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国作りをしよう  作者: 廉志
第一章 村作りをしよう
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第四話 畑を耕し、家を建てよう その2

「と言うことで、ダリスさんは建築・土木関係の責任者として、ジェイクさんは食料関係の責任者として追加採用とします。よろしいですか?」


ボロ小屋にダリスとジェイクを呼び、追加採用の旨を伝える。


「私はかまいません。ありがとうございます」とジェイクが

「俺もかまわねぇぜ。力仕事なら任せろ!!」とダリスが言った。

二人とも給料が上がるため、是非もないと言った感じだ。




「前から聞こうと思っていたんだけど……」


ダリスとジェイクが小屋から出て行ったあと、小屋の隅にいたイリーナがトールに話しかける。


「私たちの給料ってあんたの私財なんだろ? その収入源って何なんだ? 奴隷を買った金とか、この土地を買った金とか……どっから湧いて来るんだ?」


イリーナの疑問は当然のものと言える。

土地の値段はイリーナには知る由もないが、奴隷を買った値段なら分かっている。

三十人合わせて五万オルカは払っていた。

一オルカあれば、平民が一週間食べていけるほどであるから、どれほど莫大な金をつぎ込んだかが分かる。


「基本的には僕の貯金を崩して給料は払っています。みなさんを『買った』のもそこからですね。それから土地に関してですが、お金に困っている貴族の方から買い取りました。元々が放置されていた場所だそうで、安く買えましたが……ああ、それと自治権もありますから法的にも問題ありませんよ?」

「安くって言っても限度があるだろう? そもそもどうやってそんな金を貯めたんだよ」

「それはまあ…………色々と……」


最後の方はあいまいにはぐらかしたトール。

イリーナもあまり深く追求しても意味が無いと悟り、質問をそこでやめた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「しかし…………たくさん切りましたね……」


トールの目の前には切り倒された丸太が並べられている。

その数実に……二百八十本!

その半分以下の木を切ろうと思っていたトールにとっては予想外の成果だった。

ちなみに、一度止めに入ったトールだったが、目的の数に少し足りていないという理由から別の場所で伐採を再開させたのだが、再び目を離したすきに膨大な量の伐採をたった数人の男たちが行ってしまっていた。


「いや~、悪かったなぁ! ただやるのもつまらねぇから他のやつと競争してたんだが、熱が入っちまってな! がっはっはっはっは!!」


豪快に笑うダリス。謝ってはいるものの、悪びれてはいないようだ。


「ま、まあ……数があるのは嬉しい誤算でしたけど……よく一日で出来ましたね」


ため息交じりに呟くトール。


「んで? これでどうやって家を建てるんだ?」

「ああ、いえ。この木材はまだ使いません。加工を施して、乾燥させないと使えませんから」


木材は乾燥させてからでないと使えない。無理やり使えないことも無いが確実に建物の寿命は縮むことになる。

先日まで根を生やしていたのだから、出来た丸太にはまだ多くの水分が含まれているのだ。


「あ? じゃあどうやって家を建てるんだよ」

「それは……多分もうすぐ……」

「トール様ーーー!!」


トールが説明をしようとすると、その言葉を遮るようにアニエスがトールの名前を叫び、突っ込んできた。


「ぐはっ! ア、アニエスさん。木材は届きましたか?」

「はい! 無事に届きました。今丘の上で下ろしてもらっているです!」

「そ、そうですか。分かりました……ではみなさん、アニエスさんが案内しますので木材を取りに行ってください。僕は畑の方を見てきますので」

「なんだ。もう材料を用意してたってことかい? 準備のいいこったなぁ」


感心しながら、ダリスは他の村人を連れてアニエスについて行った。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


