1・次の任務は学業?
時は恒星歴1202年4月中旬。
エンディアの中心地にある軍事司令部の最上階。そこには軍事の総合責任者である総督の執務室がある。その扉の前に、まだ幼い青年が立っていた。彼の名はリアム。軍部最年少の12歳にして、狙撃部隊の筆頭スナイパーだ。素晴らしい功績を讃えられ、王金国家勲章を授かった。髪色は黒で身長は130cmと小柄だ。
リアムは扉を二度たたき『失礼します』と言い、扉を開けた。
目の前には総督であるクロノス・エマールが座っていた。見た目は髪が白くスリムな体型をしている。歳は40後半だ。それでも女性陣からは大人気だ。
リアムは総督の目の前まで歩き、礼節を取った。
「狙撃部副部長リアム。召集につき、参りました」
「うむ、よく来た。まぁソファにでもかけたまえ」
リアムは近くにあったソファに座り、その対面に総督が座った。
「今日君を呼んだのは他でもない、君のことだよ」
「私でしょうか。私に何か?」
心当たりのないリアムは聞き返した。
「まず、言わせてもらう。君は……常識がなさすぎる!!」
「はぁ……?」
「ほら見ろ、自覚してないではないか」
「?」
狙撃は完璧で、その他諸々の運動はできる彼は、唯一の欠点があった。それは、常識の無さだ。
リアムは6歳の頃から軍部に所属していた。それ故か、一般常識というものが全く無かった。計算や読み書きはできるものの、それ以外に関してはほぼ知識がなかった。あるのは、軍人としての才能だけだった。
そのことを総督から長々と話された。全てを話し終わった後、総督は1つの決断をした。
「よって、これよりリアム筆頭士官には中等部への通学し、学業を修めるを命ずる。それに拒否権はない」
益々理解できなくなったリアムだったが、鋭い質問を投げかけた。
「では、軍役の方は休職ということでしょうか?」
「うっ……」
一瞬言葉を詰まらせたが、すぐさま返答する。
「い、いや。もはや君は我々きっての精鋭だ。君なしでは達成できん問題が山ほど出てしまう。てな訳で、通学しながら、招集された時のみ軍役を果たしてもらう。これでどうだ?」
妙に鋭いリアムはさらに総督に詰め寄る。
「それでは学業?とやらの方が疎かになってしまいますが、いかがなされるおつもりでしょうか?」
「…………」
「総督?」
ついに頭を抱えてしまった総督。ヤケクソになった総督は最終決定をした。
「それなら、中等部に通いながら指名された時のみ軍役を果たせ。学業の方は俺の方で便宜を図っておく。卒業できればそれで良い。これでどうだ! もう文句はないだろう」
「それでしたら、問題ありません。喜んで引き受けましょう」
「ふぅ。では、君に通ってもらう学園がここだ」
そう言い、地図を取り出した。そこにはエンディアの首都の地図がかかれており、総督は一つの点を指さした。
「ここが、君が通う学園だ。名前は王立総合文武学園。この辺りで一番の教育機関だ」
王立総合文武学園。軍部に所属したい者や、文官になりたい者たちが集まる学園だ。ありとあらゆる生徒の中から、特に優秀な者のみが通える超一流校だ。
「なるほど。かしこまりました。場所は把握できました。明日からですね、了解いたしました。それでは準備の方がありますので、これにて失礼いたします」
リアムは一礼し、部屋を出て行った。
総督は部屋の中で大きくため息をつき、独り言は呟いた。
「あいつ大丈夫かな。何も問題なければいいが……」
総督は冷え切った紅茶を飲みながら黄昏れた。