一.出会いの響
この度は【人魚姫(仮)】をお手に取っていただきまして、誠にありがとうございます!
こちらの作品は、私が以前(高校時代)に密かに執筆していたものを、再構築・再編集を行い、新たに連載する作品となります。
学生時代の悲しかったできごと、トラウマ、楽しかった思い出……たくさんの想いを皆様と共有できることを願っております。
それでは 第1話 【出会いの響】
ぜひ、お楽しみください!!
僕の日常は、朝の自主練から始まる。
中学の頃に始めたフルート。吹奏楽部でやりたいと申し出た時、男子でフルートを吹いている部員は稀だと言われた。それでもやりたい。そう思えるほどに、僕はフルートの綺麗な高音が大好きだ。
フルートを吹く為だけに入ったこの吹奏楽部。部員はみんな仲が良く、厳しいこともあれど、とても楽しい活動をさせてもらっている。今年からは後輩も入り、ますます活気づいてきた。だから思う。もっと練習しなくては。
僕自身、元々そんなに器用な方ではない。フルートは息を吹き込む角度や強さによって、音色が大きく変わってしまう。不器用な僕は、フルート歴5年目の今でも、その調整が難しい。その高音の存在感故に、フルートの音色が狂うだけでも、全体の演奏に影響を及ぼしてしまう。もっと上手くならないと。
そういうわけで、僕は毎朝、ここ漣高校の音楽室を借りて、自主練をしている。昨日まで春休みだったので、休みが明けるまでは家で練習していた。久しぶりの音楽室。わくわくしながら扉を開き、中に入る。休み明けの少し埃っぽい教室は、朝日に照らされ、僕の目にはとても煌めいて見えた。
静かに始まる僕だけの演奏会。フルートの心地よい高音が教室内に響く。うん、今日は調子がいい。10月の演奏会に向けて練習している新曲は、うちの部長が作曲したものだ。各々の楽器が伸びやかに奏でる旋律。僕はとても感動し、一瞬でこの曲の虜になった。
自分の演奏に酔いしれながら、そっと窓の外を見る。今日もいい天気だ。新たな学年に似合う、素晴らしい一日になりそうな、そんな予感がした。
演奏を終え、ふと気になり扉の方に目をやる。…何故だろう?ちゃんと閉めていたはずの扉が、うっすら開いている。疑問に思い近づくと、そこには髪の長い、綺麗な女子……白波 茜がいた。
「うわぁあああ!?」
彼女は、急に出てきた僕の顔に驚いたのか、大声をあげて腰を抜かした。かく言う僕も、驚きのあまりその場を動けず、ただその様子を見ていた。胸の辺りを手で押え、大きな目を更に見開いて僕の顔を見る彼女。その様子がなんだかおかしくなってしまって、僕は思わず笑ってしまった。
しばらく笑ってから、再度彼女の顔を見る。彼女はその綺麗な顔を真っ赤に染めて、立ち上がり
「盗み聞きしてごめんなさい!」
と僕に頭を下げた。
「いやいや、聴かれていたのにはびっくりしましたけど、嫌な思いはしてないですから。」
「そう……なんですか?」
「はい。むしろ聴いて貰えてたんだーって、ちょっと嬉しかったです。だから…その……気にしないでください。」
彼女の恥ずかしそうな、少し申し訳なさそうな顔を見て、ついそんなことを口走る。普段の僕はそんなに優しくないんだけど…。
僕はむず痒くなって目を逸らした。すると、彼女の方から視界に入ってくる。
「あの、もしよければ…また明日も聴きに来ていいですか?」
「えっ」
「あっ、いやっ、よければでいいんです!なんか…その……フルートの音色がとても綺麗だったから…また聞きたいなって。」
嬉しいことを言ってくれる彼女に、思わず首を縦に振る。
こうして、僕の日課の朝練は、いつのまにか2人の日課になった。
いかがでしたでしょうか?
2人の出会い。これが今後どのような物語を紡いでいくのか。
次回のお話をお楽しみに!!




