表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ASASHIN  作者: 真鵬 澄也
4/11

第3話-決意-

 明朝、伊藤周蔵のところへ行く。

 気配を消して家の中に入り、奴の気配を探る。奴はリビングにいた。私の気配には気付かない。何か荷造りをしている。

 カーリーは少し離れてたっている。

「……何をしている」

 そう話しかけると、奴はビクリと体を震わせ振り向いた。

 カーリーの顔を見たとき、少し驚いたが、笑顔に変わった。

「どうしたんだね」

 と、優しく聞く。

 その言葉に、冷たい笑みを浮かべた…。

「いえ、チャイムを鳴らしたんですが出てこないので、どうしたのかと思いまして」

 冷たい言い方。

 言い方でそれは嘘だとわかるものだ。

 しかし、この男はそうとう動揺しているようだ。

「それはスマナイ、で、何の用かな」

 と、言った。

 私は思わず、クッと、笑った。

 それを見た奴は、怪訝な顔をして言った。

「何がおかしいんだね」

「いや。…実は、あなたへの頼まれごとと、お礼がありまして、ここへ来ました」

「頼まれごと?」

「はい。それよりもまず、お礼をさせて下さい」

「なんのだ」

「お忘れですか? 私の腕に矢を刺してくれたお礼です」

「何のことだ? 私は知らない」

 奴はあまでシラを切るつもりらしい。まぁ、いいだろう。

「…では、本題に入りましょう。私は、あなたを殺してほしいという依頼を、ある人物からもらい、あなたを殺しに来ました」

 その言葉を聞いた奴は笑いだした。

 カーリーは冷たい目をしてそれを見る。

「何を言い出すかと思ったら、冗談はやめなさい。もしそうだとしても、いったい誰がそんなことを頼んだんだね」

 と、笑いながら言った。

「あなたの息子からです」

「勝だと? …クッ。ハッハッハッ」

 またか…。

 だが、カーリーの冷たい目付きを見たとき、笑いは止まった。

 やっと終わったか。

「私は勝さんの彼女ではない。あなたを調べるための芝居だ」

 奴は驚きを隠せない。

 カーリーは笑っている。

 冷酷なまでのカーリーの態度に、だんだんと恐怖がつのっていく。

 恐怖のためか、奴の声は震えている。

「ま…、待ってくれ、なぜ私が、殺されなければ…」

 ほぉー。

 ここまで来てもまだシラを切るか。

 たいした度胸だ。

 だがこれまでだな。

「理由など知らなくてもいい。…そうだな、一つだけ教えてやろう、お前は、B・Bに載っていたよ」

「…載っていた…?」

 なぜ過去形なんだ…。

「過去形なのは抹消されたからだよ。その意味はわかるだろう。さぁ、長話は終わりだ、奥さんと息子さんのところへ逝くといい。逝って詫びるといい」

 言いながら銃を取り出し、奴に突き付ける。

「やっ…、やめ」

 奴が叫ぶ間もなく引き金を引いた。

 消音にしているので、銃声は聞こえない。

「さようなら」

 一言そう言って、カーリーは去った。



 一度家に戻り、制服に替える。

 午前十一時半過ぎ。

 軽く昼食を取る。

 コーヒーを飲み、一息つく。

「…疲れた‥」

 今回は喋り過ぎた。いつもの倍は喋ってる。

 短期間にいろいろなことが起こりすぎた。

「………」

 父さんが、裏国の人間だったなんて、頭ではわかっていても、まだ信じられない。けど…、信じざるを得ない…、テレビで報道されていないことが、そのことを証明している。

 ……どんな気持ちで…、手紙を書いていたんだろうか、娘が、殺し屋なんて、やりきれなかっただろうに…だから嘘をついてまで家には帰ってきたくはなかったのだろう。

 父さんを騙したまま終わってしまった。

 そして、また、あの人達も騙したまま、終わってしまうことになるのだろう、きっと‥。

「部活も…、やめなければ…」

 学校と…ね…。

 組織自体を潰すすのは難しい。

 へたをすれば、逆に殺られる。

 しかし、奴の懐に入れば裏国の中に侵入するのは簡単だ。そして、そっと機会を待つ。

 期限は…、三日。

 三日のうちに潰す。

 期間中、学校は辞めない。


 昼休み三年の教室に行く。宮内に退部届を渡しに。

 宮内を呼んでもらう。

「すいません、宮内先輩いますか?」

「宮? ちょっと待って」

 その人は、そう言って部長のところへ行った。

 部長は何かを書いてる途中だった。

「宮、一年生が呼んでるぞ」

「ん?」

 宮内は書くのをやめて、入口を見た。

