14 邂逅
楽しんでいただければ幸いです。
1536年 二階堂氏 ~須賀川城~
俺達は須賀川城へ戻ると、旅の埃を落としてから父晴行へ戦の様子を報告した。
「父上、只今戻りました」
「無事に戻ったか照行。して、戦の様子はどうじゃった」
「はい、此度の戦において奥州探題大崎氏に往年の威勢は見る影もなく、伊達氏と諸将が大崎氏の内乱を治めました。戦について詳しくは行有より後程報告いたします。これで伊達氏は守護職としての権威が一層高まりましょう」
「稙宗殿からすれば本心では陸奥国守護職などでは物足りないとお考えだろうがな。幕府の者より聞いていたが任命したにもかかわらず伊達氏が上洛せず、督促して稙宗殿が上洛したのは3年後だったからの」
「実質、奥州の盟主は既に伊達氏でございましょう」
「ふむ、それでお前の狙いは果たせたのか」
「稙宗殿、晴宗殿に少しは二階堂に面白いやつがいると覚えていただいたかと。今後も機会を見て連絡を取るつもりです」
「そうか、伊達氏とは今後も良き関係を築かねばならんからな。それはそうと、稙宗殿は蘆名氏にも娘を嫁がせると聞いたが」
「はい、蘆名盛氏殿の正室として嫁すと伺いました。これで奥州における伊達氏の影響力はさらに大きくなることでしょう」
「そうだな、今の奥州において伊達氏へ対抗できるところはあるまい」
「そう言えば此度の戦で盛氏殿をお見掛けしました。見事な戦ぶりで稙宗殿も褒めておりました」
「蘆名氏は当主の盛舜殿の代でも支配を広げている。盛氏殿がそれほどの武者であれば、伊達氏の後ろ盾を得てどう出るか・・・」
「そこは大いに懸念されるところです。二階堂は祖父 行詮様の代で蘆名氏に長沼の地を奪われておりますから」
父と俺は蘆名氏への備えを話し合い、蘆名氏の長沼城に面する支城の整備を進めることにした。
おそらく狙われるのは松山城あたりだろう。
ここで弱みを見せる訳にはいかない。
今後の戦略を考えると蘆名氏にも二階堂の存在をアピールしなくてはならないのだ。
さて、それでは対策を行有に丸投げすることとしよう。
1536年冬 蘆名氏 ~黒川城~
「盛氏、稙宗殿の娘との婚姻が正式にきまったぞ」
「ありがとうございます。蘆名に良き縁となりましょう」
「そうだ、これから奥州の要として伊達氏の力は無視できんからな。ところで、噂に聞く照行殿はどのような人物であった」
「そうですね。正直申して掴みどころがない人物でした。城攻めでも手柄を立てる気配も見せず、援護に専念しておりました。伊達氏の西山城でも書物を写本していたと聞いています。二階堂氏らしく官吏としての才を持つ方ではないかと感じました」
「そうか、初陣で将を討ち取ったと聞いたが、どうも戦が得意というわけではないようだな。優秀な補佐役がいるのかもしれん。話に聞く印地はどうであった」
「はい、城攻めでしたから守備兵の妨害程度の働きしかしておりませんでしたが、野戦となれば身を守るものも少ないですから、兵にそれ相応の被害が出るでしょう」
「そうか・・・。ならばひと当てしてみるか」
「相手の力を測るにはそれも良いかと」
「田村隆顕殿とは既に盟を結んでおる。時期は来年の初夏とする。支度を進めよ」
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