所変わって畑予定地


「ジェイクさん、畑の様子はどうですか?」

「順調ですよ。指示された通り『ふようど』と言うのも混ぜておきました」


「どうですか?」と土をすくってトールに見せる。


「うん。これなら良い野菜が出来そうですね。本当なら鶏糞か牛フンも欲しかったんですけど……」

「糞……ですか、そんなものを使って大丈夫なのですか?」


ジェイクが考えたのは糞という不衛生なものを食べ物に使って大丈夫なのかということ。

この世界において有機栽培と言うものはあまりなじみが無い。

収穫量が減れば神様に祈ったり供物を捧げたりと、信仰が足りないと思ってしまう人が多い。

ジェイクもまたその一人であり、トールが説明しているものは全く未知のものであった。


「糞と言うのは土に混ぜることによって栄養価の高い肥料になるんです。鶏糞や牛フンが使えますね」

「ふーむ、そうなのですか……いや、勉強になります」


やはりジェイクはかなり有能な人材だとトールは確信した。

既存の知識を上書きするというのは難しい。

今まで絶対だと思われてきたことを否定するのは今までやってきたことを否定することと同義だからだ。

その点ジェイクは非常に柔軟な思考の持ち主だと言える。


「本当なら土に肥料がなじむまで1~2週間は待ちたいんですけど、早く収穫が出来るようにもう種を植えてしまいましょうか」


そう言ってエイリスとともに担いできた野菜の種をジェイクに渡す。


「今回植えるのは、『カブ』『ジャガイモ』『ラディッシュ』『大根』です。収穫時期や種まきの時期も考えてずらしながら他の野菜も作る予定です」

「わかりました。この程度なら今日中にも植えることが出来るでしょう……ですが、どれも収穫は早いものですがそれでも最低ひと月くらいはかかります。その間の食料はどうしましょうか?」

「それは隣町まで買い出しに行きます。この村のあるもの(・・・・)を売って財源にしようと思っていますが……それはまた後日説明しますね」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



あとはジェイクに任せても大丈夫だと判断したトールは、ひとまずダリス達の元に戻ってきていた。

ただ木を切り倒す作業とは違い、それなりの距離を行き来することもあり木材の運搬作業はそれほど進んでいなかった。だが、普通では考えられないほどの早さで木材を運んでいる者が一人いた。


「お、おいトールさん! あの子一体どうなってるんだ!?」


ダリスがトールに問いかける。

『あの子』と言って指差したのは、自分の体の倍近くの木材を軽々と持ち上げ疾走しているアニエスのことだった。


「あんな小っこい体でなんであんな重いものを持てるんだ!? 俺たち大人の倍は働いてやがる」

「ああ、アニエスさんはエルフと獣人族(ビストロイド)のハーフなんです。なので、身体能力は人並み以上なんですよ?」

「エルフと獣人族(ビストロイド)のハーフ!? はぁ~、珍しいこともあるもんだなぁ~……つーことは、あのべっぴんの姉ちゃんの方もこんな怪力なのか?」

「エイリスさんのことですか? 彼女はアニエスさんと違い、獣人族(ビストロイド)の特徴は受け継いでいません。代わりにエルフの特徴が、目と耳が異常に良いそうです」


エイリスとアニエスはエルフと獣人族(ビストロイド)のハーフである。

身体能力の特徴として、エルフは目と耳が良く、獣人族(ビストロイド)は体力と運動能力が高いことが挙げられている。

ただ、獣人族(ビストロイド)はともかく、エルフは他種族との交わりを非常に嫌う傾向にあり、エルフとのハーフはその数が非常に少ない。その理由としてエルフとのハーフは、どの種族とのものであれ、人間の見た目で生まれてくるため、忌み嫌われているのである。

そして、その珍しさからダリスも驚いていたわけだ。


「なるほどねぇ……だが、あの譲ちゃんも一生懸命なのは分かるが……」



「きゃうっ!…………あう~、転んでしまったです……」


豪快に地面に突っ込んでしまうアニエス。

運搬中だった木材がきれいな放物線を描いて作業中の村人たちに突き刺さっていった。

「だー!! あぶねぇよ譲ちゃん!!」「これで何度目だ! 殺すつもりか!」

口々に不満の声をあげる村人たち。幸いにしてけが人はまだ出ていないようだ。


「あのドジを直してくれないものかねぇ」

「…………すみません。本人も悪気は無いんでしょうが……」


アニエスは悪気があってドジっ子を演じているわけではない。

それが分かっている村人たちは、笑顔で手伝ってくれているアニエスを断れないでいた。もちろん、ただ邪魔なだけならすぐに追い出しているだろうが、アニエスの怪力はそのドジを帳消しにしてくれるほど有益なものだった。




「本当に死人が出なければ良いのですが……」



トールは遠目でそうつぶやくしかなかった……



ようやくお金の価値の説明です。

一オルカ=1000円くらいです……多分。

恐らく物価の安い世界なんでしょうね。

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