表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/43

01. 私は誰、あなたも誰


 ――苦しい。

 息が苦しい。

 というか、息が、できない……っ――水の中!?


「がばばぼぼぼぼ!」


 叫び声を上げながら必死でもがくと、ガラスか何かが割れたような音が響き、体がどさりと硬い床に落ちた。

 床に手をつき咳き込みながら何度も深呼吸する。

 いったい何事。

 私、溺れてたの!?

 そう思って顔を上げて周囲を見回し……固まった。

 見知らぬ広い空間。白い円柱に白い大理石の床。私が座っているのは、一段高くなっている場所だった。

 私の周りには砕け散ったクリスタルのようなものと、水。


 ここ、どこ?


 再び視線を落として目に入ったのは、床についているゆるく波打つ淡い金色の髪。

 え、私、髪を染めた覚えなんてないよ? 普通に黒だったのに。しかもこんなに長くないし。

 手も……形も大きさも違う。

 服装は、床につきそうなほど長いスカートの白いワンピース。

 しかも不思議なことに、髪も服も濡れていない。


 どういうこと?

 鏡、どこかに鏡……。


 キョロキョロと周囲を見回していると、正面の両開きの扉が勢いよく開かれて、ビクッと体を震わせる。

 四人の男性がバタバタと駆け込んできた。

 三人は、なんというか、聖職者のような服装をしている。一人だけ騎士のような格好をしていた。

 聖職者に騎士って……コスプレ? 今日ハロウィンだっけ?


「聖女様……!」


「聖女様がお戻りになられた!」


 ……えっ。

 何言ってるの。なに、聖女様って。


 戸惑う私に、ひときわ地位が高そうな聖職者らしき男性が一歩近づく。

 サラサラな銀色の髪に、氷のようなアイスブルーの瞳。

 うっわ……すごい美形。日本人じゃないよね?

 彼は私の目の前まで来ると、片膝をついて視線を合わせた。

 イケメンに至近距離で見られるというあまりにも慣れないシチュエーションに、思わず目が泳ぐ。


「オリヴィア様?」


 問いかけるように彼が言う。

 私は首をかしげた。


「オリヴィアって……? 私は……」


「まだ記憶が混乱しておられるようですね」


 彼が私の言葉を遮るように言って、にこりと笑う。

 あ……怖い。この人、目が笑ってない。


「聖女様はお戻りになられたばかりでまだ混乱していらっしゃるようだ。私が部屋までお連れする」


「承知いたしました、大神官様」


 大神官と呼ばれた銀髪イケメンに手を引かれ、立たされる。

 手つきは優しいけど、有無を言わせぬ何かがある。

 逆らえないまま彼に手を引かれ、謎の部屋を出てやっぱり見覚えのない広く長い廊下を歩く。


 ここはどこなの。一体何が起きているの……!?


 奥まった場所にある扉の前で彼の足が止まり、彼が扉を開ける。

 高級ホテルのスイートルームのような広くて豪華な部屋だった。

 促されるままそこに入り、ひとまずソファに腰掛ける。

 混乱しすぎて頭が痛い。

 彼は額に手をやる私の横に立ち、私を見下ろした。

 そうしてにこりと笑う。目が笑っていない笑顔ってこんなに怖いものなんだ。


「私の質問に正直に答えてください。あなたは誰ですか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