第二話:廻る朝
山岸龍華
僕、藤原銀次の幼馴染であり、同じ高校に通う文字通り華の15歳。あ、僕は16歳だよ。四月一日生まれは伊達じゃないのさ。
そんな「龍」と「華」というある意味対立する文字を冠している彼女はまさに、名は体を表す、を地で行っている。彼女は龍のように過激な性格と身体能力を有しているが、顔やスタイルはアイドル顔負けのまさに「華」、神様いい仕事したな、といったぐらいの超ハイスペックなのだ。
ああ、その勝気な瞳を中心にした整った顔、肩口まで伸びた太陽の光を反射して輝いている髪の毛。全体的に無駄のない肉つきをしているのにある一点だけはしっかり自己主張している体系。その全てが美しい……
惜しむらくはスカートを履いていなく服装が男もの、ということと、性格に若干の難がある、ということである。スカートは、まぁ仕方あるまい。彼女は昔からスカートが嫌いなのだ。
本人曰く「ヒラヒラして動きにくい」ということで、彼女は専らジーパンだ。それに女の子っぽい服も苦手らしいのだが、それでも彼女に似合っているから別に無問題。しかし性格というか性質。これはちと不味い。
先ほど性格を表す際に、龍のように、と比喩したが、ごめん、あれ嘘。龍そのものだ。近頃じゃそろそろ龍を超えるんじゃないかという噂が巷で流れている。ソースは僕。
とある日、彼女を不幸にもナンパしてしまった不良がいたが、彼女は歯牙にも欠けず、ついでにワンパンチでその不良を沈めた。ここまではいい。実はこういうことはそれまでも結構あったし、その不良もせいぜい歯が一本欠けてしまったぐらいで済んだ。
……お?彼女は歯牙にも欠けなかったが不良は歯が欠けてしまった?これは上手いっ。
ヤマダくーん、座布団畳ごと持ってきてー。
閑話休題、んで、ここからが大変だったのだが、実はその不良は名立たる不良集団「苦羅威死巣」の総長だったのだ!そう、だった、のだ……
その総長はよせばいいのに「苦羅威死巣」の総員三百人(多すぎだ)をかき集めたった一人の当時女子中学生に報復を仕掛けたのであった。三百人という冗談みたいな数だったが、それをものの五分で片づけた龍華はもう冗談じゃ済まされない。人間じゃないね。あ、龍か。龍華だけにね!プフーッ。
とまぁ「苦羅威死巣」は一人の女の子に全滅。そして龍華は「殲滅龍」というおおよそ女の子に付けられるようなあだ名とは思えないものを手に入れたのであった。
……ついでに彼女の圧倒的強さと美しさ(ここ重要)に惚れ込んでしまった、総長以下三百人の「苦羅威死巣」構成員(現時点で四百十二人)を手に入れたのであった。
ちなみに今の総長は当然、龍華である。総長になった理由は「なんか面白そうじゃん?パシリにも困んねぇし」とのこと。四百十二人のパシリは多すぎる、と思うのは僕だけではないであろう。
あなたはナンパしてきた男をワンパンチで倒し、その後襲ってきた三百人を五分で殲滅。そしてそいつらを全員舎弟にする、そんな女の子と付き合えますか?
僕は付き合えるね!つーか付き合いたい!性格?んなもんどーだっていいんだよ!全部ひっくり包めてこそ藤原龍華さ!
さて、これで彼女と強さと美しさについて分かって貰えたと思う。では続いて僕と龍華のストロベリーな会話を楽しんでもらおう。っていうか早く僕も彼女と話したいしね!
ま、僕のパーフェクト片思いなんだけどさ!でもまだチャンスはある!届け!僕の思い!
キーンコーンカーンコーン……
ッチ、予鈴がなってしまったか!これは不味い。僕と彼女は違うクラスなのだ。このままでは彼女とのスーパーゴールデンタイムが終わってしまう。そう思い、僕は彼女に話しかけよ
「おはよう、朝のホームルームだ。席につけ」
うと……
「?どうした藤原、早く席に付け」
……
…………
………………
ふ、どうやら僕はあまりに彼女に熱中していた為に時間を飛ばしに飛ばしてしまったようだ。挙句、教室の中に入り、椅子の前に突っ立っているのに関わらず、全く記憶にございません状態ということは時間と一緒に意識も飛ばしてしまっていたらしい。
山岸龍華、君はやはり罪深い女だな……
ただ一つ言わせてくれ……
「僕のゴールデンタイムをかえせえええええ!」
「先生、藤原君が乱心です」
「では出席を取る。アルクレス―」
「yeah」
「どうしてこうなった!どうしてこうなったあああああああ!」
「上田―、遠藤―、藤原―ゴッドハンド、大屋―……」
「でぃめんしょんっ!?」
担任の拳によって強制的に席に着かされてしまった僕だが、こんなものではへこたれない。こんなもので僕の愛は負けない!そう、次こそは。次こそは!
「次こそはあああああああああ!」
「ゴッドハンドver2.0」
「どぅぶるちっ!?」
「……あんま銀二喋ってくんなかったな……上の空って感じで……はぁ」
「んー?リュウちゃんどったの?溜息ついて」
「な、ななななななんでもねぇよ!」