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綿々たり
虧月に病めし予が心
落つるば其処に水母の死顔
夜は何時にも腹の中
泣けど笑えど暗き帚木
意地と就り自と違れし筆の脚
住く頃迄の
辛抱就る哉
亡没を恐れし頃の予が恋し
今将に
生けながらにして衰えるかし
腸食らえる予の中の蟲
薬ば含めど苦しめし
此儘朽ちるも惜しく非ずか
母の香華を眎入る度
母が神をはかなきを
暗き海の底を眎ゆ
息苦し辻風の中
過去りて過呼吸に就り
畢生終えし
歩を転じ戦慄く思いに
街を行く
恰も罪でも犯した如く
夜も二時
寝らざる時分が
最も苦しき
人の顔下よりのぞく悪しき癖
人も亦疑心の目持て
ジロリと眎しぬ
雨降る春の疲れし予が心に
冷たきか汗の流るる
滝の如くに
車にて父の眎し
見知らぬ親子の
笑む姿
泣きたしと夕波流るる
春の日に
涙の出でざる思いの浅きか
浴場にて
自が細きに哀れと思いき
今昔の感よいと苦しき哉