 裕希は軽くお辞儀をする。

「可愛い子じゃん、紹介して」

「ダメだ、だいいち彼女いるだろお前」

 裕希のほうへ歩いて行く。

「君、名前は?」

「‥江藤です」

 なんだこの人。

「ほら、彼女が待ってるぞ、早く行け」

「はいはい、じゃあね江藤さん」

「‥はぁ」

 そのい人は走って彼女のところへ行った。

 何なんだあの人。

 宮内はため息をついた。

「まったく、気にしないでいいよ、裕希ちゃん」

「‥はい」

「それより、何か用かい?」

「あ、はい。実は…」

 そう言って、退部届を出した。

 宮内は、何も言わずに受け取った。

 何も言わずに受け取った宮内を見て、裕希は少し驚いたのと同時に優しさを感じた。

「部長…。ありがとうございます。すいません」

「謝ることはない。誰にだって人に言えないことがある」

「すいません」

「みんな裕希ちゃんが好きだ。時々、遊びにおいで」

 優しい言葉。

 たいした言葉でもないはずなのに、それ以上の優しさがあった。

 涙が出てきた。部長に見られたくないので、下を向いた。

「‥部長、ありがとうございます…それじゃあ、失礼します」

「ああ、みんなには言っておくよ」

 お辞儀をして去った。

 …不思議だ‥。

 先輩達の前だと不思議と涙が出てしまう。カーリーとなった今でも。

「…不思議だね」

 ああそうだ、奴が死んだ今、先輩達はどうするのだろう。

 あんなことを言ってしまった私にも、責任があるのだが。

「あとで聞いてみるか」

 だが、その答えはすぐに出た。

 教室に向かっている途中、二年生が話しているのを聞いた。

 それは伊藤勝のことだった。

「―ショックだね。自殺って聞いたときもショックだけど、まさか、父親に殺されるなんて」

「あー、今朝の新聞に載ってたやつでしょ。父親も自殺だってね」

 自殺…か。なるほどね。

「近藤さん、ショックだろうねぇ」

 …フゥっと、裕希はため息をつく。

 ため息ばかり。でも、これでスッキリした。

 部長も新聞を読んで知っていたんだ、だから言わなかったんだ。

 裕希は教室に戻った。


 放課後、教室に誰もいなくなるまで待った。なぜだか一人になりたいと思った。

 ふせて寝ていると、廊下を走ってくる音がした。

 一人だ。

 それはだんだん近づき止まった。

「裕希ちゃんっ」

 いきなり私の名を呼んだ。

 その声には覚えがあった。

 顔を上げ、走り寄ってくる人物を見た。

「あや子さん」

 そう、あや子だった。

 あや子は入るなり裕希の手をガシッと握った。

「…あや子さん?」

「部をやめるって本当なの?」

「……はい…」

「どうしても?」

「はい。すいません。…三日後、学校もやめます」

「えっ?」

 いつのまにか教室の入口には、宮内部長・水野さん、斎北さんが立っていた。

「…先輩‥」

「学校もやめちまうのか?」

「…はい。残念ですが」

「ほんとに残念で悲しいわ」

「あや子さん、…まだ、三日もあります。遊びに行きますよ」

 行けないかもしれない。それよりも、学校にさえ来れないかもしれない。

 裏国内部の調査が、スムーズにいけば来れるけど。

「裕希ちゃん」

 水野さんが近寄ってきた。

「はい、何ですか?」

「いろいろな意味を込めて、頑張ってね。それから、探偵部のメンバーとして、裕希ちゃんの記録をちゃんと残しておくよ」

「…ありがとうございます。とても嬉しいです」

「手紙、ちょうだいね」

 手を握ったまま、あや子が言った。

「俺達にもな」

 いつのまにか全員、私の周りに来ていた。

「もちろんです」

 たった、数日しか経っていないのに、こんなにも私のことを想ってくれている、言葉に出す優しさより、言葉に出さない優しさを人より持っている人達。

 …同じものを持っている人物を‥、私は知っていた‥。

 昔の事だけど。

 …不思議に、この人達といると心が安らぐ。

 唯一、私、江藤裕希に戻れる場所。

「…短い間でしたけど、先輩達に出会って本当に良かったです。ありがとうございました」

 裕希は、今までで一番最高の笑みを浮かべた。

 もし、自分を見失いそうになったとき、もう帰ることはできないけど、この人達の事を思い出そう。ただの十六才の少女に戻させてくれる、この人達のことを…

 ーと、思う裕希だった。

 先輩達に家まで送ってもらった。

「…さて、気合いを入れて敵陣に乗り込みますか」

 ーと、その前に、最後に寄っていくかな。

