第二十二話 宿屋での話し合い
みなさんお久しぶりです、ナトセです。
久々の投稿です。
一区切りできるところが見つからなくて少々長くなってしまいましたが最後まで読んでくれると嬉しいです。
部屋に取り付けられた窓から徐々に外の光が差し込み、部屋の中が明るくなっていく。
ある程度明るくなるとボクは自然と目を覚ます。
そして周囲の気配を探り、両隣のベッドで眠る二人を確認する。
二人ともまだグッスリと眠っているようで規則正しい寝息が聞こえる。
まずはルーの寝ている方を見てみると昨日はよほど疲れていたのか、あるいはもともと寝つきはいいのかはわからないが一度も目を覚まさなかったのが見て取れた。
次にコロナの方を見てみると彼女も昨夜遅くにボクが相談に乗った後、しっかりと眠れているようで気持ちよさそうな寝顔を浮かべていた。
ボクはベッドから起き上がり、二人を起こさないように気配を殺して部屋の中を移動する。
昨晩はいろいろとあった為そのまま寝てしまったが、さすがに長時間歩いていたため体中が何となく汗臭い。
この世界の宿屋は基本的にお風呂がついているところはほとんどない。
そもそもお風呂自体高級品であり、ある程度ランクの高い宿屋か、貴族の家、大きな商会の会長の家くらいにしかないらしい。
その他の平民は基本寒いときはお湯を使うが、それ以外は井戸から汲んできた水を使い体を洗うらしい。
それはともかく、風呂に入れないのはこの世界の都合上仕方ないとはいえせめて体を軽くふくくらいはしておきたい。
ボクは部屋の入口とは反対に設置されている扉の前に行き鍵を外し扉を開ける。
扉を抜けるとそこは中庭になっており、鍛錬もできるようにある程度広さもあった。
そしてその中庭の角には井戸が一つあり、そこから少し離れたところには小さな小屋のようなものがある。
ボクは井戸で水を汲み井戸のわきにある大き目の桶に水を入れ、桶をもって小屋のほうへ向かう。
その小屋には扉はなく中に入ると、人が三人はいれば窮屈になるくらいの広さの部屋がボクの両側に
四つずつ作られている。
ボクはそこに入り、部屋の奥に設置された台に水の入った桶を置き部屋の扉を閉め閂をかける。
さて、なんとなくわかる人もいるだろうがこの部屋は要するに水浴びのための部屋である。
この部屋の中には体をふくきれいな布や脱いだ服や、着替えが濡れないようにするための収納スペースなど水浴びするのに最低限必要なものがそろっている。
この〈冒険の友〉という宿はその名からもわかるように宿泊者の約9割が冒険者である。
そして冒険者というのは基本昼間は外で動き回り、帰ってきたときには汗だくかつ泥だらけという状態で帰ってくる。
そこから宿に入る前、または後で体をきれいにするという人たちはまだいい。
しかし、そういう客は主に長期間滞在する客であり、その日のみ滞在する客というのはそのままの状態で寝起きし、そのまま出発する客もいる。
それは宿屋としても他の客としても、いい気分ではない。
ならばすぐに使える場所に井戸を設置し、その近くに水浴びの場を用意すればいいのではと考えたものが居たそうだ。
そしてその考えは中々的を射ていたようで寝る前に水浴びをする者たちが増えたそうな。
そんなわけで〈冒険の友〉系列の宿には水浴び場が設置してあり、利用は無料(というか宿代に含まれているらしい)となっている。
そして、支部によっては設備の充実度も違うらしく水浴び場の場所を確保しているだけのところや、ここのようにある程度水浴びに必要なものが置かれているところ、ものを有料で貸し出しているところなどもあり、いいところだと水をお湯にできる魔道具が設置してあるなんてところもあるらしい。
閑話休題。
ボクは水浴び場で体を拭き心身共にすっきりとした気分で部屋へ戻る。
ルーとコロナの二人はまだ寝ていたが、ボクが入ってきた音により目が覚めたらしく上下していた布団が不規則な動きへと変化した。
そしてしばらく待つと二人が布団から起きだしてくる。
「ルー、コロナ、二人ともおはよう。よく眠れたかい?」
ボクが声をかけると二人はしばらくキョトンとした後返事を返してくれる。
「・・・・・・あ、おはようぅ。ユウ、朝早いねぇ。毎回こんなに早いのぉ? まだちょっと眠いけど大丈夫だよぉ。」
「・・・くぅ、・・・っは! お、おはようです、ユウさん。 自分もまだ少し眠いですが十分に寝ることはできたのです。」
「フフッ、それは良かった。 じゃあ、ご飯を食べに行こうか・・・って言いたいところだけどちょっと前に空が明るくなってきたばかりなんだよね。だからルー、コロナ、まずは二人とも水浴び場でさっぱりしてこようか。ボクは今行ってきたばかりだからここで待っているよ。そのあとは朝食の時間までにボク達はこれからどうするかを話し合おうか。」
