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5・常識知らずには監視役が必要?




 キャロットはしばらくの間、研究所の方を見続けていた。それを横で見ていたリアリアムは想定外のことを言い出した。


「そんなに研究所が気になるのでしたら、中に入りますか?」

「……え?」


 リアリアムの言葉に固まってしまったキャロット。だが、すぐに復帰したキャロットは笑いながら返した。


「あはは、流石にリアリアム君でも無理だよ。あそこは選ばれた人にしか入れないのよ。ほら、あそこの門を開けるには特別なカードキーが必要なんだよ」

「その特別なカードキーって、これのことですよね?」


 いつの間にか、リアリアムの手には一枚のカードを持っていた。そこには【王立総合研究所・特別許可証・】と書かれていた。そのカードを見たキャロットはすぐに許可証だと分かり、声を上げて驚いた。


「えぇぇぇ!! なんであなたが許可証を持っているのよ!」

「何故かと言われましても……利用したことがあるとしか……」

「だとしても、あなたが持っているのがおかしいよの! 親名義だとしたら、あなたの親は何者なのよ……」

「親は……いない。ずっと一人なんです」


 キャロットは露骨に声色が変わったリアムに『ごめんなさい、詮索しすぎたわ』と謝罪した。当の本人は『大丈夫です』と言い、いつもの声色に戻った。


「それはそうと、入りますか?」

「え、えぇ。是非とも」


 リアリアムは笑いながら小さく頷き、研究所の門前まで向かった。

 認証装置にカードキーをかざすと、門が横にスライドした。音からして、なかり重厚そうだ。

 リアリアムとキャロットは門の中に入ると、すぐに閉まった。セキュリティは万全のようだ。

 研究所エリアの施設に入ろうとすると、先に扉が開いた。扉の先には研究所の所長であるグレイブンだった。容姿は、白い髪をした男性で身長も高めなイケメン。噂では研究所に入所したその日に、10人もの女性に同時告白されたとか。事実かどうか、ご想像に……。

 それはさておき、所長のグレイブンはリアリアムの顔を見た途端、慌てて頭を下げた。


「も、申し訳ありません! 例の武器の整備に時間がかかっておりまして、あと2週間ほど頂きたく存じます!」


 キャロットは何のことか分からないため首を傾げた。詳しく聞こうとしたキャロットに被せるようにリアリアムが先に答えた。


「いえ、大丈夫です。しばらくの間は任務はないので」

「恐れ入ります」

「……任務?」


 二人の会話についていけないキャロットはさらに困惑した。

 すると、研究所の門が再び開いた。慌てて来たのは……理事長だった。


「はぁはぁはぁ……ちょ、リアリアム君。ここで何してるのよ」

「り、理事長先生!!」


 一番驚いたのはキャロットだ。それもそうだ。理事長先生は基本的に表に出てこない。この学園の入学式でさえ出てこなかった。噂では、影からこっそりと見ているとか見てないとか。

 学園生の中で、理事長の顔ならまだしも名前すら知らない人は少なくない。因みにキャロットとは面識があった。


「あぁ、キャロットさん。お久しぶりね」

「は、はい! お久しぶりです」


 妙に緊張しているキャロットにリアリアムは耳元で聞いてみた。


「えっと……旧知の仲なのよ。そして私の憧れの人なのよ」

「なるほど。初めて知りました、アリシアさんに友達がいたなんて」

「ちょっとリアム君! 友達くらいいるわよ!」


 さらっと本名を言い合う二人。幸いにもそこに気づく者はいなかった。

 話が脱線したことにいち早く気づいたアリシアは、一回咳払いをして話し始めた。


「そんなことよりも、ここは生徒立入禁止なのよ。今回は初回だから見逃すけど、次はないからね。分かったかしら、キャロットさん、リアリアム君?」

「はい、すみませんでした」

「了解しました、理事長先生」


 リアリアムだけ軍人の礼節をとっていたが、何も突っ込まないアリシア。言っても無駄だと悟ったのだろう。

 リアリアムとキャロットは帰り道が途中まで一緒だったため、二人で一緒に帰った。


・ ・ ・


 リアリアムたちが研究所に入った直後、理事長室にて……


 理事長であるシリアは、いつもように書類に目を通していた。国に申請する種類などがあるため、一個一個丁寧に見ていた。すると、ポケットに入っていた通信機が鳴りだした。

 通信先は、学園内に潜入させている軍部の諜報員からだった。


「もしもし、どうしたかしら。なにか問題でも?」

『突然申し訳ありません。学園に通られているリアム副部長なんですが……』

「……何があったの?」


 シリアは何となく嫌な予感がしていた。常識知らずのリアムが問題を起こしている気がした。

 不運にも、その予感が的中してしまった。


『そのリアム副部長が、一人の生徒と共に研究所に入りました』

「な、なんですってぇぇぇ!!」


 シリアは思わず勢いよく立ち上がった。想定外の出来事に驚いたシリアは人目を気にすることなく、急いで研究所に向かった。

 その時、彼女は思った。リアム(常識知らず)には監視役が必要だ、と。

 理事長室に戻ったシリアは、すぐさま総督に連絡した。




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