不意の失態
ゴォゴォと音を立てて燃え盛る炎。
次々と力なく地に伏していく何万もの鎧たち。
魔法省の5大トップであるサイラス・ハーブは自分たちの勝ちは決まったものだと確信してこの美しいほどに赤い光景を静かに見ていた。いや、正確には赤の中にある漆黒に目を向けていた。
その漆黒が杖をひと振りすると更に赤の上に稲光が走る。そして漆黒を目掛けて空中を飛んでいた竜の群れはパタパタと落ちて燃えていく。私は感心しているがそれと同時に呆れたように笑いをこぼしてしまった。自分だって魔法省5大トップの深緑としてこの戦地に赴いているが、あんなに莫大な魔法をほぼ永続的に使うことはできない。そもそもこの戦地には、漆黒と私の2人が任命されて来たのに、私はただ見ているだけじゃないか。
「ははっ、漆黒が居れば私の仕事も減って楽できてしまいますね。」
私は一人で冗談っぽくそう呟きつつも、漆黒の周りに3重にした強力な防御結界を張ってやった。が_____
「くぁぁぁぁ…ぁぁああ!!」
全身が刺されるような痛みに襲われ、しばらくもがき苦しむ。しかし私は無傷だ。私ははっと何かに気づいたように急いで杖を振った。
「これは_____!?」
杖はただ空振りするだけで何も起こらない。何者かがこの空間の魔力を遮断した。魔力を遮断するとそれに準ずる技は何も使えなくなる。それは魔法も含まれる。私は大声で叫びながら漆黒を見た。
「漆黒!!!ここは魔力が遮断されています!一旦退散しますよ!」
しかし、もう遅かった。私はその場に力なく跪きながら漆黒を見て唖然とする。
私がずっと尊敬して、敬愛して、戦地を共にした仲間、ライバルであった漆黒は、その美しい黒い髪を真っ赤に染めていた。彼女に刺さっているのは何本もの槍だ。
「漆黒!!起きろ!!!漆黒…ミリカ・クォーツ!!!!」
意識が遠のく中でバチバチと燃え盛る炎の音とともに深緑の私を必死に呼ぶ声が聞こえた気がした。
はぁ。暑かったなぁ。痛かったなぁ。まだ魔法をたくさん勉強したかったのになぁ。そんな後悔がポツポツと浮かんでくる。
私、漆黒と呼ばれていたミリカ・クォーツは貧乏な子爵家の子供だったので学校に通わせて貰えず、本だけで独学で魔法を勉強してきた。そんなある日、偶然家に来た5大トップの深紅に魔法の腕を認められて、偶然に5大トップ試験に参加させられ、偶然に5大トップの漆黒になれてしまったのだ。それからというもの、同じ時期に5大トップになった深緑とはよく一緒に魔塔にある図書館で魔法を勉強した。深緑は公爵家の出身な上に長命種だったため知識が豊富で、勉強を教わるのは楽しかった。そして、私には大切な使い魔もできた。使い魔のローは強い。なによりとても可愛い。
しかし今回の戦争ではローには領民を守るのに専念してもらったので一緒にいることが出来なかった。
あまりにも後悔が多すぎる。
そんな事を考えているうちに私の意識は途絶えてしまった。




