「その親父、異世界にて少女と出会う」
拝啓おふくろ様
しばらく実家帰ってねぇけど元気にやってるでしょうか。畑仕事は大変でしょうがまぁ親父の方も元気でやってることだと思ってしばらくそっちには帰らないと思う、てか帰れないかもしれん。
俺、異世界にいます。
【そのオヤジ、異世界に飛ばされる】
あー、どうも。俺は酒川 耕太。年は38、痩せ型176センチ、無精髭とタバコが似合うと定評のあるまぁどこにでもいる目つきが異様に悪いのがたまにキズな中堅企業のサラリーマン(独身)です。突然ですが俺は今大草原に立っています。どこまでも広がる青い空!! 緑の草原!! そして隣には不思議そうに此方を見つめる少女!! 俺のスーツ姿が全く似つかわしくありません。
え?なぜそんなところにいるかって? HAHAHA、それはもうなんて言うか……。
「俺が聞きてえんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
それに向かって大咆哮。 そんな渾身の叫びも虚しく蒼穹に吸い込まれていって、残されたのは肩を落とす俺とびっくりした表情で此方を見つめる少女(推定15歳)
「あ、あのー……」
「…………」
「え、え~っと……もしも~し」
「…………」
「えう………む、無視しないでくださいよ~……」
先程から何やら少女(ロングでストレート、ぺったんこ)が何やら話しかけてくるが、正直俺は返事を返す気力がなかった。 それはなぜか……。
「……だって、猫耳だもんなー」
「へっ!? え、こ、この耳がそんなに可笑しいですか……?」
そう、少女はなんと猫耳をつけており、あろうことか尻尾まで生えているのだ!! …………何かのコスプレなのだろうか。
服装も何かのファンタジー漫画に出てくるような出で立ちで、正直あんまり関わりたくない。 そうか、最近の子供達の間ではこんなのが流行ってんのか……。
虚ろな目で少女を見つめ、その視線により少女が何やら慌てふためく姿をほんっっっっっとーにぼーっと眺めながら、俺はいい加減現実逃避をやめて自分に何があったのかを振り返ることにした。
まず、まずだ。 俺は何時もどおりに残業手当の欠片も出ないサービス残業を済ませ、帰宅ラッシュを過ぎてガラッガラの電車に乗って最寄り駅まで戻り、帰宅途中のコンビニでタバコとビニ弁(のり弁298円)を買って帰路につき、築12年の安アパートの二階、203号室の前までつき鍵を開け…………気づいたら草原のド真ん中に立っていた。 以上回想終わり。
「で、だ。…………此処、どこよ」
再度辺りを見回す。 見る限りの草原、遠くの方に山らしきものも見えるが、それ以外はほんとに綺麗な【草原】だ。 全く見覚えがないというか、こんな風景はネットの写真でしか見たことがない。
「……? ど、どうかしましたか……?」
と、なるとだ。最終手段であるこの少女に聞かなければならないのであるが……。
「……猫耳だもんなー」
「に、二回目!? そ、そんなに変ですか……?」
「変っていうか……ちょっとイタい、引く」
「えうぅ……ひ、ひどいですよ~……」
「で、まぁそれは置いといてそこなコスプレ少女よ、此処は何処だ」
「コス……? へ?ここは何処って、アスタリア大草原に決まってるじゃないですか」
俺の問いに、少女は首を傾げながらさも当然の事のように答える。だがしかし、俺はそのような地名は聞いたことがないし、まず日本にこれだけの規模の草原はない。
「あー……アスタリア大草原? って言うのは、地球のどのへんに在るんだ?」
我ながら馬鹿な質問だと思う。 これはきっと悪い夢なのだろう、夢のなかで猫耳少女に「此処は地球の何処ですか?」なんて聞くなんて見たことも聞いたこともない。だからきっとこの回答が返ってくる頃には目が醒めている、その筈だった。
「……チキュウ?」
…………あー、そう来たか。 ソッチの路線か。少女は明らかに、ものっそい純粋な目で此方をきょとんと見つつ、確定的にそんなもの知らないと言った感じで問いに答えてくれた。 つまり、つまりだこれはどういう事かというと……
「……異世界?」
兎にも角にも書き始めました枝垂屋です。
このおっさんシリーズ、頑張って書き上げようと思いますので良かったら長い目で付き合ってやってください