「…いるかどうか、わからないけど」


 午後八時。

 スーツに着替える。

 ケースには、予備の銃と弾。そして、時限爆弾…三つ。

 愛用のリボルバーは、脇にセットしてある。

 このケースは途中で隠していく。とりあえず下調べの段階だ。

 総頭に、気づかれないようにしなければ。

「‥…行くか」



 コツコツコツ…。

「………」

 裕希は店の前にいた。

 店の名は「HELP」…。

 キィー…。

 扉を開け中へ入り、カウンターへ向かう。

「………」

 サングラスはしている。

 カウンターが見えた。

 黒木は…いた…。

 コツ…。

 裕希は足を止めた。

 黒木はこちらに気付き、顔をあげながら言った。だがその言葉は最後まで言われなかった。

「いらっしゃい…」

 黒木の動きが止まる。

 コツ…、コツ。

 裕希はカウンターの前に座る。

 サングラスは取らない。

「…相変わらず、カウンターには誰も座らないようだね」

「…今日は、髪を下ろしているのですね」

「ウォッカを一杯くれない?」

「…わかりました」

 黒木は後ろを向き作っている。その後ろ姿を裕希は見つめている。そして…。

「総頭と契約をした。…というより、これから返事をしに行くのだが」

 黒木の動きが止まる。

「そう…、ですか…」

 心なしか、声が震えている。

 ウォッカを裕希の前に置く。

「……」

 黒木は何も言わない。

 裕希はウォッカを一口飲んだ。

「…ごちそうさま」

 お金を置き、席を立った。

 去る途中、後ろを向いたまま言った。

「…寺島という人は、私の性格をよく知っていた。会ったら伝えてほしい、最後の契約者が貴方で良かったと」

 キィー…。

 コツコツコツコツコツ……。

 足音が遠ざかっていく。

「……」

 あの人が、総頭と契約。

『…会ったら伝えてほしい、最後の契約者が貴方で…』

 最後の契約者?

 …最後…

「……!」

 まさか…。

 黒木の頭に、裕希の言葉が蘇る。

『私は、誰とも組む気はない。…寺島という人は、私の性格をよく知っている』

「…貴女は、組織をつぶして死ぬおつもりですか…」

 黒木は、裕希の考えがわかっても、追おうとはしなかった。いや、追いたくても追えないのだ。なぜなら、そのことを裕希が望んでいないことを、一番よく知っているからだ。

「またお会いできることを、願っています」

 だが、この願いが叶うことはないと知っていても、願わずにはいられなかった。



 ケースはとりあえず隠し、総頭に会う。

「…失礼。総頭と会う約束をしている。取り次いでもらいたい」

「しばらくお待ち下さい。あなた様のお名前は?」

「…カーリー」

 門番が総頭に取り次いでいる間、監視カメラに気づかれないように、小型通信機を壁に飛ばす。

「お待たせしました。総頭がお会いするそうです。こちらの道を真っ直ぐ行きますと、案内人がいます」

 門が開く。

「ありがとう」

 言われた通りの道を行く。この間も周辺のチェックをする。人はいないが、木に隠れて監視カメラが設置されている。

 しばらく行くと、扉のところに女の人が立っている。

「私がご案内いたします。どうぞこちらです」

 ピッピピッ。

 暗証番号…か

 部外者にはわからなくなっている。

 FBIのと同じだ…。

 ウィーン。

 扉が開き中へ入る。

 それからいくつもの扉があり、暗証番号を入力していく。違う番号に見えるが、同じだ。

「ここは、直接総頭の部屋に通じているのか?」

 一つの質問をする。

「そうです」

 女は、今までで一番大きい扉の前で止まった。どうやら着いたらしい。ここまで来るのに七分。

 女はボタンを押す、

「総頭、カーリー様をお連れいたしました」

 と言った。

 すると、扉が開いた。

 ここの扉は、総頭だけが番号を知っているようだな。

「入りなさい」

「……」

 カーリーが中へ入ると、女は戻っていった。

 総頭とは距離をおく。

「答えを聞かせてもらおうか」

「…答えはYESだ。だが、前にも言った通り私は命令されるのは嫌いだ」

「わかっている。ここに出入りするのは自由だがここのことはシークレットだ。ここは中枢部だ。気をつけたまえ」

「わかった」

 …私の知りたかったことを教えてくれたね。それだけ分かれば充分だ。

「とりあえず今は、君に頼むほどの仕事はない。ああそれから、明日といっても、もうすぐ日付は変わるが、明日明後日と、幹部会を開く」

 ……!

