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母からのプレゼント

僕は、迷惑なんてかけていない!


そう思いたかった。母親は僕にトラウマを残していった。

悪戯好きの母は、僕にケーキを買ってきてくれた。誕生日のショートケーキだった。僕は幼かったから喜んだ。ただ、母のすることは、ろくなことではなかったので、怪しんだ。ただ、母が何時もより、優しい声で、


「誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。さあ、ケーキを食べて、プレゼントも買ってあるのよ」


と言ってくれたから、嬉しくて初めて泣いた。ケーキを一口食べると、そこから緑色の液体が出てきた。何?これ?

僕は、そのケーキから、毛虫なのか芋虫なのか分からないものが、出てきた。

僕は直ぐに、その口のなかで異様な味がするものを吐いた。

母親は、隣で笑いながら、


「どう? 美味しい? ワザワザ探してきたのよ。なかなか居なかったんだけど、貴方の口にあうものが。ねえ、聞いて、それ、全部食べ終わったら、プレゼントあるのよ」


僕は水道の水でうがいをして涙を流していた。


「ねえ、プレゼントがあるんだからちゃんとケーキ食べてよ」

「要らないよ、プレゼントなんて。どうせ悪戯するんでしょう!」


「良いから、プレゼントよ箱を開けてみて」


と言いながら笑っている。

開けないでいる僕に、母親は真顔で、


「開けなさいよ、ほら、開けなさい!」


と言って睨んできた。僕は叩かれるのが恐くて、箱を開けた。中から白い芋虫が何匹もウヨウヨして動いている。僕は、その後、その箱を僕の体にぶちまけて、芋虫だらけになった。

パニックになった。芋虫は大半が僕の体に押し潰されて死んだ。


「どう、私のプレゼントは喜んでくれたみたいね。探したのよ、私は芋虫が大好きなの。潰して遊ぶのがとても好きなの。貴方にもこれで遊んで欲しかったのよ」


僕はその時から、毛虫や芋虫などのウヨウヨするものが大嫌いになった。それまでは、大丈夫だったのに、今では想像しただけでも、過呼吸になってしまう。

それからと言うもの、僕は花や草も大の苦手になった。連想してしまうのだ。


ただ、あの芋虫の潰れた時の記憶は、ない。芋虫が嫌いだと言うことと、母がしたことは記憶しているが、緑色に染まったと思われる服の事は一切記憶から消されてしまった。


その後、直ぐに母親は入院した。僕は、母が何時までも帰ってこなければ良いと思った。その記憶は確か小学校3年の誕生日の事だと思う。



母は、子供の頃に親が毒親で小学校の時から、誰にも愛されなかったらしく、中学生の頃は馬鹿で1人では何もできない依存症の子供だったと聞いている。発達障害であったことも後から分かった。ただ直ぐに、精神分裂病と病名が変わったと聞いたことがある。ただ母が自殺してから医師の口から聞いた。



僕は、今、昼夜逆転の生活をしている。眠れないのだ。何日も、何日も眠らない。医師から強い睡眠薬を貰っているが全く効かない。効かないどころか副作用が出て足がムズムズしたり、幻覚が見えて仕方がない。ある日の夜に僕はやっと眠れた。お化けの顔になっていた僕が、睡眠を取ることが出来た。でも、直ぐに目が覚めた。2時間の睡眠だった。それでも毎日2時間の睡眠なら取れるようになった。


集中力も僕には存在しない。何かしら、アニメを見ようとしたり、本を読んだりお風呂にはいることさえも、出来ない。食事を食べているだけで幻覚が見えてくる。僕は苛立ちから、何でも良い分厚い本を破り捨てようとした。でも、それは馬鹿馬鹿しいことだった。何も解決はしなかった。17歳の事だった。



僕は、今18歳になる。父親が入院と言ったことには文句はない。ただ、人が怖かった。自分が苦しいのを分かってくれる人がいない。だって、寝たきりの状態になってきていたから。今は、ずっと寝ていないといられない体になってしまった。倦怠感が強すぎてダルくて、頭痛がして、幻覚が見えて、寝ていることが、一番体が楽と言うか、目の前が霞んで見えた。


祖母は、僕を庇ってくれた。寝たきりになった僕に、食事を作ってくれた。今までもしてくれたけれど、祖母がいなかったら僕は生きてゆけなかったと思う。夏は酷かった。お風呂にも入られず、熱帯夜のなか汗で眠れなかった。毛穴が塞がると、余計に暑く感じた。ジリジリとした皮膚の感覚が耐えられなかった。



父は僕を速く入院させて、好きな女と一緒になりたかったらしく、時計の針が気になっていた僕に、一切の時計を隠してしまった。時間を気にしなくなった僕はトイレに起きるのも、困難になった。女の人は度々、遊びに来た。その甲高い笑い声が母親を思い出して、夢を見ようとした。


夢は楽しいものだ。そう思うと楽しく思えた。自分は、夢の中で願いを叶えることが出来た。僕のなりたかった自分の理想の自分になれた。でも、それは何回も同じ夢を見させた。


サラサラな髪に、身軽な体。健康そのものの何不自由がない生きている毎日を送っている自分。長い夢だった。



僕は母と全く一緒の人生を生きている。

発達障害から統合失調症と言われ、中学で苛められ、全く同じように自殺するのだろうか?


「薬を飲みなさい」と処方された薬を飲んで、酷くなったような気がする。もう、体は副作用に犯されている。でも、仕方がないことなのか。


父親は言った。お前は俺の子供ではないんだ。

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