第十八話 冒険者協会への登録
バーツさんに見送られ町へ入ったボク達は冒険者の協会を探して歩く。
とはいっても冒険者協会はすぐに見つかった。
既に協会に登録しているルー曰く、ほとんどの国の冒険者協会はその町々である程度見つけやすい所にあるのだとか。
この町住人に協会の建物場所を聞いてみると例にもれず、入口から真っすぐ言った通りのかなりわかりやすい所に建てられていた。
その建物は木造で入口には両開きの扉がある三階建ての建物であった。
ついでに言えば協会の建物から通り沿いに500メートルほどのところに兵士の駐屯所があるとのことである。
まずボク達は冒険者協会に入っていく。
協会の中にはよく物語で出てくるような酒場やガラの悪そうな男達がいるわけではなく、清潔かつのんびりとした雰囲気が漂っていた。
内装は入口から見て右側に受付などの窓口があり、左側には談話スペースのようなものと壁際に掲示板が備え付けられていた。
おそらく、談話スペースで冒険者同士の親睦を深めたり、窓口へ呼ばれるまでの順番待ちをし、掲示板には協会からの知らせや犯罪者の手配書、依頼などが張り出されるのであろう。
ボクが建物の内装を確認していると、隣にいたルーがボクの袖口を引っ張ってきた。
「ねぇ、ユウ。入口に立っていないでまずは窓口の方に行こうよぉ。ルゥが案内してあげるよぉ。」
「ああ、そうだね。じゃあルー、早速案内してもらおうかな? まずは登録の窓口・・・かな? コロナはどうする?」
「え、えっと、では私もそちらへの案内お願いしていいですか? 今後のために登録していれば役に立ちそうですしね。」
「はぁ~い。じゃあね、こっちが登録の窓口だよぉ。」
ルーは元気よく返事して案内してくれる。
窓口は七つあり、いくつか役割が分かれているようであった。
その中の一つにルーは案内してくれた。
「すいませ~ん。登録をお願いしたいんですけど、いいですか?」
「はい、少々お待ちください・・・すいません、お待たせいたしました。ご登録はあなたを含めた三名ですか? それと後ろで縛られている方たちは何ですか?」
ルーが窓口から呼びかけると、一人の女の人が受付席に座り答えてくれた。
「あ、ルゥは登録してあるので後ろの二人だけです。 縛ってある人達について盗賊を生け捕りにしたとだけ伝えておきます。それ以降は二人の登録後でいいですか?」
「え?・・・あ、はい、かしこまりました。ではお二人に質問です。お二人は文字は書くことができますか? 出来なければ代筆も可能ですがどうしましょう?」
「はい、私は大丈夫です。」
「あ、ボクはちょっとこの国の文字は不安なのでできれば代筆お願いしてもいいですか?」
流石に言葉は通じても文字の方は伝わるかわからないのでここは任せておいた方がいいだろう。
それに、入口や窓口に文字のようなものはあるのだが文字だろうなと何となくわかっても読むことはできないのだ。
ということは書く方も通じないと思った方がいいのだ。
ここでもし誰も知らないような文字を書いて、誰かに目をつけられでもしたら面倒な事になるのは目に見えている。
それは全力で避けたいのである。
「かしこまりました。では、そちらの狐人族の方はこちらの紙に記入していってください。わからないところは聞いてくださいね。それともう一人の方は今から質問していきますので答えていってくださいね。」
「「はい、わかりました。」」
ボク達は返事をし、コロナはそのまま登録用の紙に記入を始めた。
「では、質問をしていきますね。登録に必要最低限の事だけ質問していきますので気軽に答えてくださいね。まあ、そんなに項目もありませんけどね。さて、まずは名前と年齢、性別をお願いします。」
「はい、ボクはユウ・カミシロと言います。歳は最近14歳になったばかりです。性別はこんな見た目と喋り方ですけど女です。」
「えっ!そうだったんですか!? てっきり男の方だと思っていました。失礼いたしました。」
「いえいえ、気にしないでください。よく間違われますので・・・。続きをお願いします。」
受付の人はボクに対し、謝罪をしてくるのでそれに答え、続きを促す。
「はい、では次に武器は何を使われますか? 複数ある場合は主に使う武器だけでかまいません。それと、魔術はお使いになりますか?」
「はい、主に使う武器というと、短剣、棒、素手ですね。それ以外の武器も一通り使うことができます。魔術は使えませんが、今後学んでいきたいです。」
「はい、ありがとうございます。以上が登録の際の必須項目となります。あと、今後魔術を覚えたいようでしたら登録などが終わってから魔術の適正審査をお受けになりますか? 少々代金はかかりますが魔術を学ぶにあたってちょうどいい方針になるかと思いますよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。ちょっと考えさせていただきますね。」
