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34. 最後の日記


 今日はルシアンが朝から出かけている。

 だから部屋で一人で朝食をとってるんだけど、どうも味気ない。

 昼食や夕食はもともと一人でとってたから、別にどうってことはないはずなんだけど、すっかり彼と一緒に食べるのが習慣になっていたらしい。

 最初は怖かったし監視されているみたいで嫌だったんだけど、いつの間にかその時間を楽しく感じていた。


 ――私は可能な限りあなたを助け、守りたい。たとえそれが罪になるとしても。


 昨夜の彼の言葉と真摯な瞳をふと思い出して、心拍数が上がる。

 最近、ルシアンにドキドキすることが増えたような気がする。


 私……彼のことが好きなのかな。

 それとも、超美形な男性に優しくされて浮かれてるだけなのかな。

 イケメンにドキドキするのと恋心の境目がよくわからない。

 だって、誰かに恋した経験がないから。そりゃあ日常生活の中でかっこいいなーと思う人はいたし、二次元イケメンにときめくこともあったけど。

 ああもう、頭の中がぐちゃぐちゃ。

 やっぱり今日、彼と一緒に朝食をとらなくてよかったかも。



 そんなこんなで落ち着かない一日を過ごし、もうそろそろ寝ようかなという時間。

 引き出しから、青い光が漏れているのに気づいた。


 あれ……早い。


 今までは返事が来るまで最低でも五日はかかっていたのに。

 まあ、時間の流れが五倍であっても、私からの日記にすぐに気づいて返事を書けばこれくらいはあり得るんだけど。

 今回はやけに緊張するなあ。

 だって、彼女からの返事がどういうものか、想像がつかないから。


 前回、私はこう書いた。


『ご心配ありがとうございます。

 私は元気です。

 ところで、ちょっとだけ気になったのですが。

 私が日本から来た人間だということを、なぜ最初から知っていたのですか?』


 と。


 最初は、特に違和感を覚えなかった。

 オリヴィアが日本にいるという情報で、その違和感はかき消されていたんだと思う。

 でも、なぜ知っているのか。

 よく考えればおかしい。

 空っぽのオリヴィアの体に誰かが入ったことまでは、もしかしたらあらかじめ仕掛けておいた魔法か何かでわかるのかもしれないけど。それが日本人だなんて、どうやって知ったの?

 私とオリヴィアの魂が入れ替わったわけでもないし。

 いくら同じ日本にいるからといって、日本の誰かが異世界に行ったと感じ取るのは、いくらなんでも無理なのでは。

 それなら、考えられる可能性は一つしかない。


 私の魂が聖女オリヴィアの体に入ったのは、ルシアンの魂喚ばいのせいでもただの偶然でもない。

 オリヴィアが、なんらかの方法で私の魂を自分の体に送った――。



 おそるおそる、日記を開く。

 そこに書いてあったのは、たった四文字。

 私の頭がそれを理解すると同時に、全身がガタガタと震えだした。






『体を返せ』


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