第一話 平凡になりたい
今日、僕の人生が決まる...
12月の初め、外に出るとかなり冷え込んでいた。
今日は中学3年生2学期最後にある、期末テストが返ってくる。
今回のテストで僕の人生が決まる。
※6時間目まで時間をとばします。
しばらくお待ちください。
学校でいつも聞くチャイムの音が鳴る。
「起立 きょうつけい 礼 お願いします『お願いします』」
いつも通り、みんなが挨拶をする。
みんなではないか?
まあそんなことはどうでもいい。
「テストを返すので、番号順に取りに来てください」
先生がテストを返し始めた。
「佐々木 晃太」
「佐藤 愛田」
「佐藤 栄作」
「佐藤 公孝」
「佐藤 楓木」
次々と名前が呼ばれていく。
「鈴木 陽翔」
先生の高い声が教室に響いた。
僕は全身に力を入れて立ち上がった。
そしてゆっくりと先生のいる教卓に近づく。
先生が数枚の紙を裏面にして手に取った。
そして僕の目の前に運命の紙が差し出される。
それを僕は恐る恐る手に取る。
そしてゆっくりと席に戻った...
僕は机に着いて、一気にテストを見るか、一つずつ見るか悩んでいた。
だけど、前にいる二人が一気にテストを見ていたので僕も一気にテストを見ることにした。
(1. 2. 3...)
バサっッ
僕は一気にテストを見た...
えーと
英語65点
国語60点
数学64点
理科59点
社会54点
5教科は悪くない。
その他副教科も大体60点前後だった。
我ながら上出来だ!
多分勝ち確かな?
だけどここからが本番だ。
黒板に平均点が書かれていく。
そう本命は平均点だ。
僕は目を凝らして黒板に書かれた白い字を見る。
英語60点
国語58点
数学63点
理科55点
【社会32点】
ん?【32】とは?
しかも全部外してる
詰んだ......……..................................................
「おーい、大丈夫ですか?生きてる?死にましたかー?」
机に突っ伏してた横の耳元で高くうるさい声が、僕の脳を揺らす。
「恵里奈うるさい、黙って欲しい、テスト詰んだんだ」
僕の気分はただ落ちだ。
こんなテストの点数じゃ0点と変わらない。
「ちょっとー、いつまでそうしてるの?帰りのホームルームとっくの昔に終わったよ」
恵里奈が喋りかけてくる。
めんどくさいので無視した。
「早く帰ろー」
無視する。
しばらくすると教室から人が消える音がした。
多分恵里奈が帰ったのだろう。
恵里奈にしてはしつこくない。
珍しい...
俺は机に突っ伏したまま、深い闇に落ちた。
.......
頬が冷たい。
なにか冷たい物体が頬にあたっているの方が正しい。
「下の自販機でコーラ買ってきたから飲も」
机に何かが置かれる音がした。
俺は机につけていた頭を上に上げる。
真っ暗な教室に、夕方の日差しが差し込んで眩しい。
そこに日差しを遮るように、恵里奈の顔が映りこんだ。
なんだかんだ恵里奈との付き合いは長い。
小学生1年生の時に親の付き合いであったのが始まりだ。
そこから家が近かったから遊びに行ったりした。
中学校では家が近かったので一緒になった。
そして中3の現在まで親しくやっている。
いわゆる幼なじみってやつだ。
ひとつ問題なのは、顔立ちとスタイルがいいから、他の男子達に妬まれるのだ。
恵里奈に目立ちたくないから、「学校内では距離置いて」って言ったけど、その約束は10分後に破られた。
だと言って悪いやつではない。
コーラ買ってきてくれたり気がきくし。
人が見えないところで結構努力しているタイプの人間だ。
「おーい、何ぼっーとしてるの? 毒味必要?」
恵里奈が僕の顔の前で手を振り喋りかけてきた。
せっかく買ってきてくれたコーラだ、僕はありがたくコーラを貰うことにした。
「ごめん、テストの結果がショックでぼっーとしてた、コーラありがとう、いただきます」
俺は、恵里奈が買ってきてくれたコーラを手に取って、キャップを捻った。
すると、『パンッッ!!』と音と共に、コーラが吹き飛んできた。
僕はとっさに、腕で顔を隠して目を瞑った。
そして冷たい物が雨のように僕の体に当たった。
「あははは!」
僕はゆっくりと目を開けた。
やられてしまったようだ...
体中コーラだらけだ。
制服死んだ。
「あははは!」
恵里奈はめっちゃ笑っている。
「恵里奈コーラ振ったろ!」
「あはははꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)あはは」
こいつ!!!
僕は、コーラを恵里奈に仕返しとばかり投げつけた。「いっった!えっっ酷くない仕返しだー」
恵里奈は自分の飲んでいたコーラに、あれを入れてしまった...あれを...
その瞬間コーラが高圧洗浄機の如く吹き出した。
「降参しますっ」
降参は遅かったようで、吹き出したコーラの大半が僕に降り注いだ。
制服が最悪だ。
「どお?元気になったでしょ」
俺の投げたコーラと、俺に当たったコーラが跳ねて絵里奈もコーラでびしょびしょに濡れになっていた。
「おかげさまで」
恵里奈が周りを見渡す。
「これどおする?」
「ん?」
放置した...
のちにこの事件は人喰いコーラ事件と呼ばれるようになった。
はじめまして、初めてなろう書いたので誤字とか日本語おかしいのとかは優しく教えてくれるとありがたいです。授業書いてるので色々と大変です。一応異世界ものです。
コーラ事件後...
「そんなに平凡を目指さなくていいんじゃないの?自由に生きた方が楽しいと思うよ」
午後6時この時期になるとあたりは真っ暗になる。
そして数個の電灯が地面に光を照らしつけている中を絵里奈と二人で歩いていた。
「いや平凡が一番幸せだと思う」
絵里奈は顔をかしげる。
「そもそも、平凡の定義ってないから、平凡になるって無理じゃないのかな?」
絵里奈の言っている事にも一理ある。
「だけど、金持ちすぎとか頭よすぎとか、偏らないようには出来るじゃん」
「陽翔は平凡になることに偏りすぎ、みんなの前で自分の意見を言ってるのとか見たことないし、大体多数派じゃん、テストで平均ピッタリにするのとか意味不明だから」
「まあ、それがいちば楽だし」
「まあ、陽翔の家にもいろいろあったのは知っているから、これ以上何も言わないけど、私は陽翔の本当の気持ち伝えてくれたら嬉しいかな」
僕は絵梨奈を家まで送って、自分の家に帰った。
(陽翔って平凡を目指してるけど、私から見たらどこも平凡じゃないんだよなー)