第九話 ルーナ、驚く
「さて、ルー。ボクの状況はわかってくれたかな?」
ボクが森で目が覚めてから今までの事を話している間、黙って耳を傾けていたルーに確認をする。
「うん。簡単に言えば、一つはユウが異世界の人間でその辺の事で面倒事に巻き込まれたくない。だからルゥに口止めをしておきたいってことだよね?あともう一つはこの世界について教えてほしいってこと。」
「確かに簡単に言っちゃえばそうとしか言えなくなっちゃうな。ときにルー、君たちにとって異世界人ってどういう扱いなの?」
「ルゥ達? それは竜族の中で? それとも全体の意味で?」
「今のところは全体の意味でかな?竜族については後からまた詳しく聞くかもね。」
「そうだねぇ、異世界はあるっていうのはどの種族の伝説でも聞くと思うよ~。それに最近ある国で神託が下ったっていう噂がいろいろなところでされていてね、その内容が〈異邦の民何処かより訪れん。其の者等各々の土地に祝福を齎すであろう〉なんていうものらしいよ。異邦の民っていうのが異世界から来た人って意味ならユウの事知られたら大騒ぎになるかもねぇ。」
「うわ。それは勘弁してほしいかな。それならルー、このことは喋らないでおいてくれ。もしうっかり喋っちゃたらボクに報告すること。いいね?」
「わかったよユウ。このことは他の人がいる前では話さないよ。」
「ああでも、もしそのことを内緒にしていることでルーに危険が及ぶようならその時は喋っちゃっていいよ。その時も報告すること。その後すぐに対策を考えるからね。」
「うん、了解だよ。それにしてもユウ、強いね。話を聞きてると自分の全く知らないところに一人で放り出されているのにほとんど迷わずに行動している。ルゥだったら今頃パニック起こしているよ。それにすごく優しい。そんなのずっと見ていたら、いずれユウと幸せな家庭を作りたくなっちゃうかもね。」
「あ~・・・。それは無理かなあ?「なんで!?」いやボク一人称が〈ボク〉だし、性格や体形もこんなだけど女だよ。それに竜族と異世界人・・・はおいとくとして人族って結婚とか子作りってできるの?」
「えっえっえ~~~~~~~~~!? ユウ女の子だったの!? 全然気づかなかったぁ。でもそんな態度は変えなくていいよねっ!(それに、これはこれであり・・・かな? うん、ルゥは女の子同士でも大丈夫っ!)それと別に種族は違っても大丈夫なんじゃないかな? ルゥ達竜族も人化できるからね。一部の国以外では異なる種族の共存なんてしていないけど結婚もできるよっ!」
・・・? 今、何かルーのとんでもない性癖を目覚めさせてしまった気がする・・・。
ちょっと想定通りの展開になっていたら怖いな。
よし、ここは聞き返さずにスルーしよう。
(今後旅をしていてそんな展開にならないといいなぁ・・・。)
「うん、ルーのしたいように接してくれればいいよ。それじゃあ今はハーフやクォーターって存在はいるの?」
「う~ん、いるとは思うけど見た目だけで見分けるのは難しいと思うよ。血とかではハーフってわかっても外見はどっちか片親の遺伝らしいからねぇ。例えば人間の母と獣人の父の夫婦から生まれる子供は、獣人の外見の子供と人間の外見の子供ができるよ。極稀に両方の外見の混ざった子供が生まれてくるけどほとんどいないかな。」
「なるほどねぇ。・・・と、かなり話がずれたね。まあ条件については大丈夫かな。それと主従になるには何か必要なものとかあったりする?」
「特にはないよぉ。ルゥは従者としてユウのそばにいたいだけだからユウの許可があればべつにいいよ。」
「わかった。じゃあルーをボクの従者であることを認めるよ。ただしさっきの条件は守ること!」
「了解だよぉ。ユウ、これからもユウって呼んでいいかな?」
「あぁ、いいよ。ルーの好きなように呼べばいいよ。」
「じゃあ、ユウのままでいくねぇ。それでね、ユウはこれからどうするの?」
これからか、ドラゴンもといルーを威圧する前は、もしボクに懐いちゃったらついてくるのを拒むか、ついてきても町から見えない場所に隠れていてもらって一人で町に行って情報収集しようかと思ってたけど、こんな状況になっちゃったしなぁ。
まあ、情報はいくらあっても損はないから情報収集は継続する。
(問題あるとすれば情報の真偽の確認が面倒なだけだね。)
そうなると町へ向かうのは決定事項となるがそれ以降はどうとでも行動できるように寝るところの確保をしてからにしよう。
「う~ん。町に向かうかな。何をするかは着いてからで。そこでルー、聞きたいことがある。」
「うん? 何々、答えられることならいいよ。」
「町とか村とかの人が集まる場所をルーは知っているかな? あと、その場所で寝泊りするところを探したいんだけどボクはお金がない。だからお金かお金になるものってないかな?」
「人が集まるところはねぇ、ルゥがユウに出会う前に向かっていた場所があるよ。でもね、お金とかは持っているんだけどねぇ。たぶん二人分の宿泊賃はないと思う。」
「そうなんだ、どうしようかな?」
「あ、そうだ。お金を稼ぐ方法ならあるよぉ。着いたら日雇いのお仕事を探すとか、盗賊を見つけて身ぐるみはぐとか。ユウの強さならいける筈だよ。」
「う~ん。今考えても仕方がないしこれも町についてから考えよう。」
最悪の場合、野宿をしてもいいかな。
一人だと安全な場所を見つけないといけないが、二人いるから寝ずの番を交代ですれば当面は過ごせるだろう。
「さてと、ある程度は状況の整理もできたし、これ以上ここにとどまって考えていると夜になりかねないな。そろそろ休憩も終わりにして出発しようか。道案内とこれからよろしくルー。」
「うん! 方向はこっちだよ。町に向かっていざしゅっぱ~つ!」
「あ、そうそう。町に向かっている間にお金の単位とか価値、他の常識とかも教えてくれるかい、ルー?」
「そっちも了解だよ~。まずはどんなことから聞きたいの?」
「そうだな、まずはお金についてからで、次にお金の稼ぎ方かな。」
とまあ、こんな話をしながらボクとルーは次の町へ向かっていった。
次以降の話とかみ合わない文章があった為一部改変させていただきました。
改変箇所は異なる種族での結婚についてとハーフについてのルーナの言葉です。