七
このまま魔法の打ち合いになっても、こちらの位置をつかんでいる向こうの方が、有利だと言えるだろう。
アドバンテージを握るには、俺が行くしかないようだ。
「エルリーデ、潰してくるから指揮たのんだ」
「わかりました。気を付けていってらっしゃいませ」
マナを進行方向とは逆に噴射する事で宙に浮く。
魔力が感じられるのは……あの辺か。
エクスプローションを多重詠唱。待機。
ファイアーボールを多重詠唱。待機。
ウォーターウォールを多重詠唱。待機。
エクスプローションの発動とともに、敵さんの周りにはすり鉢状の穴があいた。
更にウォーターウォールを発動。とどめに、ファイアーボールで水蒸気爆発とやらを引き起こす。見よう見まねだが、何とか爆発は起こり、辺りには爆音が轟いた。
ふぅ。と一息つく。
無駄撃ちをしすぎた、と少し反省する。
それと同時に、部隊は面倒だ。とも。
問題の原因は絶った。街は問題なく陥落するだろう。
◇ ◆
「俺のところの被害は……生き残りを数えたほうが速かったな」
「私のところはそうでも無かったわ。住民の抵抗にあったぐらいかしら」
やはり、先頭に置いていたカンタの部隊は相当に被害が大きいらしい。
反面、レイナやメリアの部隊はほとんど被害が無く、直接戦闘に参加しなかったメリアの部隊にいたっては、死亡兵はゼロだ。
「メリアの部隊の人員をカンタの部隊にまわせ。
無くなった分は補充するから問題ない」
ゴブリンが叫ぶ声が聞こえる。
ほぼ同時にエルリーデが駆け寄ってくる。
「敵襲です! 魔王様、戦闘準備を!」
◇ ◆
どうやら第二の魔王が現れたらしい。
奴は多くの魔物を生み出す事が出来るらしく、大規模な戦闘が予想される。
それは仮定の話だった。
実際は敵は軟弱もいいところだ。唯一骨のあったデカブツ。おそらくはオーガと呼ばれる魔物だろうが、そいつが魔物の中では一番強かったらしい。
そいつを失った敵の前衛は崩れ、魔王とはすぐに対面できた。
少ししたら魔王を覆っている魔法を、内通者が取っ払う魔法を放つらしい。
それまでは適当にヒットアンドアウェイを繰り返すだけだ。
次も適当にSクラスの奴から引き抜くのだろう。
本当に。本当に楽しみだ。
一応これで完結です。
醜態の数々申し訳ありません。
↓↓以下背景の説明。
初代魔王は主人公が召喚される、召喚された勇者によって1万年前ほどに打ち滅ぼされた。
しかし、その力はあまりにも邪悪で、強大だった。
そう、周囲の魔物に影響を与え、強くするほどに。
法皇は考えた。
家臣のひとりが言い出した。
「異世界からきた者たちに、魔王の力を継承させ、それを倒せば魔王の力は弱くなっていくのではないか」と。
法皇は従えていた家門の内、もっとも裏の仕事に通じていた家を選び出し、魔王の傍につき、魔王の弱体化を命じた。
その家門は、代々深海のように蒼い髪をもっていた。
何度もそれを繰り返すうちに、魔力の質がよいものには、より多くの力が継承される、そして失われる事が分かった。
以上となります。
ここまで読んでくれた方。本当にありがとう御座いました!