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遅くなって申し訳ありませんでした。

 優しく髪を梳かれる感覚で目が覚めた。時々頬に触れるその温もりはガイのものではなくて、でも彼と同じように安心する温もりで。

「ミウ、起きて。会議の時間だよ」

 私の意識が浮上したのを僅かな気配で読み取ったらしく、その人物は壊れ物を扱うかのように優しく私の肩を揺する。起きなきゃ。重い瞼をゆっくりと開けば、視界に入る眩しさに目を細めた。

「おはよう」

 眠い目を擦り見上げると、優しい笑みを浮かべた青年と目が合う。優しいのは私にだけだ、と聞いたのはいつだっけ。

「……おはよ、シオン」

 白金の混じった茶の猫っ毛に、翠の切れ長の瞳。その身に纏うのは五守(ゴシュ)こと五大守護神の最高幹部五人だけが着ることを許された、特殊加工済みの黒い生地に金の縁取りのされた軍服。警邏部の最高幹部、近衛こと近辺護衛部隊と対となるその軍服に憧れる者は多かれど、実際に着ることができるのは文字通りほんの一握りの精鋭だけだ。そしてその胸元に輝くのはプラチナのブローチ。十字架に、淡い蒼の着色を施された流が左を向いて纏わりついている。その龍はサファイアの瞳を持ち、口と鋭い爪の生えた手にも球体のサファイアを合わせて二つ抱えていた。左向きの龍は五大守護神、蒼は彼が率いる陸上機動本隊のカラー、龍が持つ三つの宝石は最高幹部の証。

 彼の名は、シオン。レンと同じ悪魔だが、大きく違うのは彼が非契約式の悪魔だというところか。とは言え彼も最上級悪魔、人間は勿論のこと他の悪魔達よりも遥かに強く、そして冷徹……らしい。普通は軍のような場所で人間と混じり生活していると同じように情が湧くと聞いたことがあるが、彼は全くそういうことはないようで。あくまでも優しいのは私にだけなのだと、この天界軍に入ったばかりの頃に聞かされた。

 私に対するその優しさも確かに『情ではない』とは言い切れないが、情は情でも同情だろう。最初はシオンの気紛れから関わるようになって、それから随分と時間を掛けてやっとこれだけの信頼関係を築くことができたのだ。優しさは優しさだが、私とシオンの関係は最早情と言うより互いに依存し合っているといった方が正しいだろう。でも、それでも良いんだと思う。私は今のままのシオンが好きで、信頼していて、きっとこれだけで十分だから。理由なんてそれだけでいい。

「起こしてごめんね」

 申し訳なさそうに微笑む彼に首を振って体を起こす。まだ覚醒していない頭で時計を見れば、針は九時過ぎを示していた。シオンが私を迎えに来た代わりに、ガイは仕事に向かったのだろう。ついさっきまで彼が居た証拠に、繋がれていた手にはまだ温もりが残っていた。

「さ、リオンに怒られる前に行こうね」

 シオンに促されるまま、ベッドの上で着替えを始める。男だらけの軍で生活しているのだから、今更誰の前で着替えようと気にしない。枕元にはレンが用意したであとう、整った軍服が置かれていた。着たまま寝ていた所為で皺になったワイシャツとズボンを脱ぎ捨て、新たなワイシャツとスカートに袖を通す。

 素材や色はシオンと同じく五大守護神のもの、デザインは私と主様で考えた可愛らしいもの。裾に金の縁取りがされた黒いプリーツスカートは短めに、燕尾服のように裾が四又になった黒い上着は同じく金の縁取りがなされ、その先にはそれぞれ一つずつ細かい装飾の施された金の玉飾りが。動く度に揺れるこの可愛らしい軍服は、私のお気に入りだ。

 ボタンを留めて、飾り縄とブローチを着けて、数多の武器を身に着けて、準備完了。仕上げに軽く手櫛で髪を整え、少し離れた扉付近で見守っていたシオンに駆け寄った。

区切りの良い場所が見当たらないので一度ここで区切ります。

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