「かしこまりました。そちらの方はもう書き終わりましたか? ほとんどの項目は今後変更もできますので、最低限印のついているところだけでいいですよ。」
「あ、ちょっと待ってください。もう少しで終わります・・・・・よしっ、終わりました。では、お願いします。」
「はい、承りました。では、登録に少々時間がかかりますのでその間に様々な説明をさせていただきますね。」
「「はい、お願いします。」」
ボク達は返事をし、受付の人の話を聞いていく。
ルーも待っているのは退屈だったのか、ボクとコロナの間に入ってきた。
ボク達が聞いた内容は冒険者になるにあたって知っておくべきことだった。
まずは今回登録してからの事である。
何でもこの書類のみでの登録は仮登録という扱いらしく、その段階でまずは仮登録証が発行される。
この後、依頼を受けそれを達成することで本登録という扱いになり、その以来の報酬から登録料が引かれ本登録証が渡されるのだそうな。
本登録証が渡された後はもう冒険者の登録は完了ということらしいが、今度はランクが加えられる。
このランクは以前ルーが説明してくれた内容と一緒で最低ランクがGから始まり、10段階のランクがある。
ランクは依頼を一定数受けるか、冒険者の行動次第で昇格用の依頼を受けることができるらしい。
そして、昇格用の依頼は拒否もできるし失敗報告も可能だがDランクまでの冒険者はランクごとに拒否、失敗の可能な回数があり、それを超えると登録の抹消、または降格とのことである。
その他何かしら協会に対し不利益な行動をした場合もしくは協会によって禁止されている行いをした場合、一定期間の登録が凍結され、その間に問題を起こせば登録が抹消されるとのことである。
他には、依頼には通常依頼と緊急依頼があり、通常依頼はいつでも受けることのできるもの、緊急依頼はその支部にいるBランク以下は強制参加、Aランク以上はそのとき受けている依頼内容次第で極力参加を要請されるものらしい。
緊急依頼は基本その町や近くの村に魔獣の群れや高ランク魔獣が襲撃してきたときに発行されるものなのでその町に居る限り逃げることのできない依頼とのことである。
以上の事から、冒険者たちの間ではランク分けのほかにGランクは初心者、F~Dランクは半人前、C、Bランクは一人前、A、Sランクは一流、SS以上は英雄と呼ばれているらしい。
その他、説明されたことは依頼の受け方、依頼達成の際の報告の仕方、報酬を受け取る際の注意事項などかなりの事を仮登録証が発行されるまでに教えてもらった。
受付の人が言うには今回の説明は冒険者としての基本的なことだけだそうで、詳しく知りたい場合は協会で作成した冒険者手帳なるものをいずれ買うか、各国の王都にある冒険者養成所にて学んでほしいとのことであった。
さて、これで冒険者の登録がひとまず完了した。
次にやることは盗賊たちの引き渡しである。
「すいません。これで冒険者登録はひと段落ということでいいですか?」
「はい、他にご質問がないようでしたら大丈夫ですよ。この後はすぐに本登録証取得のために依頼を受けてもいいですし、町に来たばかりでしたら散策または宿をとるのもいいですね。その辺りはご本人の自由となります。」
「質問はありません。大丈夫です。ここからはお仕事の話になると思いますので窓口を移動した方がいいですか? それともこのままここでいいですか?」
「お仕事ですか? 内容次第ですがこのまま処理できるならさせていただきますよ。」
「あ、はい。後ろで縛られている男たちの事なんですが、あいつらは盗賊のようでしてボク達がこの町に来る途中運悪く襲われたので返り討ちにした後拘束してつれてきたんですよ。その引き取りに関してなんですがどうします?」
「えっと・・・後ろの方々ってその、やっぱり盗賊なんですか?」
「はい、そうです。」
「それで、ここに来る前に襲われたので三人で返り討ちにした?」
「大体そんな所です。」
「そして、生け捕りにしたから引き渡しの手続きをしてほしい、ということですか?」
「はい、冒険者ならそんな変わったことではないですよね?」
「そ、それはそうですけど・・・。」
実際起こったことと話の内容が少し違うのは説明するのがめんどくさかったからである。
ついでに盗賊たちに依頼した大元の貴族へ情報が伝わるのを防ぐためでもあるのだがこれにはあまり期待していない。
何せ、いつまでたっても貴族のもとには目当てのものが来ないわけだし、もしその貴族に直接コロナの存在が見つかってしまったらまた襲われる可能性も低くはないのだ。
これは町に向かっているときにコロナとも打ち合わせて盗賊たちに襲われた際の説明を少し改変すると伝えてあり、コロナも最終的に盗賊たちが捕まるなら何でもいいと了承を得ていた。
その辺りの事は終わったことなので流すとして、受付の人を見てみるとボク達の提案に少し戸惑っていた。
ボク達は何か変なことでもしてしまったのだろうか?