「うん。」
「はいです。」
ボクがそういうと二人はいい返事をして先ほどボクの入ってきた扉から出ていく。
ボクは二人が戻ってくるまでのんびりと待たせてもらう。
体感時間で大体三十分くらいたったころ二人は戻ってきた。
「「ただいま~~(なのです)。」」
「ああ、おかえり。二人ともさっぱりしてきた?」
「うん! 気持ちよかったよぉ。」
「はいです。ユウさん、待っていてもらってありがとうございますです。」
「いいよ。さすがに体がべたべたしたままじゃ気になって満足に話し合いもできなさそうだしね。」
戻ってきた二人と軽く話をしながらボクは窓際の椅子に座る。
「うん、じゃあそろそろ話し合いを始めようか。二人とも好きなところに座っていいよ。ただしわかっているとは思うけどボクの声が聞こえないようなところはなしね。」
少し冗談を加えながら話し合いの提案をすると二人は素直にうなずき思い思いの場所に腰を掛ける。
位置的にはコロナは昨夜ボクに相談した時と同じ椅子に、そしてルーはボクの隣の椅子へだ。
「さて、早速話し合いを始めたいと思うけど念のためもう一度確認しておこうか。コロナ、昨夜ボクが相談に乗ったとき決意していたけど、その決意は一晩寝て頭がすっきりした状態で考えても変わらないかい? 」
ボクはコロナをまっすぐと見つめ、昨夜の決意が本物かどうかを確認する。
「はいです。私はあなたたちについていくのです。それとユウさんたちの秘密についても守り通すのです。二人を裏切るようなことはしないし心配だったら契約魔法でもなんでも使ってもらって構わないのです。なので私を鍛えてくださいなのです。私を狙った貴族がまた襲ってきても万全に対処できるくらいに。」
コロナは昨夜よりも強い意志を瞳に宿し答えを返してきた。
「・・・うん。昨夜の言葉に比べてしっかりとした決意がこもった言葉だね。わかった、ボクもその言葉しっかりと受け止めよう。ルー、コロナもボク達についていくことになるけどそれでいいね。」
ボクはルーナにも確認をとる。
「うん~。いいよぉ。ルゥはユウの決めたことに従うよぉ。・・・これからよろしくぅ、コロナ。」
「ボクからも改めて言わせてもらうね。これからよろしく、コロナ。」
「はいです。これからよろしくお願いしますです、ユウさん、ルーナさん。」
ボクとルーはコロナに手を差し出し歓迎の意を表すと、コロナはそれにこたえボク達の手を握り返してくる。
これで真っ先に相談しておきたいことの一つが解消された。
「さて、コロナの歓迎もほどほどにして次の話に入ろうか。できるだけすぐに話し合っておきたいことが多すぎるからね。二人ともいいかい?」
ボクはそう言い二人に問いかける。
二人は少し名残惜しそうな顔をしていたがすぐに顔を引き締めうなづいてくれる。
「よし、じゃあ早速続きと行こうかな。まずはボク自身のことかな? さっきコロナが契約魔法とか言っていたけどそのあたりについては後回しにして先に話しちゃうよ。」
そう前置きをし、コロナにボク自身について話していく。
内容はボクが異世界から来てしまったらしいこと、昨日ルーと出会って戦った結果ルーがボクについてくることになったことなどを話した。
話し終わった後のコロナの反応はといえば、
「・・・・・・。」
固まっていた。
それはもうカチコチに。
話の序盤にボクが異世界人らしいというところですでにコロナの顔はひきつり始めていて、ルーが竜族であり戦ったという話が出たところで動きが鈍くなり、ボクが一時的にであれルーを戦闘不能にしたという話をしたところで全身が固まってしまった。
ボクはいったん席を立ちコロナの肩に手を置き声をかけながら揺さぶる。
「お~いコロナ、大丈夫? ボクの、というかボク達の話はある程度話したよ。これで聞いてしまったら戻れないってことの意味がわかった?」
ボクがそういうとコロナは我に返り、一瞬考えた後口を開く。
「今更わかっても遅い気がするのです。ユウさん達が周りにばれると大変なことになりそうなことを隠していると思って聞く前にかなり覚悟していたつもりだったんですけど、予想をはるかに上回った答えが飛んできたんで思考停止してしまったのです。異世界人っていうのはともかくなんですか竜族って、しかもユウさんが戦って竜族を負かしたってでたらめじゃないですか。でもまあ、最初に約束したですし口外するつもりはないのです。私もユウさん達についていく身ですしなにより口外することでユウさん達に恩を仇で返すのは間違っている気もするのです。」
一気にコロナにまくしたてられたが、何とか納得してくれたようでよかった。
しかし、異世界人はともかくってこの世界にとって異世界人は特に珍しいものではないのだろうか?
