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1773年ボストン茶会事件

 遥か昔、世界中に文明が発達すると各文明はそれぞれに命の源である水分に文明の叡智を注ぐようになる。


 中でも発達し普及した二大派閥によって世界は永く争うことになった。紅茶とコーヒー。二大派閥に分断された世界は数百年間争いを繰り返しながらも拮抗した勢力図は停滞を続けていた。


 しかし、この均衡は紅茶勢力の仕掛けた計略によって一瞬にして崩れ去ることとなる。


1773年 ボストン茶会事件


 当時、紅茶勢力【|紅茶党≪ティーパーティー≫】によって支配されていた地域の住人が反乱を起こし紅茶党の象徴である紅茶の茶箱を大量に海に投げ込んだ。


 経済的に支配地を虐げる紅茶党への反抗を示す行動だったが、それらはすべて紅茶党の手のひらの上。紅茶党がそうなるように仕向けた計略の結果だった。


 海に投げ込まれた茶箱に入っていたのは強い侵食力を持つ危険な茶葉だった。

 あまりにも強い浸食力を持つ茶葉は紅茶党にとっても諸刃の刃であり、使えば二大勢力たる紅茶党といえども国際社会からの糾弾は免れず対立する珈琲派閥組織【coffee blend】に有利に運ばれてしまうのは明白だった。


 そこで紅茶党は地域住民の反乱により起こった暴挙の結果として茶葉が不運にも海に投げ出され浸食されてしまう、というシナリオを作った。


 こうして紅茶党の手のひらの上で踊らされた地域住民は計画された通りに扇動され海を紅茶で染め、強い浸食力により事件地域の大地は茶葉しか育たぬ大地となり汚染された大地から染み出す茶葉は瞬く間に海を染め上げ、全世界の海が紅茶になった。



 紅茶党の策謀にcoffee blendが気付く頃にはすでに遅く世界は紅茶に支配され、紅茶党を糾弾しようにも事実としてあるのは紅茶党が交易品の新種の茶葉を地域住民によって廃棄されたという結果だけ。


 その結果起こった汚染は反乱の起こした自滅として紅茶党は被害者であるという世論誘導により国際社会は紅茶党に強く出ることはできず、世界の海が紅茶に染められたことの責任を追求する前に紅茶党は紅茶を新エネルギーとして転用する技術を普及させ社会は紅茶によって染め上げられた。


 当然紅茶をエネルギーとした技術開発はこの計画を契機として世界の実権を掌握するために紅茶党が長い間研究を続けていたものだ。


こうして紅茶と敵対する二大派閥であった珈琲は駆逐され太古より続く闘争は終わりを迎え、珈琲はこの世界から抹消された。


これで全てが終わる。



そうはならなかった。


 珈琲勢力【coffee blend】は紅茶に染る水面下に身を隠しかろうじて生き延びていた。


いつか来たる復讐の時だけを信じ、復讐を現実にする為だけの恐るべき珈琲研究を続けた。


 紅い未来を実現する覇道を歩む紅茶の影に、深い闇の中で熟成焙煎される暗黒の珈琲がドリップされ濃縮されたより深い闇が息を潜めていた。


 時は流れ現代。

 紅茶党が世界を支配し紅茶社会が作られて数百年が経った。


 紅茶は世間に浸透し紅茶エネルギーを主体とした社会は最早紅茶なくして成立し得ない。


 紅茶に依存した社会は紅茶なくしては1週間ともたないだろう。紅茶は生活必需品であり資本だ。紅茶によって社会は作られている。


 しかし、そんな紅茶色の社会に黒々とした闇の波紋を響かせようとする者たちがいる。


この社会から抹消された闇。


【coffee blend】の残党にして、常に犯罪の香りを立たせる深煎りの犯罪集団はコーヒーによる社会との調和を意味したかつての名を変えて【ブラックロースト】と名乗っている。


 その名の通り、この社会に黒い灸を据えるつもりだ。


 紅茶社会の転覆と珈琲の再興、支配を目論む奴らは珈琲豆の改造を重ね莫大なエネルギーを秘めたドーピング珈琲豆を生み出した。


 表向きには紅茶に換わる次世代のエネルギー資源としながらもその本質は一時的な身体能力の飛躍と特殊能力の発現を対価に代償として恐るべき後遺症を負う麻薬の一種。


 珈琲豆によってもたらされる後遺症。

それは紅茶を拒絶する身体になってしまうこと。


 珈琲豆の力に頼った者には紅茶は命を奪う猛毒のように作用する。

 紅茶を中心に回る今の世界においては命を投げ捨てるに等しい行為。あらゆるものに紅茶が使われている現代で唯一紅茶を避けられるとすれば継続的に珈琲豆を摂取することか。


 こうして一度でも珈琲豆に手を出したものは珈琲豆なしでは生きられないようになり社会との繋がりも絶たれ珈琲豆に依存せざるを得なくなる。


 例えそれが非合法で危険なものでその先には破滅しか待ち受けていないとしても珈琲によってもたらされる負のサイクルは犯罪者の温床となり拠り所となり、どれだけ紅茶の取り締まりが厳しくなろうとも消えることはない。

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