第八話 約束事
さて、簡単な現状把握と今後の基盤となる方針は決定した。
決定したとは言っても〈今はとりあえずここで生きていく〉なんていう行き当たりばったりな方針である。
考えることを放棄したともいえる。
(だって考えても何も出てこない結果が見えてきたんだもん!)
なんて心の中で思ってしまった自分を戒めたい。
というかボクにこんなキャラは似合わない。
はっきり言って気持ち悪いだけである。
さてそろそろ休憩を終わりにして人の集まる場所を探したいのだがもう一つだけ考えなければならないことがあった。
ルーナに今気づいたことを伝えるかどうかである。
このことを伝えるか否かによって今後の状況が少しずつ変わってくる。
ルーナにボクが異世界から迷い込んだことを伝えないとする。
ボクはこの世界での常識的なことを何も知らない。
そのためそのことについての設定を考えなくてはいけなくなる。
その後常にその設定に基づいて行動しなくてはならないわけだがそれは流石に厳しすぎる。
まあ最初はごまかすこともできるだろうが後々にボロが出る可能性が高い。
逆にルーナに伝えるとするとどうだろう。
以前読んだ本に異世界を旅をする物語がいくつかあった。
それによるともし異世界から来たことがばれるとすると主人公に様々な立場の変化が訪れる。
変わらないものも当然ある。しかし大抵は、権力者から勇者などと呼ばれ国のために戦わされたり、逆方面だと災厄扱いで指名手配なんてのも可能性としては考えられる。
ならば伝えるとすればルーナ自身に広めさせないと言質を取る必要がある。
さてこの二つを比較するわけだが、今後のリスクや手間を考えると伝える方がいろいろと得がある気がしてくる。
まず、きっちり口外しないと言質を取っておけば、うっかり漏らされたとき以外は危険性は少ない。
次に事前に話しておけばルーナがある程度の常識を次の目的地までに教えてくれるかもしれない。
最後にその情報によってボクの今後の身の振り方などの方針が見えてくるかもしれない。
そう考えると少々デメリットはあるかもしれないがそれに比べてメリットが大きい。
(よし、なら早速伝えることにしよう。)
そう決意しルーナに視線を向け口を開く。
「ルー、ちょっといいかい?」
「うん? 何々?」
「ボクがルーのご主人様にな「なってくれるのっ‼」ちょっと落ち着いて。その話なんだけどもしボクがそうなったらボクは何をすればいいの?」
「う~ん。特に何もしなくていいよ。ルゥが勝手にユウについていけば強くなれるって思ったからと、ルゥ自身がユウの従者になりたいって思っただけだから。できればだけどまだまだなところがあったら指摘したり、どうすればよくなるか教えてくれればいいかな。」
(なるほど、それならいいか。主従の関係になっておけばいろいろ融通が利くようになるかもしれない。
当面はボクの着た所だけ口止めしておけばいいか。)
「よし、ならボクはルーのご主人様になってもいいよ。」
「本当っ‼ やった~~「ただし!」うぇ?」
「ボクの従者としていくつか絶対に守ってほしいことがある。」
「何々?」
「それは、ボクは出自が少し特殊なんだ。それについて話させてもらうんだけど、そのことは絶対に他人に言ってはいけないこと。もしうっかり言ってしまったらボクに必ず話すこと。まずはこんなところかな?また長く一緒にいるうちに増えていくかもしれないけどどうかな?」
これは言葉にした通り最低限の約束事である。
これらさえ守られていればこの世界での異世界人の扱いがどんな状況でも、面倒事に巻き込まれることは格段に減る。
そのためボクは自分の事をルーに説明する前にこの約束を取り付けておきたいのである。
さて、この約束事を聞いたルーの反応はというと・・・。
「・・・・・? うん!それくらいならいいよ。別に困ることもないし、ルゥはそれなりに口は堅いよ。」
ポカンとした後、すぐに理解できたのかうなづいてくれる。
というかルー、自分でそれなりにとか言っていると本当なのか少しだけ不安になるからはっきりしてほしい。
とまあ少しルーの言葉に不安はあるが信頼を寄せることにしてルーにボクの事を話そうと決意する。
そして順を追って話していく、森で目覚めたこと、森の中で起きたこと、ルーへの質問の答えから今の状況が少しだけ見えてきたことを。
その間ルーは、不思議そうな顔をしながらボクの話を黙々と聞いていた。
そして十数分後、こっちに来てからの全ての話を終えた。
次にボクはルーとの約束事の再確認と主従関係について話を進めていく。