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クロエ・リベラ暗殺計画  作者: 大木戸いずみ
53/58

53 父、暗殺報告

 私は朝一番に父親の書斎へと向かった。

 ドレスをまくり上げて、廊下を猛スピードで走る。ナターシャは私の活発な動きに驚きつつも付いてきてくれる。

 他の使用人たちは「またお嬢様がおかしくなった」みたいな目で私を見つめている。ナターシャも内心はそう思っているに違いない。

 あながち間違いではない。確かに私はおかしくなったと思う。

 だって昨日の夜に本当に暗殺されかけたんだよ? 平常心を保てって言う方が難しい。

「大変です!」

 お父様、と言う前に、私は大変だということを伝える。

 思い切り扉を開けたせいか、父はビクッと体を揺らし、手に持っていたティーカップからコーヒーが少しこぼれ落ちる。

 幸いなことに服にはこぼれなかった。コーヒーの染みは取れにくいからね。

「な、なんだ?」

 父は目を見開いたまま私の言葉を待っている。ナターシャは外に声が漏れないようにそっと部屋の扉を閉めた。

「私、昨日殺されかけました!」

 元気ある私の声に父はむせる。さっきのコーヒーが出てきそうだ。後ろからナターシャの「え!?」と驚いた声が聞こえる。

 二人ともナイスリアクション! 

「ど、ど、どいう、どいうことだ!?」

 焦る父を真っすぐ見つめながら、私は淡々と答えた。

「昨日の夜に、窓の外で何かピカって光ったんですよね。それで、警戒しつつもじっと見つめてたらそれが矢だったんです。そんな感じで暗殺されて……あ、燃やしちゃったんで、その矢は跡形もなく消えちゃったんですけどね」

「まてまてまて」

「はい、まちます」

「本当に死にかけたんだよな?」

「はい」と、即座に返す。

「なんでそんなに平然としてられるんだ?」 

 ごもっともな感想だ。

「怯えたり、泣いたりした方が良かったですか? 演技力身につけないといけないので、必要なら今からか弱い女の演技しますけど」

「……いや、大丈夫だ」

 チェッ、折角私の演技力を披露しようと思ったのに、父に拒否られてしまった。

「状況を把握するのに時間がかかっているのは俺だけか?」

 父はナターシャの方に視線を向けながらそう尋ねた。

「ご安心ください。私も全く理解出来てません」

「不審な人物はいたか?」

 父は私に視線を戻して、眉間に皺を寄せながら質問する。

 公爵令嬢が殺されかけるって結構深刻な問題よね。

「むしろいて欲しかったですよ。怪しい人は見つけられませんでした。矢も燃やしちゃったし」

「そうだった、矢が燃えたってどういうことだ?」

 まずい、つい魔法を使ったことを言ってしまった。でも、正当防衛だから許されるはず!

「魔法をちょっと使ってしまって、えへへ」

 適当に笑って誤魔化す。もっと可愛く「えへへ」って言えれば良かった。

 私もあざとさの修行がまだまだ足りないな。

「……とにかく、クロエが無事ならそれで良かった」

 父が深く安堵のため息をつく。

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