「でも、異世界人ってことはそんなに秘密にしなくてもいいんではないです? 神託でも来ることは予想されていたようですし、ユウさんなら歓迎こそされても批判とかの悪いものは滅多にないと思うのですけど。」
コロナは疑問を口にして首をかしげる。
「ああ、それはね滅多にないとは言っても全くないというわけでもない。それにおそらくではあるけど歓迎されるとはいってもそれを受け入れれば、最低でもその歓迎に見合った働きをしなければならなくなる。そしてそれを達成しなければ歓迎は一切されなくなるし、逆に批難の種にもなりうるからね。それに神託についてルーから聞けば国の上の権限を持つ奴ら、要は貴族だね。それがこぞってほしがるような存在らしいじゃないか異世界人っていうのは。ボクはあまり貴族とかいう面倒な奴らと親しくつもりはあまりないんだよ。正直そういうやつらは表面上は好印象でも腹の中では何を考えているかわからなかったりもするからね。最悪の場合貴族の飼い犬とか奴隷とかそんな扱いになりかねないんだよ。そんなのはボクはまっぴらごめんだよ。だからボクが異世界人だということについてはボク自身が大丈夫だと判断した時かコロナたちがやむを得ないと思った時しか話さないでほしいんだよ。わかった?」
「はい、わかりました。」
「うん、よかった。これについてはルーもだよ、わかったかい?」
「は~い、わかったぁ。」
二人に向かってボクが異世界人らしいということを隠す理由について話すと二人ともすんなりと納得してくれた。
しかし、短い付き合いながらコロナについてはある程度大丈夫だと思うけどルーについては少しばかり不安があった。
雰囲気だけを見るとかなりうっかりな子に見えるからだろうか?
まあ別にしゃべってしまって面倒ごとに巻き込まれても、ただボク自身がしっかりとしていれば済む話だからそんなに気にすることもないか。
先のことを気にしていても何もできるわけでもないし今できることを順々にやっていけばいい。
「さて、こんなところでボク達についての話はいったん終了かな。ボク個人としても聞きたいことがあるし、二人にしてもまだ聞きたいこともあるかもしれないけど緊急の話じゃあなさそうなら次の話に入ろうか。二人ともいいかい?」
ボクが二人に尋ねると二人も肯いて返事をしてくれる。
二人とも頭の回転が早いうえに素直な子たちで実に話がスムーズに進む。
これが元の世界の同僚もとい友人だと話が進まない。
頭の回転自体は早いのだがいかんせん一人一人がアクの強い性格をしているためか話し合いをしてもいつの間にか話が脱線してしまい、話し合いが時間通りに終わることはないし最悪の場合その日に予定した話まで進まないなんてこともあった。
この二人はそんなことがなくて非常に助かった。
「次の話の内容だけど、ボクとコロナは生きていくためとお金を稼ぐために冒険者組合に登録をした。そしてルーはボクと出会う少し前に登録してある。ここまで話せばわかると思うけどボク達はこのまま一つのパーティとして動くことができるというのは大丈夫?」
「うん。」「はい。」
「依頼の内容は様々だろうけど主に受けることになるのは討伐系や採取系の依頼だろう。もちろんそうなるとおのずと戦闘をすることになる。さあここで質問だよ。ここで問題になることは何だと思う? コロナ、答えてくれる?」
「はい、個人で戦うなら装備とその人がどれだけ戦えるか。複数人で戦うときはそれらに加えてどれくらい連携をとることができるかでいいでしょうか?」
「うん、今後もそう思っていてくれればいいよ。ボク達もパーティを組むんだからそれを生かすこと為に連携をとる事が大事ということはわかるね。そして連携をとるためには誰がどんなことを得意としているのか知ることが大事となる。ちょっと説明臭くなっちゃったけどこれでどんな話をするか分かったかな?」
ボクは二人を見回す。
「そんなわけでコロナは戦闘経験、得意なこと、苦手なことを教えてほしいな。あと、戦闘経験に関してはどんな武器を使ったことがあるかかな。ルーはすでに冒険者をやっているからどんな武器を使うかと戦闘の仕方も聞いておきたいかな。あと、日常的に役に立つような技術があったら押しててくれる?」
