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ライン型幾何学都市2

挿絵(By みてみん)


「ところで、例のあの都市は完成したかね?」


定例会議の後、総理大臣は政務秘書官に向かってそう聞いた。


「ライン型幾何学都市ですか? 順調です。と言うか、もう一本完成しております」


「なに? もうできたのか? まだ半年しかたっていないぞ」


総理大臣は驚愕の表情を浮かべる。


「中は木造20階建てで、外側には繊維を混ぜたコンクリートを流し込むだけですから、非常に簡単です。上下水道ガス管も一直線なわけでして、電線も同じくそうでありまして、大した手間はかからなかったようです」


「そうか・・・。それでは視察に行こうじゃないか」



~~翌日~~



「大きいな・・・」


厚壁円錐型集合住宅の前に立ち、総理大臣は上を見上げながらそう言った。


「高さ60mあります。底面の直径は90m、天井の直径は30mです。

20階建てで総床面積は約70000平方メートルです」


「さっそく入ってみようじゃないか」


総理大臣と政務秘書官はSP3人と一緒に建物の中に入った。


中は完全に木造だった。

廊下をしばらく進むとエレベーターホールが見えてきた。

15人乗りのエレベーターが6基ある。


「せっかくだから最上階に行こうか」


言われて政務秘書官は20Fのボタンを押した。


しばらくして20階に到着。


「エレベーターはさすがに金属製か」


「そうです。おそらく30年ほどで取り換えが必要になります。メンテナンス費用と合わせて日額3円ほど家賃が上昇してしまいました」


政務秘書官は申し訳なさそうにそう言った。


「それくらいは誤差の範囲内だ。年間1000円で住めるということだろう? 十分じゃないか」


「どの部屋も内装は同じになっています」


扉を開けると、そこには広々とした空間が広がっていた。


「結構広いじゃないか」


総理大臣は言いながら明かりのスイッチらしきボタンを押した。

LEDライトが点灯され、室内が明るくなる。


「13.5畳あります。天井の高さは2.5mです」


「うむ、十分な広さだ。これなら窓が無くても快適に暮らすことができるだろう」


厚壁円錐型集合住宅には窓は一つも付いていない。

これによって耐久性、保温性、断熱性が格段に上昇しているのだ。


「たしかにこれなら、小型の核兵器くらいならビクともしないだろうな」


総理大臣は笑顔でそう言った。


「そのほかにもすべての天災やシロアリ被害をゼロにすることができます」


「素晴らしいことじゃないか」


「おそれいります」


「しかし、トイレ、風呂、キッチン、洗濯機がないというのは少し寂しいがな」


総理大臣はそう言って、大型薄型テレビのスイッチを入れた。

天気予報の番組が映し出される。


「トイレは各フロア共用、風呂は建物外の銭湯で、洗い場も銭湯の横のコインランドリーで、そして食事はレストランでとることになります。結果として水とエネルギーの節約になり、食材ロスも限りなくゼロに抑えることができるようになりました」


「なるほど・・・それはうれしい副次効果だね。うん? そういえばこの部屋にはエアコンがついていないようだが?」


総理大臣は部屋の中をくるくる見回しながらそう言った。


「エアコンは必要ありません。外の幅1mのコンクリート壁が保温、断熱してくれるので、部屋の中の気温は25度前後で一定に保たれます」


「なんと、それはすごいな。これもまた省エネになるではないか」


5人は建物の外に出て、次は厚壁内窓式円輪型施設に足を向けた。


「この建物も外壁は鉄筋不使用のコンクリートで、中は木造かね?」


「その通りです。こちらも3000年間使用できる予定です」


建物はドーナツ形で、内側はスケルトンの強化ガラスでできていた。

窓の外には樹木林が広がっている。


「やはり窓の外の景色を楽しめるのはよいな」


樹木の先に、厚壁円錐型集合住宅の先端部分が見えていた。


「少し天井面が丸くなっているようにみえるが?」


「その通りです。天井面は緩やかなアーチ状になっております。構造力学の結果としてああいう形状に落ち着きました。こちらの建物もそれは同じですよ」


5人は再び外に出て、しばらくその場で立ち話をした。


「都市内部に車が入ってこないのは良い考えだね」


総理大臣は周囲を見回しながらそう言った。


「はい。極めて安全です」


「銭湯、コインランドリー、レストランも一直線上に配置されているね」


「上下水道管を最短化したため、あのような配置になりました」


「ふむ、徹底しているな。見事だ。これならどんなに貧しい国でも同じものを作れるな」


「世界最貧国でも建造できると思われます。多少、じかんはかかるでしょうが」


少し強めの風が吹いた。

遮蔽物がない分、風通しが良いようだった。


「理想の世界というものは、案外、古い技術で実現できたんだな・・・」


総理大臣がつぶやくようにそう言った。


「今後はライン型都市の川を挟んだ反対側の土地に農地を展開していく予定です。川にはこちら側にだけ片側堤防を設け、洪水時には農地側に越水させるようにします。これで厄介な洪水被害もゼロに押しとどめることが可能になります」


「・・・良いことだ」





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