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ASASHIN  作者: 真鵬 澄也
1/11

〜はじまり〜

小説の中には「死」「血」「怪我」等、軽くではありますが出てきます。

苦手な方はご注意ください。

 もう四月だというのに、今日の寒さはいったいどうしたものだろう。

 今にも雪が降ってきそうな空。

 私、江藤 裕希、十六歳。

 やっと中学を卒業して今日から高校一年生だ。

 前の晩、一通の手紙が届いた。父からだった。



『親愛なる娘、裕希へ。

 高校入学おめでとう。すまないが今年もどうやら帰れそうにありません。おまえにはいつも寂しい思いをさせてすまない。私も早くおまえに会いたい。なるべく早く帰れるようにします。くれぐれも体に気をつけて、高校生になったからといってあまり夜遊びをするんじゃないぞ。

                   父より』




 ーという内容だった。

 私の父は一等航海士で船長をしています。だから一年のほとんどが海の上です。家に帰ってくることは早々はありません。でも、こうやって月に一度手紙を送ってくれます。寂しくないと言ったら嘘になりますけど、私としては今の状態のほうが嬉しいのです。父には悪いですけど。

 実は私、学生は副業なんです。そうすると、え、じゃあ本業は何?と思いでしょう。人には決して言えないことなんです。怪しい仕事じゃないですよもちろん。このことを知っているのは一人しかいません、私専属の仲介屋だけ。

 私は「カーリー」という別の名を持つ暗殺者なんです…。

 高校に入ったら、絶対に入ろうとしていた部活がありました。

 いったいこの部活がある高校を、どれだけ探したか……。



 放課後その部活の前に行く。

 コンコンッ、っと、ドアを二回叩く。

 すると、カチャっとドアを明けて出てきたのは、ものすごい美人の三年生のお姉さんだった。

 そのお姉さんは私を見て、

「もしかして、入部希望者?」

 と、これまた奇麗な声で言った。

 私はちょっと緊張して、

「ハイッ」

 と、応えた。

「中へどうぞ」

 そういわれて中へ入ってみると、何と私のほかにもいっぱい、入部希望者の一年生がいるではないですか。

 男と女、半々くらいかな。そんなに人気があるのかなぁと、思っていると、

「それゃあ」

 そう言って話し始めた人を見た瞬間、あたしはわかってしまった、みんなの入部動機が、だってカッコイイんだもの、ここの部の人たち、女の先輩は美人だし。

 この人達が目的だと、一目瞭然。

 まったく、本気で入部したいと思ってるあたしは、どうなるのって感じよ。

「入部動機がどうであれ、入部テストに合格しなければ、入部することはできないからそのつもりで。ちなみに俺は、部長の宮内健悟だ」

 入部テスト……ねぇ。

 そりゃぁ、まっね。すんなり入らせてくれるとは、思ってなかったけどね。

 どんなテストだろうと思っていたら、別の先輩がしゃべった。

「そして俺は、副部長の斎北貢だ。テスト内容はデスクワーク担当の水野聖から聞いてくれ」

 クス。

 この人が一番人気とみた。私の勘だけどね。

「代わりの紹介どうもありがとう。テスト内容は、知力・体力・瞬発力の三つだけです。そんなに難しいものじゃないから、地力は暗記・種類判別、体力はマラソン、女子は十キロ、男子は十五キロです。頑張ってください」

