六
「初めまして、魔王様。これからよろしくな!」
「初めましてっ! 魔王さま!」
「ふぁ~……。初めまして、魔王様」
上から、オーガ、バンパイア、リザードマンだ。
オーガはまだ顔つきがゴブリンに近いが、大分人間らしい顔つきをしている。
バンパイアは肌が異常に白い。髪も白い。目が赤い。
リザードマンは首の所まで鱗がある。髪は緑色で目は黄色い。
「はじめまして。
お前たちには名前を与え、ゴブリンを本格的に指揮してもらう。
オーガ。お前はカンタ。
バンパイア。お前はレイナ。
リザードマン。お前はメリアだ」
分かった。や、わっかりました! や、分かりました……ふにぁ。
と、三種三様の返事があった。
「カンタは今いるホブゴブリンを全て引きつれ、今までどうり狩りをしてくれ。
他の二人は待機だ。
それと、返事は『はい』で統一しろ」
「「「はい」」」
返事を確認して、エルリーデと一緒に家を出る。
「なぁ、エルリーデ。
魔物は皆あんなに綺麗なのか?」
「いえ。中にはあまりそうでないものもいます。
むしろ、あんなに綺麗な魔物は珍しいです」
「だよな」
と、言うのもカンタ、レイナ、メリア全員の見た目が麗しかったのだ。
カンタはワイルド系のイケメンだったし。
レイナは妖しげな魅力を放っていたし。
メリアは……普通に可愛い女の子だが。
村の平定も終わって特にする事が無くなった。
ここは一発、王都へいってかましてくるかな!
◇ ◆
王都へ行くための準備をしている。
毎日大量にゴブリンを生み出している。
これで五日目だから五千をくだらない。
さて、行軍だ。
ここから王都まで、約七日。ゴブリンの数が多いのでおそらく十日ほどはかかるだろう。
それに加えて、途中の街をつぶしながら行くので二から三週間ほどでは無いだろうか?
◇ ◆
行軍一日目。
まだ森の中にいる。
大軍をもっての行軍はかなり遅く、予想以上に時間がかかりそうだ。
ホブゴブリンに任せた軍の報告を、カンタたちにまとめさせ、報告させる。
ちなみに、カンタが先頭にあたる位置に。
レイナが中部。
後部がメリアだ。
「こっちの部隊は被害が100ちょいだ。
殆どが食料不足による餓死だな」
「こっちも似たような物ね。
列の真ん中にいるからそこまで死んでないけど、それでも50はくだらないわよ」
「こちらの被害は比較的軽いですよ。
20程度ですね。
それにしても今何時です? 眠いですね。……ふにゃぁ」
「そうか。別働隊で食べ物をとってくる数を増やす。
適当にホブゴブリンとゴブリンを見繕って当ててくれ。
それと、多少不満が出るかもしれないが先頭の戦闘に当たるものたちにすこしだけ多く食料を与えてくれ」
「はい」
カンタが返事をする。
「今日の行軍は終了だ。
各自、休むように伝えろ」
「「「はい」」」
◇ ◆
行軍二日目。
今日の内に森を抜けたいところだが、なにか前の方で揉め事が起こっているようだ。
見たところ朝食の配分にゴブリンたちが揉めているらしい。
カンタが出てきた。
揉めていたゴブリンを殴り飛ばす。
ゴブリンはおそらく死んだのだろう。
予想だが、死んだゴブリンの数が多いのはアレも原因だろう。
お昼をまわる頃には森を抜け、平野が見える。
平野の向こうにポツンと小さく城壁が見える。
広いスペースが確保できたので、一気にゴブリンを生み出す。
出来たゴブリンを最後尾に配置する。
夜になった。カンタに偵察へ行かせる。
「夜の内に進軍をするか?」
少し考えた後、エルリーデは応えた。
「私たちとは違い、ゴブリン達は夜目が効きません。
明日の朝、堂々と進軍し、貴方様が中でゴブリンを生み出すことが、最も敵に混乱を与えられる最善手でしょう」
朝になった。空は白み始め、森の中は活気を増している。
長い夜の獣の時間は終わり、平穏な空気がみちているはずの森はゴブリンによって破壊されている。
午前5時ほどだろう。
この世界の朝は早い。大半は起きてるだろう。
そんな中、俺は高らかと宣言する。
「突撃ッ!!」
ゴブリンが一斉に駆け出す。大地が揺れた。
比喩ではない。
これはおそらく--。
「アースクェイクですね」
エルリーデが言った。
アースクェイク。大量のマナ。MPの塊を地盤そのものに当てる事で、大地を揺らし、相手の機動力を著しく奪う魔法。
続けて打たれる魔法は限られている。
俺はウォーターウォールを多重詠唱する。
足を止めているゴブリンたちの前に展開。
読みどうりのエクスプローションの被害を最小限にとどめる事に成功する。
更に先読み。敵にはウェーブ系とマグマ系の二種のどちらかを選択するだろう。
ウォーターウォールに追加でマナを与え、マグマ系の魔法に対抗する。
ウェーブ系の魔法には、マナを直接当てて打ち消すため、用意をする。
検討ミスがあった。雷系の魔法だ。
部隊の前の方にいたゴブリンの大半を失った。
アースクェイクは定期的に使われているようだ。
おそらく勇者だろう。
さて、どうしたものか。