ輿入れするからだ!
読んでいただきありがとうございます。
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