 それを聞いた瞬間、希望者の一人がおどおどしながら言った。

「すいません、あたしやっぱりやめます」

 そう言って、出ていってしまった。

 すると、ほかの子達も次々と、僕も私もといって出ていってしまった。

 気が付くと、私だけになっていた。

 部屋の中は静まり返っている。

 沈黙を破ったのは、斉北副部長だった。

 そして、沈黙を破った一言が、

「根性ねぇな」

 だった。

 顔のわりに、けっこうキツイ性格とみた。 まぁ、確かに私もそう思うけどね。

 次に口を開いたのは美人な先輩、名倉あや子さんだった。

「別にいいじゃないの。いつものことじゃない。あなただって悪い気はしないでしょ、あんな可愛い子達に慕われて」

「まぁ…な、でも、好かれるってのも大変だぜ?あや子はどうなんだ?」

「あたし? あたしは別に平気よ、だってみんな可愛いじゃない」

「あ、そ」

 そう言って、斎北副部長は奥の部屋に行ってしまった。あたしのことなんてすっかり忘れてるみたい。なんか存在を無視されたみたいで、ちょっとムっときた。

 でもあたしのことを気付いててくれた先輩がいた。宮内部長と水野先輩だ。

「残ったのは君だけだね、名前は?」

「はい。一年E組 江藤裕希です」

「じゃあ、江藤さん。これからテストやろうと思うけど、大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です」

「じゃ、聖。あと頼む」

「オーケイ。それじゃあ江藤さん、今から十分後に、体操着に着替えてグラウンドに」

「わかりました。じゃ、失礼します」

 教室にはもう誰もいない。

 ちょうど今、午後三時をまわろうとしている。

 こんな時間ではみんな帰ってしまっている、部活に入る人達以外は。

 着替えが終わり、教室を出る。そして長い渡り廊下。

 この渡り廊下は、三つの名前をもっている。

 それは昼と夜、昼の時は「キューピット・ロード」これは、お昼休みになるとカップルが多くなることから、つけられたのだそうです。そして、夜の名は「オレンジ・ロード」夕方になるとこの渡り廊下全部が、夕陽で染まることからつけられたそうです。

 たしかに、夕陽に染まったこの廊下はすごく奇麗だ。



 グラウンドには、水野先輩だけがいた。

「じゃ、始めるよ。タイムとの勝負だからね」

 ピストルを構える。

「よーい…」

 水野先輩のかけ声がかかり、

 パーンというピストルの音とともに、私は走り出した。

 十キロならまだ平気だ、なぜなら、体力がなければあの仕事は、やっていられない。

 それで、二十六分で難なくクリアー。楽勝だね。

 そして次の暗記と判別。これもできなければ、勤まりません。

 最後は瞬発力。

 これはそんなに必要じゃないけど、ちょっとでいいかな程度。

 ーで。無事に約一時間で終わってしまった。

 それで、全然バテていない私を見た水野先輩は、ビックリしていた。(フフン)

「江藤さん、すごいね君。特にマラソン、陸上やってたの? 中学時代」

「いいえなにも」

 言えるわけがない、本当のことなんて。

 絶対に。

「結果は今日の夜にでも電話するよ」

「はい」

 それで私は、家の電話番号を書いたメモを渡した。

 大丈夫だよね、今日は仕事入れないように寺島さんに言っといたし。

「じゃあ、気をつけて帰ってね」

「ハイ、さようなら」

 教室に戻り制服に着替えて、そして家に着いたのが午後五時。



 プハーッ!

 お風呂上がりにはやっぱり、麦茶に限るわ。麦茶の一気飲み! 

 ほんとは、ビールのほうがいいんだけどね、まだ私は未成年だからおあずけってわけ。まぁ飲んじゃうときもある、すごく嫌なことがあったときなんかね。やっぱり、こういう仕事をしているとね、いろいろあるのよ。

 ピロロロロッ♪

 明日の支度をしていると、電話が鳴った。

「はい。江藤です」

 宮内部長からだった。

「江藤さん、おめでとう、合格だよ」

「本当ですかっ」

「ああ、明日から正式部員だ。じゃ、明日放課後、部室で待ってるよ」

 そう言って、宮内部長は電話を切った。

 しばらくの沈黙。

「…やった…」

 ポツリと呟く…。

 ヤッター! 心の中で叫ぶ。

 正式部員だっ。

 とと、嬉しさのあまり、コップを落としそうになってしまった。アブナイアブナイ。

 まだ、何の部に入るか言ってませんでしたけど、明日から私は、探偵部員です。


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