第七話 状況把握
ボクはルーと視線を合わせ口を開いた。
「ルー、これから君がボクについてくることを許可するよ。
ただし、他に人がいるときに竜関係の話や自分の正体についてはばらさないでね。」
「本当?わあ~、ありがと!ユウ。それについては大丈夫だよ。自分から面倒を増やしたくないし。」
「というかルー。君はボクが許可しなくてもこっそりついてきていただろう?」
「えへへ、ばれてた?」
「そりゃばれるだろう。何が何でもついて行ってやるって目をしていたくせに。」
「あはは、それもそうかぁ。じゃあご主人様についてはどうするの?」
「それについては少し保留でいい?それとさっきの戦闘とそのあとの事でちょっと疲れちゃってね。少しばかり休憩してもいいかい?」
「うん、わかった。でも早いうちに教えてね。休憩はちょっと待ってね。」
ルーはそういうと目を閉じた。
様子から見て周りに危険な気配がないか確認しているんだろう。
ルーは気配感知を始めて五秒ほどで目を開け、口を開いた。
「うん、ここでなら短時間の休憩であれば大丈夫だよ。というかなんでかそこの森の生き物たちの気配がおびえていたんだけど、ユウ何か知らない?」
「森の生き物がおびえてる?・・・・・ああ、確かに少しおびえているような気配があるね。」
ルーが言ったことを確認するため、気配感知を森の方に向けてみる。
ちなみに気配を探るのに目を閉じるのは通常時ならいいが戦闘時では危険である。
生き物(特に人間)は視覚でものの情報をとらえることが多い。
なので視覚を遮ることでほかの感覚が鋭くなり、気配を感じ取りやすいらしい。
しかし、戦闘時や逃走時にそんなことをやっていると不意を打たれたらすぐに詰んでしまう。
そのため最終的には目を閉じずに気配を感じることができれば一人前である。
ボクはそのように教育を受けていたし、実戦でもできるように鍛えられていた。
そのためボクにとってルーの気配探知は少々未熟であった。
そして一瞬の気配感知の結果、確かに森全体の生き物がおびえているような気配が伝わってきた。
「ねえルー。ただ森の近くに竜族のお前が来て暴れてというかボクと戦闘していたからその気配におびえているだけじゃないの?」
森の中の様子に少しばかり心当たりがあったりするがここは先ほどの戦闘のせいということにしておく。
(少しどころか確信に近いけど森の中を軽めの威圧をかけながら歩いていたせいだと思われる。)
「う~~ん、そうなのかな?まあいいや、休憩の間こっちに襲ってきそうな気配はないわけだしねぇ。
ところでユウ、方向が確定していたとは言ってもかなりすんなりと目も閉じずに気配感知やったみたいだけどそれってどうやるの?」
「ただの修行の成果かな?そのままの状態や戦闘状態でも気配を感知できるように長時間練習していただけだよ。それよりも軽く休憩しようか。」
「うん。そうだね~。」
ボクはそういって近くにあったちょうどいい大きさの岩に腰を掛けた。
ルーも隣に座ってくる。
そしてボクは思考を始める。
今までの情報をまとめてみる。
目が覚めたら見知らぬ森の中にいた。
見知らぬ獣が出てきた。
森の中を探索中、今まで見たことのない植物をいくつも見つけた。
森を抜けたら広大な草原だった。(もちろんこの草原も見たことがない。)
そこで少しの間呆然としていると架空の存在であるはずのドラゴンが下りてきた。
一か八かの賭けでドラゴンをおとなしくさせた。
そのとき武器として使ったナイフは今は使えない状態である。
その後おとなしくなったドラゴンが光りだしたかと思ったら、光が収まったときそこにいたのは見知らぬ少女だった。
少女と会話をしてみると少女はルーナという名前で、先ほど戦ったドラゴンだという。
そしてルーナとの会話で竜族、魔力など耳慣れない単語が出てきた。
とまあ得た情報はこんなところである。
まだまだ情報は不足している。
まだまだ知らないことが多すぎる。
今の状況が完璧に理解しているとも言い難い。
そしてこれは夢なのではないかという思いも未だに心の中にある。
しかし目の前にいる存在、自分が今まで遭遇したことのない、それでいて思考の追い付かない出来事、それを半日もかけずに体験してきたこと、今聞いた情報すべてを以ってはっきりと言えることがあった。
それは小説やアニメの中で出てくるものであり、想像の産物であると今まで思っていたもの。
そうボクはいつの間にか異世界に迷い込んでいたのだ。
なんで迷い込んだのかも分からないどうやって帰ればいいかも分からない、そもそも帰れるかどうかすら不明な状態である。
しかしはっきりしていることもある。
ここは異世界である。そのため今まで培ってきた知識の一部は使えなくなるであろう。
例えば物理。物理の法則はある。
しかし魔力というボクのいた世界では未知の力も存在しているため、物理は絶対ではないらしいということ。
そして生態系が完全に違うということ。
これはルーナ達竜族が存在しているらしいこと、森の中で発見した見たことのない動物や植物によって確定である。
そして二回襲われた後考えることで分かったこと。
ここは弱肉強食を最も簡単に体現した世界かもしれない。
どうしてボクがこの世界に迷い込んでしまったのかは不明だ。
しかしそこは考えても何も出てこない。
だからそんなものは後回しである。
元の場所に帰ることができるできないはこの際どうでもいい。
ボクは今のこの世界をどうやって生きていくかだけを考えていこう。
そうすればいずれ必ず進むべき道が現れるようなそんな予感がした。
ボクは今この時点で異世界だと理解できた。
ということはこれがボクの異世界での生活の第一歩目である。
さてこの後はどんな出来事が待っているのだろうか。
そんなことを思いながらもボクは思考を続けていた。
誤字脱字または読んでいての違和感があったらご指摘お願いします。
確認後修正などしていこうと思います。