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魔法が存在してるらしい

長老から「アルバの錬金術師」の伝説を聞いたヒビノは、それがどうにも気になって仕方がなかった。翌朝、彼は長老の家を訪れ、錬金術師という存在についてさらに詳しく話を聞くことにした。


「今の錬金術師って、昔の伝説とは違うんですか?」


ヒビノがそう問いかけると、長老はゆっくりと頷いた。


「うむ。昔の伝説の錬金術師は、魔法と科学を融合させた稀代の天才だったと言われているが、現代の錬金術師はもっと実用的な仕事が多い。人々の生活を支える薬を作ったり、魔法薬を調合したりするのが主な仕事じゃな」


「薬剤師……みたいなものなんですね」


「よくわからんがそうだな。今の錬金術師は魔法を使った応用研究や、実務的な調合の腕を磨く必要がある。だが、その技術を活かして冒険者や村人を助ける、大事な職業だ」


「資格が必要って言ってましたけど、それはどこで取れるんですか?」


「リカオン領には“リリアス”という町がある。そこにはギルド、冒険者組合の本部があってのう。そこに所属して資格を得れば、正式に錬金術師として活動できるそうじゃ」


「ギルド……?」


ヒビノはその言葉に引っかかりを覚えた。長老はさらに続けた。


「ギルドというのは、冒険者や職人をまとめる組織じゃ。独立した立場を持ち、国家から一定の自治を認められている。“錬金術師”もその一つでな、資格を持たぬ者がその名を名乗ることは許されんのだよ」


「なるほど、国家資格みたいなものか……」


ギルドがこの世界でどれほど影響力を持つのか、ヒビノにはまだ実感が湧かない。しかし、「錬金術師」という職業に興味が湧いている自分に気づいた。


「ヒビノ、詳しいことはドネリに聞いてみるといい」


「ドネリさん?」


「村にいる中年の男だ。昔、冒険者をしていたそうでな。錬金術師やギルドについても多少詳しいはずじゃよ」


長老の助言を受け、ヒビノはさっそくドネリを訪ねることにした。


ドネリの家は村の中央に近い、木材を使った頑丈そうな家だった。ヒビノが訪ねると、ひげを生やした快活そうな中年男性が笑顔で迎えてくれた。


「おう、あんたが例の“煙で虫を追い払ったすげえヤツ”か! いやあ、村のみんながあんたの話で盛り上がってるぞ!」


「いやいや、そんな大したことじゃないですよ。ただの化学の知識を使っただけで……」


ドネリはヒビノを手招きして家の中へ通すと、簡素な木の椅子を勧めた。


「で、今日はどうしたんだ?」


「実は、“錬金術師”という職業について詳しく聞きたいんです」


「ほう、錬金術師か。懐かしいな……俺も昔、冒険者をやってた頃、錬金術師の資格を取ろうか迷ったことがあったんだ」


ヒビノは身を乗り出して質問を続けた。


「どうすれば資格を取れるんですか?」


「まず、リリアスのギルドに行って登録する必要がある。それから錬金術の基礎試験を受けて合格すれば、正式に見習い錬金術師として活動できるようになる」


「見習い錬金術師……」


「だがな、その先が大変だ。錬金術師として認められるには、ただ調合ができるだけじゃダメだ。中級魔法を習得していることが条件なんだよ」


「中級魔法……」


ヒビノはその言葉に引っかかった。


「ドネリさん、その“魔法”って、どうやって使うものなんですか?」


「お前さん、魔法を知らないのか?」


「……まあ、ちょっと事情があって」


ドネリは少し考え込むように腕を組み、それから説明を始めた。


「魔法ってのは、身体の中にある魔力を使って発動する技術だ。魔法には属性があって、火、水、風、土なんてのが代表的だな。中級魔法を習得するには、まず初級魔法で自分の属性を見極めることが必要だ」


「自分の属性……?」


「そうだ。魔力には人それぞれ得意な流れがあるんだ。それを自覚して訓練することで、魔法を使えるようになる。俺は冒険者だったけど、火の初級魔法くらいしか使えなかったな」


「なるほど……」


ヒビノは異世界のシステムに興味を持ちながらも、まだ自分に魔法が使えるのかどうかすら分からないことに気づいた。


その晩、村では害虫駆除の成果を祝う小さな祭りが行われた。村人たちは手作りの料理や酒を持ち寄り、村の広場で焚き火を囲みながら楽しそうに語り合っている。


ヒビノも招かれ、久しぶりにゆったりした時間を楽しんでいた。


「いやあ、ヒビノさん、本当に助かったよ! 害虫がいなくなったおかげで収穫がかなり楽になった!」


村人たちの感謝の言葉に、ヒビノは照れくさそうに笑った。


その時、広場の端で何かが光ったのが目に入った。


「……ん?」


目を向けると、若い少女が手のひらから小さな火を出し、鍋を温めているのが見えた。


「……あれは?」


ヒビノが近づいてみると、ドネリが嬉しそうに笑いながら少女を指さした。


「おう、こいつは俺の娘、ドーラだ。見ての通り火の魔法を使えるんだよ。まだ初級だけどな」


ドーラはヒビノに向かってにっこり笑うと、再び手から炎を出して鍋を温め始めた。


「これが……魔法……」


ヒビノは目を見開いて、その光景に見入った。異世界の「魔法」という概念を初めて目の当たりにし、その現実感に驚きながらも、胸の中に新たな興味が湧いてくるのを感じた。


「俺にも……これが使えるんだろうか……」

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