受付の人のその反応も無理もなかった。
冒険者協会登録に際して事前に魔獣の部位を持って来たり、依頼に必要な薬草などの素材を持ってくる人は少しは存在はしたし、それが本人がとってきたと証明できればそのまま本登録証を渡すこともできた。
まあこの証明自体知識があればクリアできるのであってないようなものではあるし、本登録証を取得するにあたって横着などしてもそれ以降は実力がなければランクは上がっていかないのだ。
そして、そういう奴らはいずれ自分自身の身の丈に合わない依頼を受け、失敗するか、運が悪ければ死に至ることが多いのだ。
話が逸れたがはっきりと言うと登録より前に盗賊を生け捕りにし連れてくるというのは滅多にないことである。
魔獣は戦闘能力が高く危険ではあるが基本的には知能はない生き物である為、行動パターンはほとんど一定となる。
そのため魔獣たちが集団で襲ってきてもよほどの数の差で襲われない限り勝算はある。
しかし盗賊は同じある程度知能のある人であり、たいていが集団で襲撃してくる。
そしてその襲撃方法は多数で少数を襲ったり、奇襲を仕掛けたりと狡猾な手を使ってくるので魔獣よりも倒すのが大変なのだ。
そのため、基本的に登録後の冒険者が盗賊の討伐や盗賊にあう可能性のある護衛の依頼を受けることはできないのだ。
そういう依頼を受けるには、討伐は最低Eランク、護衛は最低でもDランクが必要となる。
そのうえ、盗賊の生け捕りなどという依頼が稀に出ることがあるが、これは存外依頼のランクが上がってしまう。
大抵討伐や護衛の依頼では基本的に盗賊たちの生死は問わないため殺してしまうことが多い。
なにせ敵と対峙した場合、敵を生かして無力化するというのは敵をただ殺すよりも敵との技量にかなりの差が必要となる。
そのため盗賊などの生け捕りは難易度が上がってしまうのだ。
そして、それを三人で行ってきたという少女たちが居たと聞けばほとんどの人が疑うか戸惑うかするであろう。
しかしそこは様々な冒険者を見ることのできる冒険者協会の受付である。
最初は少し呆然としていたが、実際に少女たちの後ろに縛られている男達がいる為真偽のほどはさておき、少女たちの対応に戻るのであった。
「すいません、少々意識が飛んでいました。盗賊の引き渡しの件でしたね。そちらは少々面倒な手続きがあるかもしれませんので別室までついてきていただいてもいいですか?」
「わかりました。どちらへ向かえばいいでしょうか?」
「いえ、私がご案内しますのでついてきてください。」
ボク達はそういう受付の人についていき二階にある一室へと向かった。
受付の人によるとこの建物の二階は主に応接室になっているということであった。
なんでも依頼主と追加報酬の相談をしたり、貴重な素材を持ってきた冒険者との値段交渉などでよく使われるとのことであった。
「こちらの部屋です。今から担当の者と話をしてきますので少々この部屋の中でお待ちください。」
そういって受付の人は出ていき、ボク達は案内された部屋の中で担当の人が来るのを待つのであった。




