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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一緒に

作者: 十奏風

「話って何?」

……来た!

「ごめんね、わざわざ来てもらって」

すると彼はにこっと笑って応えます。

「あんなこと言われて来ないわけにはいかないでしょ」

彼は私と目線をしばし絡めた後もう一度尋ねました。

「それで、話って何かな」

きっとこんなことは彼にしか話せないだろう。でも一番話したくない、人。

でも、話すって決めたんだ。なんでもないで済まさないって決めたんだ。

「あのね……」



その日は前々から死ぬって決めていた日でした。

なんだか生きているのが辛くて。

なんだか生きてるのに死んでるみたいで。

なんだかとっても空っぽで。

もう、さくっと死んでしまおう。そう思っていました。

そんな時、私は偶然踏切の近くを通りかかったのでそこで最期を迎えることにしました。

私は敷かれているレールの上に横たわりました。特に恐怖とか、そういったものはありませんでした。ただ、静かだったことを覚えています。やがて遮断機が鳴り始めました。

このまま誰に気付かれることもなくさくっと死ぬのだろう、そう思ったときに遮断機の発する音とは別のけたたましい音がしました。

首を起こして音のしたほうを見てみると偶然通りかかったと思われる警察官と思しき人がこちらへ慌てて走ってきます。警察官の後方には自転車が投げ出されていました。おそらく先ほどのけたたましい音はそれが原因だったんでしょう。

「貴女!馬鹿なことはよしなさい!」

とかそんなようなことを言われた気がします。警察官はすぐに私のところまできました。警察官が私を無理矢理起こそうとするので、私は必死で抵抗しました。すぐに起こされてしまいましたが、私はその後も抵抗を続けました。警察官ともみあいをしているうちに、私は泣き始めました。

もう、苦しいんだ。

もう、辛いんだ。

もう、嫌なんだ。

きっとそんなようなことを思っていたんだと思います。

こんなところで、こんなことに必死にならなくても。

わざわざこんな私を助けようとしてくれた人に暴力を振るわなくても。

冷静な自分が語りかけてきましたがここまでやった手前、引けない自分がいて、それを私は認めていました。

私は前者を殺し、後者を生かしました。

警察官に抵抗し、私はレールの上を確保していました。

そして、もみあいの末。

次の瞬間、私は尻餅をついていました。警察官に押し飛ばされたのだ、と気がついたときにはもう手遅れでした。遮断機が赤く発光する中滑り込んできた電車に警察官はひかれてしまいした。警察官の体は驚くほど簡単に跳ね上げられ、さきほどいたところからずっと遠いところに嫌な音を立てて落ちました。

やがて電車は止まり、運転手さんが出てきました。すぐに救急車が到着しました。車内の人や、周りの人たちが騒ぎ始めます。

そのとき、私はさきほどとは違った意味で泣いていました。

地面を濡らした涙に映りこむ救急車と遮断機の赤い光、カンカンと耳障りな音だけを鮮明に憶えています。



「そんなことが、あったんだ……」

彼は沈痛な面持ちで、静かに私の話を聞いていました。私は今すぐにでも彼の胸に泣きつきたい気持ちでしたが、必死でそれを抑えました。

でも、心配はいらなかったようです。彼はそっと私を抱きしめてくれました。

「じゃあ、警察官の分まで生きないとね」

彼が予想通りのことを言ってくれたので、私は少し可笑しくなりイタズラをしたくなりました。そのままキスしようとしてくる彼の唇に人差し指を当てて私は言います。

「なんて、さっきのは全部ウソ。本気にした?」

彼は驚いた顔をしましたが、少し笑って私にキスをしてくれました。

彼に包まれて幸せを感じながら私は思います。

気が変わったからやっぱりお墓参りは一人で行こう、と。

こんな拙作を読んでいただきありがとうございます。十奏風です。

しかし何故こうなった……。自分の中ではちゃんとテーマがあったんですけどいつの間にかどこかへ飛んでいってしまいました。

美人が意中の人にカレーを投げつける話を読み、MAYUのハートトゥハートを聞きながら執筆するとこうなるようです。不思議ですね。

感想とかもらえると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すっごくよかったです!初投稿とは思えないできですね。読みやすかったですよ? こんなところで、こんなことに必死にならなくても…のところで胸を打たれました。昔のことを思い出して。暗い方向へ必死…
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