第十二話 隷属の魔道具
ルーと話しながら町に向かっていたら、盗賊に絡まれたので返り討ちにしてみた。
というわけでボク達を襲ってきた十人を無力化し、縄で縛って今に至る。
盗賊たちの構成は人間族と思しき9人の男共と獣人らしきボクと同じくらいの年頃の少女である。
この世界の事についてはまだ少ししかルーから聞いていないが、どんなにこの国が三種族が共存していようとも盗賊たちのこの構成は珍しいと理解できる。
そもそもこの獣人の少女のマントを外し拘束しているときに気づいたのだが、この少女の四肢には軽い打ち身などが多数存在していた。
この状況だと下手をすれば胴体の方には四肢と比べ物にならないほど傷が存在しているかもしれない。
そのうえ少女の首には、少女には似つかわしくはない首輪とも呼べるようなものがついていた。
首輪の特徴を見てみる。
遠くから見ればそれは真っ黒で無骨なデザインの首輪である。しかし、近づいてみれば様々な文様が刻まれていた。
それに何となくではあるがこの首輪から妙な力が流れていることが感じられた。
「ルー、ちょっとこっちに来てこれを見てくれないかい? ルーはこれがなんだかわかる?」
ボクはルーを呼び、この首輪について聞いてみる。
「んん? どれ~? ・・・これはたぶん隷属の首輪だよ。」
「隷属の首輪? なんか嫌な響きだね。詳しく教えてもらってもいい?」
「うん、これはねぇ簡単に説明するとつれられた人を奴隷にする首輪だよ。詳しく説明するとちょっと時間かかるけど聞く?」
「ああ、どうせこいつら全員の意識が戻るまで時間かかるだろうしね。一応すぐ起こす方法もあるんだけどちょっと手荒な方法でね。こいつら9人はともかくこっちの娘にはとりたくない手段なんだよね。」
「うん、じゃあ説明するね。これはね・・・。」
ルーが言うには隷属の首輪というのは通称である。
正式名称は隷属の魔道具(首輪Ver)とでも呼べばいいのだろうか。
そもそも人を奴隷にするのは特定の手順が必要らしい。
その手順には魔術や道具を使うのだが、この道具というのが隷属の首輪に当たる。
ただ魔術というのも隷属に関係する魔術はかなり難易度が高いうえに使用できる者が限られ、かつ使うには時間と手間が必要な為町の外で使うには不便な魔術である。
そのため、町の外で人を奴隷にするには隷属の魔道具を使うのが主流となっている。
しかしこの道具もただ魔術が付与された魔道具という扱いなので首輪でなくてもいいということだ。
そしてこの魔道具、中に込める魔術は着用者を最終的には隷属させる効果があれば何でもいいらしい。
例えば主人の命令に逆らうと着用者に苦痛を与えるものだったり、着用者を洗脳する効果のものが在ったり、着用者の意思とは関係なく身体だけを動かすものであったりするらしい。
ついでに隷属の魔道具にはランクというものが在り、込められている魔術によって変わるらしい。
まあ、ランクについては単なるの噂の可能性もあるので本当にあるかというのは不明である。
以上がルーから聞き出せたことであった。
そして隷属の魔術関連については最悪どんな魔術があるかは知っているが、使い方などは広まっていないとのことである。
「なるほど、わからないところも多々あるけどこの首輪がどういったものかはわかったよ。ありがとう、ルー。」
そういってボクはルーの頭を撫でてやる。
「えへへ~、ユウのなでなで気持ちいいなぁ。もっとなでて~。・・・あっ!? もう辞めちゃうの?」
ルーは喜んでいたがいったん撫でるのをやめる。
そろそろ盗賊たちが起きだしてきそうなのだ。
「ごめん、ルー。なでるのはまたあとでね。そろそろ目覚めそうだから。」
「う~。わかったぁ。」
ちょっとすねながらも素直に返事をしてくれるルーが少しかわいく思える。
・・・おっと、なんかボクの方も変な趣味に目覚めてしまいそうだ。
ちょっと深呼吸をして心を落ち着けよう。
さて、気をとりなおして縛った盗賊たち後ろに立ち様子を見る。
しばらくすると少女が目を覚ました。
少女は寝ぼけた目をこすろうと手を動かそうとする。
そこで拘束されていることに気づき混乱して周りを見渡そうとする。
そして横に縄で縛られている男たちに気づき顔をこわばらせる。
さて、ボクは盗賊たちが目を覚ましたら様子を見て声をかけようと思っていたのだが、少し驚いていた。
それは彼らの目覚める順番である。
ボクはこの少女より男たちの方が早く目が覚めると予想していた。
なぜなら彼女は男たちよりも後に気絶させたし、彼女が攻撃を仕掛けてきたとき少し危険な気配があったので男達に当身をくらわせるよりも確実に気絶をするようにしたのだ。
そのため彼女は最悪でももう十数分は意識が戻らないと思っていた。
どうやらこの少女は男達よりも体が頑丈のようだ。
いや、もしかしたら獣人に頑丈な方たちが多いのか?