「はい、わかりました。」「うん、わかったよぉ。」
「うん、じゃあ最初はボクからいこうかな。ボクの武器は特にないかな。場合によって武器は変えるからね。強いて言うなら、近距離で素手、短剣、剣、中距離で棒、長距離は特になしかな。一応弓は使えるけどなれたものじゃないと扱いにくいからね。戦闘は基本手数の多さで相手を追い込むやり方かな。まあこれも相手の大きさと能力によって変わるかもしれないかな。得意なことは特に思いつかない。苦手なものは人の言うことを聞かない人、偉そうな貴族とそれに準ずる奴ら、簡単にいえば権力を使えばなんでもできると思っている権力者。こんなところでいいか。二人とも大体こんな流れで話してくれればいいよ。じゃあ次はコロナ行ってみようか。」
「は、はいです。まず戦闘経験はほとんどないのです。私はあの盗賊たちに襲われるまではお父さんとお母さんと三人で行商をしていたんですが、二人とも行商を始める前はそれなりに腕の立つ冒険者だったらしく魔獣などに襲われても基本的に二人が戦っていたのです。私も二人から一応は戦う技術を学んではいたんですがたいてい襲われたときは二人の後ろで守られていたのです。最近は少しずつ戦いに参加することもあったんですがそれもすべて弱い敵を相手するだけだったのです。使える武器は短剣と片手剣なのです。お父さんは片手剣を、お母さんは短剣を教えてくれたんですがよく使っていたのは短剣のほうなのです。二人は魔法も使えたので魔術の練習もしていたんですがまだ習い始めたばかりで魔力を感じ取って体内に取り込むところまでしか教わらなかったのです。得意なことは裁縫なのです。一応商売に必要なこともお父さんから習ってたんですがお父さんほどうまくはできないのです。苦手なことは料理なのです。簡単なものは作れるんですがそれ以外は無理なのです。ユウさん、こんなところでいいですか?」
「うん、大丈夫。ありがとね、コロナ。じゃあ次はルー、お願いね。ルーもできるだけでいいから得意なこと、苦手なことも教えてね。」
「はぁ~い。ルゥの武器は両手につける爪と剣2本だよぉ。ルゥのお父さんとお母さんがルゥのために作ってくれたものなんだぁ。右手がお母さんで左手がお父さんの竜になったときの爪を使っているんだって。剣のほうは牙を使っているんだって。ルゥの戦い方はこの爪と剣を使っての近接戦が一番多いかな。あと、一応魔術も使えるんだけど実際の戦いだと身体強化の魔術だけで、それ以外はまだほとんど使わないかなぁ。あ、属性は火と風が得意かな。他に得意なことは一般魔術かなぁ。苦手なことはコロナと同じで料理かなぁ。いつも火の加減を間違えて焦げ焦げにしちゃうんだぁ。ユウ、これでいい?」
「うん、ありがとうルゥ。でも2つほど聞かせてほしいことがあるかな。まず一つ目はルゥはボクと戦った時竜の姿をしていたよね。それは簡単にできるのかとその状態での戦いについて。あとは一般魔術って何? これはコロナも知っていたら教えてほしいかな。」
「あ、そういえば忘れてたよぉ。変身は簡単にできるよぉ。でもあんまりしたくないかなぁ。ちょっとの間だけでも貯めこんだ魔力がなくなっちゃうからねぇ。あと、大きな力は出せるんだけど小回りもきかないし身体が大きくなるから戦ってると攻撃がちょくちょく当たって痛いんだよ。まあほとんどダメージはないんだけどねぇ。だから力が強くても大きすぎて動きにくい身体より力が弱くても小回りが利くほうが楽なんだぁ。人によっては人と竜の姿だけじゃなくてその間の姿、確か半竜って言ったかな? その姿にもなれるらしいんだけどそれには才能とたくさんの経験が必要なんだって。竜の時の戦い方も全部近接戦だよぉ。ルゥ達竜族は竜の姿ならブレスが使えるんだけど、ルゥはまだ使えないんだぁ。お父さんたちになんでか聞いてみたら魔術で遠くを攻撃できることが最低条件でそれができるまでは使い方を教えてあげられないって言ってたよぉ。」
「うん、大体だけどわかったよ。じゃあ、パーティでの戦い方については少し考えてみようかな。じゃあ二人とも、一般魔術について教えてもらってもいい?」
「はいです。」「は~い。」
ボク達三人の話し合いはまだもう少し続く。




