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依存しないで、大人になりなさい

睨まれながら食べる食事が終わる。その日から、食事は、皆と食べるようになった。


気に入っていた部屋も明け渡す事になった。次の人が使うのだろう。看護師は、布団を運んでベッドの部屋に移動した。そこは、白い部屋で窓ガラスがあった。トイレは開けてするタイプだった。僕はがっかりした。


部屋の前は患者の移動する場所でもあり、遊び場でもあった。


僕は部屋に鍵をかけられ時計のない部屋で過ごす事になった。そこは、あの冷たい薄暗い部屋とは違って、明るく居心地の悪い所だった。


何時も、人の足音が聞こえ人の声がした。怒鳴り会う声も時々聞こえてくる。

看護師と怒鳴り散らしている患者は、あのヤクザみたいな険しい顔した男性だと思った。速く退院が出来ないか医師に聞けと怒鳴っていた。


僕は落ち着かないけれど、ベッドで横になっていた。その日から僕は隣を気にしながら寝るようになった。トイレさえも、音をたてないように気を付けた。

一晩中眠れなかった。もちろん、昼夜逆転の生活が睡眠を長くしたり短くして、その日、どのくらい睡眠が取れなくなったのかは分からないが、一番壁の薄い部屋で寝ている僕の左側の部屋のイビキが酷くて眠れなかった。時々、大きな声で寝言を言う。


その男の寝言は、女の名前を叫び、夢の中でデートしているのではないかと想像してしまう内容だった。男の年齢も容姿や体格、性格など全く分からないが、寝言の内容で未婚の若い男性だと言うことは分かった。そしてイビキを書くことから、体格は肥満体だろうと予想した。

そして、うとうとして眠りについた。


眠りについてどのくらい経つたのか分からないが、目が覚めてしまった。外は暗いのか、窓ガラスを開けようとしたが、3センチしか開かない。でも、暗いことは分かった。窓ガラスに顔をつけて、除きこんだ。車が止まっているのが見える。外灯がついているのも微かに見える。外の空気を吸おうとした。その時、


「何しているんだ?」


と声がした。看護師さんが見回りに来たみたいだった。


「速く寝なさい」


と言うので、


「眠れないんです」


と言うと、睡眠薬と水の入ったコップを持ってきてくれたので飲んだ。


「今何時ですか?」


「22時20分だよ、速く寝なさい」


といって鍵をかけて出ていってしまった。まだ、22時20分かよ。と思いながら目を閉じて寝ようとした。隣の部屋では、トイレを開けている音がした。

眠れないから、布団のなかでゴロゴロしていると、妄想が始まった。


今頃、父親は好きな女を家に連れ込んでいるなと思った。祖父と祖母がいるのに。ただ今度の新しい女性は、母とは違い家事も炊事もきちんとできる人だと言っていた。どうせ、狙いは父の財産だと思うけれどね。


それより、僕はこの箱のなかから何時出られるのだろう。出たくないなと思った。ずーっと寝ていたい。


朝が来て看護師さんが、ドアの鍵を開けて入ってきた。僕は、目が覚めた。

食事の時間だ。また、他人と飯を食うのかと思うと、何時ものように頭痛がした。


ドアから出て行くと、昨日のように、食事を奪い合うように、取りに行く男性たちに混じって僕も食事をした。食事は、不味かった。1食350円だと聞いた。少なくとも健康を考えた食事ではなかった。男子専用だからなのか、ご飯の量が丼に山盛りなのだ。おかずは少ないのにバランスが取れていない。


食事が終わったら歯磨きをして、また、鍵のついた部屋で過ごす。部屋のなかには荷物もなにもない。

ただ、寝ていることしか出来ない。



全く同じ生活が1週間続いた。


その後、医師が問診を1回したが、医師の顔を見るのが耐えられなくて、下を向いていた。苛々している医師に、言うことが見つからなかった。家に帰りたいと思わないし、この病院で寝て暮らすのは耐えられなくはない。医師は、


「どんな夢を良く見る?」


と聞いてきた。僕は、


「学生の時の夢を見ます。小学生から中学生の夢を見ます。何時も困っている夢です。帰り道に家に帰れなくなった夢です」


と、言うと、


「大人になりなさい! 人に依存しないように自分で何でも出来るようになりなさい!」


と、言っていた。僕は、問診が終わると鍵のついた部屋に戻った。これから、食事と歯磨きと風呂以外は外には出られない。


それから、1週間部屋にこもっていた。医師は、何も言ってこなかった。

ただ、薬が合わないと思えることがあって、それを伝えたかった。指や足の先が震えたり、モゾモゾした。痺れも感じた。何時、医師に会えるのかは分からないが、問診の時だと思った。

それにしても2週間も寝ていて頭の方がボーッとしてしまって頭が働かなくなったと思った。


医師の問診は、その日のうちにあった。

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