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16 胡蝶の夢

楽しんでいただければ幸いです。

転生説明回の様な感じです。

1537年初秋 二階堂氏 ~須賀川城~



「父上、長沼城より蘆名氏が完全に撤退したようですね」

「そうじゃ照行。何せ刈入れ前には集めた農民を集落へ戻さねばならぬからの」

「しかし、怪我人は多いでしょうから長沼周辺では困ることでしょうね」

「その時は他から助けでも呼ぶじゃろう。それはそうと照行、聞きたいことがある」

「何でしょう父上」

そう言って晴行を見ると、父は目を細めながら俺を見通す様に言った。


「なぜ、蘆名氏が攻めてくると確信していた。それもどうして松山城を狙うとわかったのだ」

一瞬言葉に詰まったが、今後のことを考えここは出来るだけ正直に話した方がいいだろう。

「父上、行有を除いて人払いをお願い致します」

「・・・分かった。皆下がれ」

こうして部屋には俺と父晴行、そして行有の三人だけが残った。


「父上、私が結城攻めの前に落馬したことを覚えていらっしゃいますか」

「うむ、半日ほど意識を無くした時だな」

「はい、私はその時、心に不思議な変化が生まれたのです。ここはどこなのだろう。これは胡蝶の夢なのかと」

「荘子の逸話だな」

「ええ、その時の記憶では別の世で生を受けて生きていたはずなのに、なぜ須賀川城にいるのか一瞬理解できなかったのです」


「よくぞ混乱しなかったものだ」

「混乱はしました。始めはこれは夢の中なのではないかとも思っていました」

「それならば聞くが、お前は別の世で何をしておったのだ」

「私は須賀川の地で商いをする者でした。しかも、店主ではなく手代の様な者でした」

「それが目覚めて見たら武士になっていたと」

「はい、そうなのです。しかし、都合のいいことに自分は照行なのだという記憶も蘇ってきたのです」


「正しく胡蝶の夢だな。もしくは邯鄲の枕というところか」

「邯鄲の枕に出てくる農民のように一生を生き切ってはいませんが、もしかするとそちらの方が近いかもしれません」

「不安ではなかったのか」

「そのうちに夢ではないのだと思い至りましたが、元に戻れるかどうか分からないのであれば、今を懸命に生きるしかないのだと考えました」


「荘子ならば逍遥遊だが、老子の無為自然とも言えるな」

「正直に申せば、私の場合は諦めの境地かもしれません」

「・・・にわかには信じがたい話だが、おそらく真実なのだろうな。普通ならば嘘を付くにしても、もっとましな話をするだろう」

「私には今より後の世を生きた記憶があり、これから二階堂に係わる出来事を少しだけ覚えています。ですから私はこの記憶を使って二階堂の力になりたかったのです」


「それで印地隊に加えて松山城を守るための方策を進言したと」

「おそらく松山城は落ちなかったでしょうが、少しでも被害を減らしたいと思いました」

「では、なぜ今になって本当のことを言おうと思ったのじゃ。聞いた儂が言うのもなんだがの」

自分の中で納得するところがあったのか父も少し気持ちがほぐれてきたようだ。

「それはこれから二階堂領内を父上のお力をお借りして改革するためです」

「改革は良いが、確かに我が領内は周りと比べて特別発展している訳ではないものの、それ程遅れている訳でもないぞ?」


「はい、二階堂領は奥州街道が通り、越後へと向かう道や岩城へと向かう道もある交通の要衝ですから、周りより遅れているとは思いません」

「それでは二階堂領内をどうするつもりじゃ」

「これには父上が係わります」

「儂がか?」


「はい、私の記憶では数年後に父上が病で身罷みまかることになっているのです」

「何じゃと・・・」

「今の二階堂において父上が不在となることは大きな損失であり、どうしても避けたいのです。ですから、父上には私の改革により生活を改善をすることで少しでも長生きしていただきます」

数年後に起こる伊達氏の内乱、天文の乱が始まる同じ時期に、史実では父晴行が病死する事になっていたと記憶している。

これを回避するためにも俺は二階堂領内の改革を行うのだ。


読んでいただきありがとうございます。

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