《全編》 後書 ~感謝を込めて~
やっと書き終わりました。正直、こんなに長くなると思っていませんでした。
思えば、最初に書いたのは、不気味な仮面の魔導師ヴィルトと薄幸の少年セレンの話だったはず。それが、なんでこんな話に……。
だいたい主人公はどう見てもイージェンです。どうして、普通の「剣と魔法」のファンタジーにならないのか、本人も首を傾げるばかりです。
テイストは古いSF、設定としてはかなりクラシックです。目新しいものはたぶん、ほとんどありません。ただ、テーマは難しく、解決はほぼできないものです。どれだけ自然物だけで、ある程度文化的な生活ができるか、そう考えると、時代は蒸気機関が発明される以前くらいだな、中世くらいかなといういい加減な発想です。
この話を書いていた頃は空前のエコブームでした。地球温暖化、エネルギー問題、オゾン層破壊など、文明が自然を破壊していることの『つけ』の時代として過激なまでにエコが叫ばれていました。現在はあの《大災厄》の影響により、エコより非核への道の方に重きを置かれているようになりましたが、それでもエコなる言葉の魔力の影響は強いです。
でも、科学技術が発達していく段階ですでに言い尽くされていることなのに、人類はなかなか省エネを実行できないわけです。まさに、「無理やりとりあげる」しかないのです。そう、某アニメで描かれていたように。
この話の中でも、ほんとうは、マシンナートたちから、一切のテクノロジイを取り上げて、ぽんと地上に放り出すべきだと思うのです。おそらくはほとんどのヒトが死ぬでしょう。そして数えるほどしか生き残らない。本来はそうすべきなのですが、イージェンをいいヒトに書きすぎてしまって、できなくなってしまいました。ただ、マシンナートたちからすると、とても理不尽な要求をされているので、冷酷非情だと思われているでしょうけど。
今の地球において、ほんとうに自然破壊を止めて、かつての活力を取り戻すには、現段階では、テクノロジイを後退させるしかないと思います。日本で言えば昭和三〇年代の暮らしに戻れば、かなり省エネできるでしょう。でも、本当にハイパーなテクノロジイが生まれて、クリーンでほんの少しで膨大なエネルギーが得られて、工業製品のほとんどがリサイクルできて、今までの産業廃棄物をなくすことができて、無駄を出さない生産体制ができたら……。
資源の無駄については、市場がある資本主義経済の間はなくすのは無理だろうなぁ。かといって、今どき配給による計画経済なんて化石的なシステムは「ありえない」し。結局生活スタイルや商品の個性や多様性を求めるかぎり、無駄は避けられない問題なので、完全リサイクルによって、資源を循環するしかないようです。でも、もしそんなハイパーテクノロジイができたらステキだけど、それまで地球は持つのかどうか、それが問題です。
お詫びです。タイトルや作中のフランス語っぽい外来語はほとんどでたらめですのでご了承ください。英語にはない雰囲気を出したかったためです。じゃあ、なんでドイツ語ではないのだというと、なんとなくふにゃふにゃ感を出したかったのです。鼻にかかった声でお読み下さい。それと、『黄金の道』は、あのSFのあれです。パクリました。すみませんです。
ちなみに、作者自身は「テクノロジイ万歳」です。科学大好きです。エコな生活はしていません。電力バリバリ使っています。省エネ?なにそれ美味しいの?なヒトです。幽霊も妖精もいないし、魔力なんてない、プラズマでいいじゃんと思っています。パリスの主張そのまんまです。でも、やっぱり自然は大切だよねと思います。自分勝手ですね(笑)
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。本当に感謝しております。
続編は……あるのかもしれない……
それでは、長い間お付き合い有難うございました。ほんとうに感謝しています。
そういえば、セレンを幸せにしてやってと某読者様から言われましたが、セレンはとても幸せです。おなかいっぱい食べられるし、きちんとベッドで寝られるし、大好きなアートランに身体を触ってもらえるし、『魚さん』と泳げるし、カサン、ヴァン、リュール、ウルス、そしてイージェンと一緒にいられるのですから。
空と海と大地と、そこに住まいするすべての生き物に、素子の恵みがあらんことを。
本間 範子