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 目の前で勇者達が魔王との戦いを繰り広げている。魔王は勇者の攻撃を避け、流し、攻撃する。俺の仲間がまた一人、また一人とやられていく。それを俺は黙って見ていることしか出来ない。

 前衛に守られていた後衛の魔術師達が連携して混合属性の大呪文を放つ。が、魔王に簡単に往なされる。しかし、俺が参加していないのであまり威力は無かったようだ。

 総勢200人ほどの勇者達は、仲間が半分やられるのを見て撤退していった。

 何故こうなってしまったのだろう? 事は半年前に遡る。



  ◇ ◆



 俺は中学校を卒業し、無事に高校に受かることが出来た。

 今日は中学での仲間三人と遊びに行くはずだった。

 夜でも喧騒に包まれている池袋を人ごみを避けながら談笑してどこに行くか話し合っていた。

 最初におかしいと気づいたのは、俺だった。いつもなら40は行ってるサラリーマンがごろごろ居る筈なのに、何故か俺たちとほぼ同年代の男女しか回りに居なかった。

 突然前方から悲鳴が上がって、気づいたときにはもう遅かった。前から二台のトラックが綺麗に並んで突っ込んできたんだ。

 道路に出ても車に轢かれるのがオチだった。俺たちはまったく減速もせずに突っ込んでくるトラックを唯見ていることしか出来なかった。


 弾き飛ばされるのではなく、前から逃げて突っ込んできた奴らに薙ぎ倒されて、身動きも取れないまま俺は逝った。

 意思も無く、唯魂と呼べるかもしれないものが引っ張られて行く。その先は見通すことも出来ないほど暗い。後ろには引かれて原型を留めていない、俺と友達が居た。

 突然、右側に引っ張られた。しかし先ほどまで引っ張っていた存在があるので、両方から引っ張られる形となり、魂が裂けそうだ。

 片方が諦めたように引っ張るのをやめ右側に飛ぶように引っ張られていった。




 ◇ ◆



 俺は冷たい床の上に寝ていた。いつもどうりの身体だった。周りには、同じ様にねっころがって居る人や起き上がっている人もいた。

 全員が起き上がると声が響き渡った。


「ようこそ! ソルディオス中央に位置する、聖霊都市アルカディアへ!

 皆様は召喚されし勇者です! 魔王を倒してください!!」


 その場の空気が凍りついた。いち早くその言葉の意味を理解した男が声のしたほうに雄たけびを上げながら向かっていく。

 しかしその男は、誰かに止められるのではなく、見えない壁にぶち当たったように空中で伸びた。よく見たら、声の主は綺麗な着物を身につけた幼女だった。


「もちろん今のままではあなた方は、私達の国の一般兵程度に強いだけです。

 それなりの訓練を積んで魔王を倒してもらいます」


 また先ほどの男と同じ様に幼女へ突っ込んでいった。しかし、見えない壁にぶつかる。


「何度も同じ事をしないでください。あなた方をこちらの世界に呼び出したので疲れているんです」


 その言葉にほぼ全員が固まった。

 一人が叫んだ。連鎖反応で次々と叫びだす。それは次第に怒声に変わった。


「五月蝿いですね……」


 幼女は確かに呟いた。突如、前のほうで叫んでいた奴等が炎に包まれる。

 それまで騒いでいた奴等は静かになった。幼女は話を続けた。


「やっと静かになりましたね」


 幼女は微笑んだ。悪魔的な可憐さを持つそれは、その場に居た全ての者を魅了し、背筋を凍り付かせた。


「先程も言いましたが、あなた方には魔王を倒すための訓練を受けてもらいます。

 百人長程度の実力をつけてもらおうと考えています。

 魔力量に応じて部屋分けをします。この後、順番に並んで検査を受けてもらいます。

 分かりましたね?」


 ◇ ◆


 俺たちは唯頷くしかなかった。

 その後、俺はSクラスだと言われ驚かれた。最も、俺は『Sクラス? 何それ?』と、いう感じだった。

 Sクラスの内装は豪華で、邸宅という感じだった。そこから、魔法の知識をこれでもか! と言うほど叩き込まれ、出来ない奴は罰せられる。

 俺たちはある程度のコミュニケーションを取って生活し、半年後には魔王討伐に乗り出していた。



 魔王討伐への道中では大量の魔物が出てきた。殆どの場合は、前衛が敵を抑え後衛が魔法を叩き込むという形で対応できた。

 そうする事で特に負傷する者も居なく、魔王の元に辿り着いた……。


 勇者たちの先制攻撃が決まった瞬間に、周りが真っ暗になった。

 黒い幕に覆われている感じだ。向こうの声は聞こえるがこっちの声は聞こえていないらしい。更に、向こうからこっちは見えないらしい。俺を探す声が聞こえた。


 突然後ろから話しかけられる。


「お早う御座います。26代目魔王様」


 深海のような色のした艶のある髪を、腰までストレートに伸ばした美女が居た。

 多分どっかの住人は、踏みつけて罵って下さい! と御願いするだろう。


「は? 魔王? 俺がか?」

「そうで御座います。

 私はエルリーデで御座います。今後、魔王様の様々なお世話をさせて頂きます」

「何で俺が魔王なんだ?」

「具体的に魔王様にはダンジョンを創り、世界を制圧していただきます」

「だから何でおr――」

「貴方様より前の魔王様はいづれも、勇者様に倒されてしまいました。

 ほら、今戦っている魔王様だってもう少しで死んでしまいます。

 後、26秒で――」


 後ろを振り向くと、剣士三人が魔王を取り囲んでいた。


 突然耳元で声がする


「5,4,3――」


 0、と聞こえた瞬間に、剣士が散開し中級魔術が連続で三発打ち込まれる。

 剣士4人が魔王に剣を突き立てる。

 魔王が地面に倒れ付した。


「ね? そうだったでしょ」


 エルリーデは笑った。


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