村に行けるらしい
ガルドに先導され、森を抜けて進む。道中、ヒビノは初めて見る異世界の風景に驚きつつも、警戒を怠らなかった。ときどき小さなモンスターが遠くを横切るのを目撃するが、ガルドが弓を構えるだけでそれらは近づいてこなかった。
「ガルドさん、なんでそんなに弓がうまいんですか?」
「弓は俺の生活道具だ。狩りをしながら腕を磨いた。それだけのことだ」
「なるほど……」
話し方こそ素っ気ないが、的確に周囲を警戒しつつ進むその姿は頼りがいがあった。ヒビノは心の中で感謝しつつ、足元に注意を払いながら後をついていく。
やがて木々が途切れ、開けた景色が広がった。その先には、数十戸ほどの小さな村があった。木造の家々が並び、家畜が草を食んでいる。
「ここが俺の村だ」
「おお……! なんだか安心します」
ヒビノは思わず笑顔になった。村の入り口に到着すると、ガルドは村人たちに簡単な説明をした。ヒビノが森で迷っていたこと、そしてこれから一時的に村に滞在させるつもりであることを告げると、村人たちは特に反対する様子もなく頷いてくれた。
「ありがとう、本当に助かります……!」
ガルドに礼を言うヒビノ。ガルドは軽く肩をすくめただけだった。
「とりあえず、村長に話を通してからだな。それが済めば寝床と食事を用意してやる」
「助かります! 何か手伝えることがあれば言ってください!」
ヒビノは緊張しながらも、こうして異世界で初めての「社会」と接点を持つことができたのだった――。