6・帰路にて
理事長に叱られた二人は、途中まで帰り道が同じだったため、一緒に帰ることになった。
道中、リアリアムは色々な質問した。学園のことや勉学についてなど諸々と。
質問攻めされたキャロットは疲れ切った顔をしていた。それでも続けるリアリアム。その時間、キャロットにとってまさに地獄だっただろう。
大通りを歩いていると正面から、何やら凱旋しながら向かってくる大集団が見えた。先頭の兵士が掲げてる旗には【第参遊撃部隊】と書かれていた。
横を通り過ぎようとした時、リアリアムからの質問攻めが突如止まった。そのことに気づいたキャロットはリアリアムの方を見てみれば、リアリアムと何やら凱旋中の一人の男と対峙していた。
その男は片手を上げて、全体の歩みを止めた。
「ん? お前、どこかで見たことあるな。……あぁ、よく見たらお前、リアムじゃねーか! 元気してたか、ブラザー」
「グレン兄貴もお元気そうで何よりです」
「……グレン……さん?」
グレン・ロードル。ロードル家の次男にして、エンディア国軍、軍事侵攻部遊撃課所属の第三遊撃部隊隊長だ。まだ24歳と若者だが、隊長にまで成り上がるほどの実力者だ。
リアムとは任務で何度も共に活動し、交流を深めあった仲だだった。血は繋がってないものの、お互いを義兄弟として接していた。
因みに、彼の実家であるロードル家は軍人の家系で、代々国に仕えていた。
グレンら遊撃部隊は、つい先程まで西側にあるビリジアン帝国との戦いに大勝利を上げて、帰還してきた。
「おいおい、なんだその格好は? 学生服なんか着てなぁ、新鮮ちゃ新鮮だがな」
「も、もしかして、グレン・ロードルさんですか!?」
「ん? おぉ、誰かと思えば、キャロット嬢じゃねーか。元気してたか。剣技の腕はあげたか?」
お互い名家のため、面識があった。さらに、昔はよく一緒に訓練を受けていた。
「は、はい。お陰様で。それにしても、リアリアム君とはお知り合いだったのですか?」
「おぉ、そりゃもちろんだとも。なんたって、もう家族同然だもんな。な、ブラザー」
「そ、そうだったのですね」
「それだけじゃないぜ。ブラザーは俺の命の恩人だからな」
「え、それってどういう……」
「それは……いてっ! なんすんだよ」
グレンの頭の上から手刀が下ろされ、痛みにグレンは頭を抱えたグレンとキャロットの会話を遮ったのは、一人の女性だった。
「いつまで立ち話してんのよ。一般の人が迷惑してるでしょ。周りを見なさい、この馬鹿グレン」
「おいおいおい。馬鹿って失礼だな。俺は天才だぞ」
「ゴリ押しの天災ね」
「おい、なんか含みのある言い方だな。何か間違えてないか」
「さぁ。それより、もう行くわよ」
女性はグレンの耳を摘み、無理やり引っ張って連れ戻し、そのまま台車に乗せられ進みだした。
「グレン兄貴も忙しいのですね。頑張ってくださいね」
「いや、そうは見えないわよ。それに、その言葉は去り際に言うもんでしょ。タイミングが間違っているわよ」
「? そうですか、言葉って難しいですね」
「……そうね、難しいわね」
キャロットは心の中で『この子、なんかズレているのよね』っと思ったが、それを彼に言っても無駄だと悟った。
途中で別れた二人はそのまま帰路についたのだった。