まあ、その辺りはおいておき、今は少女の事が最優先だ。
少女を観察するにどうやらこの少女は盗賊たちの一員ではなさそうである。
何せ顔をこわばらせた後無意識にか少女の体が小刻みに震えている。
まだ目を見てみたり、言葉を交わしてみないと確定はしないが彼女はボク達より前に盗賊たちに襲われたか、盗賊たちの奴隷かであるが後者は可能性が低そうだ。
あったとしても何らかの理由で一時的に奴隷になっているくらいだろう。
とそう考えているうちに男たちの方も意識が戻ってきていた。
男たちも自分たちが拘束されていることに気づくと周りを見渡し縛られている少女を見つけ、ボク達を見つけると怒鳴ってきた。
「おい! さっさとこの縄を外しやがれさもないと後々どうなっても知らねぇぞ。」
なんて自分たちがどういう状況になっているかわかっていないような発言をしている。
男たちが騒ぎ出したおかげで少女もこちらに気づいたのかボク達を見つけ、きれいな翠色の目での方を見つめていた。
うん、目を見てはっきりと分かった。少女はこの男たちの仲間ではない。
まあなぜこちらを攻撃してきていたかは不明だが何か事情があったのだと思っておこう。
というかギャーギャーとうるさいので威圧とこいつらの持っていた剣で脅してしまおうか。
ボクは集めていた剣の中から少女が使っていた短剣を拾い上げ、リーダーらしき男に向かって近づいていく。
そして軽く威圧を放ちながらある程度近づいていく。
相手との距離が2mを切り1.5mになったところで気配を消し、一瞬のうちにこちらを向いて騒いでいたリーダーらしき男の後ろに回り込み頭を押さえ首筋に刃をあて威圧をかける。
するとボクを一瞬見失った男は、首筋にあてられた刃と威圧に気づき目を見開く。
「勘違いしないで、今この場の生死はボクにかかっているんだ。おとなしくしていた方が身のためじゃないかな?」
とボクが言うと男は額に汗を浮かべ黙り込む。
いっそこのまま情報を聞き出してしまおう。
と、その前にルーに頼んで少女を男達から離れた場所にある岩の陰に一緒に行ってもらう。
一応少女の縄はほどかないことと周りの警戒を怠らないこと、ボクが呼ぶまではこっちに何があっても気にしないことを伝えておく。
ルーは襲われても大丈夫だとは思うが念のためである。
ここからは少女二人には刺激が強いものになるため離れていてもらう。
今後はルーが望むようならこういうことにも同行してもらうかもしれないが今回は少女がいるのでそっちの対応を行ってもらう。
「さあてと、それじゃあいろいろと話してもらおうかな? 覚悟はいいかい? 嘘をついているかどうかは君たちの様子を見ればわかるから、全て正直に答えなかったらこれを刺していくからね。」
とまずは右の太腿にむけて短剣を構える。
刃先は太腿に当たるか当たらないくらいだ。
まずは逃げる手段を奪い次に抵抗する手段を奪う。
そして最後は情報の重要度または現場の状況次第で殺してしまう。
それはボクが野外での尋問の仕方について一番最初に習ったことであった。
さあ男たちの尋問の時間が始まる。
なんとか1000PV到達しました。
今後とも読んでいただけたら光栄です。