「…そうか」

 まずいな…予定が狂った。

 仕方がない。夜が明けないうちに仕掛けるか。

 ケースを取りに行かなければならないな。

「総頭、荷物を取りに行ってもいいか」

「かまわんが、私は会議の打合せに行く。戻ったら、私が戻るまでここを出るなよ」

「命令されるのは嫌いだと言ったはずだが」

「ああスマナイ。ついいつもの癖でな」

 フンッ。どうだか。




 午前一時、クラブ・ヘルプ。

「店長どうかしたんですか? 顔色悪いですよ」

 バイト中の宮内が聞く。

「あ、ああ、何でもない」

「そうですか? 何か心配ごとでも」

 心配…

「……、悪い宮内、ちょっとここ頼む」

「はい」

 私にどうこうできるものではないことはわかっていても、やはり貴女を失うことはできない。

 失いそうになって初めて気付いた。

「今度ばかりは、自分の気持ちに従います」

 店を閉め、裕希を追う。




―裏国―

 ケースを隠してある場所まで戻る。そう遠くはない。

 特殊技工をほどこしてあるレイバンに変える、暗証番号が見えるようになっている。簡単にいえば、指紋が浮かび上がって見えるということだ。

 ケースを持ち戻る。

 暗証番号を解いていく。ついでに、爆弾を仕掛けていく。

 この通路は、先ほどの女しか通れないようだ。監視カメラがない、何かあったときは、その女が犯人だとわかるからだ。

 通路に仕掛けが終わり、あとは総頭の部屋だけだ。

 爆破時間はちょうど三時間後の明朝六時。

 組織壊滅が目的だが、まぁ、機能不能になればいいか。

 中枢部がやられれば、連動してほかの部分が爆破しだすだろう。

 よしっ。セット完了。

 爆破ぎりぎりまで部屋にいなければならない。

 窓から外を眺めていると、総頭が戻ってきた。一人だ。

 総頭は、机に組込まれているキーを押した。スクリーンに映し出されたのは、ある一室、その部屋には人が八人いる。

「この部屋は、今君が見ていた所だ。この八人は幹部の者達だ」

 ずいぶん早いな。

「早い集まりだな、まだ夜中の四時だというのに」

「ああ。時間を早めたんだ。実はこれから会議に行くが、悪いが、少し待っていてもらいたい」

「‥時間は?」

「二時間」

 !六時…。

「……いいだろう」



 …あれから一時間半…。

 午前五時四十五分。

 爆破まで十五分。

「………」

 死ぬかもしれない。

「……フッ」

 なにを今更ら、もともと死ぬ気だったじゃないか…。

 奴らと心中するのは嫌だけど。

 五分前―…


ドォーーンッ!


 外を眺めていると、いきなり爆発音がした。

 なんだっ?

「まだ時間じゃない」

 いったい誰が?。

 ウィーンッ。

 ハッ。

「…総頭…いったい何事」

「見ての通りだ。どうやら犯人は黒木のようだ」

 え?。

「残念です」

 くろ…き…?

 カチッ。

 時計の針が六時を指した。

 ドォーンッ!

 最初に仕掛けた爆弾が爆発した。

 もうすぐここのやつも爆発する。

 カーリーは覚悟を決めた。

「……」

 ピーッピーッ。

 総頭が無線を取る。

「今度はどこだ」

「…ここだよ」

 総頭の動きが止まる。そして、カーリーを見る。

「…まさか、キサマ…」

 総頭の顔に、怒りの色が浮かんだ。

 ドォォォンッ、 次々と爆発している。

「その通り…、…最初に言ったはずだ、私は一人でやると。だけど考えが変わったんだ」

「…死ぬつもりか」

 クスッ。

 カーリーが目をつぶり…。

 ドォーンッ。音が近づいた。

「…あとはここだけだ。逃げ場はもうない」

 ハッハッハッ。

「たいした奴だ。貴女のことを読めなかった私の責任です。私の負けです」


「裕希さんっ!裕希さんどこですっ」

 ウッ。

 火がまわっていて、先に進めない。この通路を爆破したのか…。

 あの人は本当に。

「貴女のことなど、わかりたくなかった」

 残りは中枢部。

 そう思って向かおうとしたとき、


ドォーンッ!


 今までで一番大きい爆発…。

 それは中枢部からだった。

 黒木は、よろめきながらも火をくぐり、なにもかも吹き飛んだ中枢部の前に立ちつくす。

「…ゆうき…」

 黒木はそれしか言えなかった。

 カラ…

 ふと、音がする。

「…くろ…きか…」

 人がっ!

「裕希、裕希さんっ」

 黒木が駆け寄る。だが…、声の主は…

「…総頭…」

 黒木は愕然とする。

「そう…、ガッカリするな、ほら…」

 そう言いながら、総頭は横にずれた。

 そこには、気を失って倒れている、裕希の姿があった。

 黒希がそっと触れる。

「…裕希さん」

「安心…しろ。気を失っている…だけだ」

 どうやら裕希を庇ったらしい、そのせいで総頭は傷だらけだ。

「早く連れていけ。人が集まる」

「しかし…」

「早く行けッ。‥安心しろ、今後、彼女には手は出さない。本当だ。私もミイラになったようだ」

 壁に寄りかかりながら言った。

「‥総頭」

 総頭はニッと笑って、早く行けと促した。

 黒木は裕希を抱き上げて、

「ありがとうございます」

 と言って去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