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二、 

「できたぞ」

 やわらかい優の声に振り返ると、二つ皿を持ってテーブルの上においた優が立ちっぱなしで窓から空を見上げていた。

「……きれいだな」

「うん」

 自分と同じように空に目を奪われている優にふっと笑いながら菫はテーブルの前に座って皿の中を見た。

「うわぁ」

「作れるのはこんなもんだ」

「こんなもんっていうレベルじゃないでしょ、これ」

 出来上がったそれ、皿に盛られていたのはカルボナーラだった。しかも、本格的な匂いのするチーズの。

「そうでもないさ。冷める前にくいな」

 フォークをどこからともなく取り出して一本差し出した優は受け取った菫を見てふっと笑う。

「めしあがれ」

 笑いながらそういった優に菫は受け取ったフォークをポロリと落としてその優しい優の顔を見入った。

「ほら」

 取り落としたフォークを拾って菫の手に握らせて優は自分の分をつつきはじめた。

 そんな優を見ながら菫は目を伏せてそっとため息をついて同じように皿の中身をつついて食べはじめた。

「おいし」

「そうかい」

 うなずいて平らげた優がふらつきながら台所に立って皿を片付けはじめた。

「ちょ、あたしも」

「いや、いい。そこでゆっくりしてろ」

 そういって食べ終わって立ち上がった菫の食器も一緒に洗って片付ける。

「……ごめん」

「いや、いいよ。気にするな」

 隣に座った優にそういうと優は首を振って優しく笑った。

「ごめんな。テレビ置いてなくて」

 二人の間にとどまる静寂に優が呟く。菫はそっと首を横にふって窓の向こうを見た。

「雨の音が聞こえるぐらいの静かさが好き」

「……俺もだよ」

 奇妙に優しい優の声を聞きながら菫は不思議な眠気を感じて、そのまま眠ってしまっていた――。

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