51 クロエ! ピンチ!
王宮から戻るなり私は駆け足で自分の部屋へと向かう。自分の部屋ほど落ち着く場所はない!
ベッドの上に勢いよく寝ころび、盛大にため息をつく。
「ど~~~しよ!」
何がなんだか分からかなくなってきた。この家のことも家族のことも私はろくに知らない。
いっそこのまま何も知らない方が幸せに生きていけるかもしれない。
少しひんやりとした枕が私を冷静にさせてくれる。いっそのこと、このまま枕に埋もれて違う世界に行きたい。
……そんなメルヘンチックなこと起こるわけないか。
今のこの状況をしかと受け止めて、殺されないように精一杯努めるしかない。
何かのはずみで死んでしまって、別の誰かに生まれ変わるなんて小説の中だけの世界なのだから……。
私はこの世界で必死に足掻いて生き抜いてやる!
「また作戦を立てないと!」
ベッドから起き上がり、机の前に座り必死に頭を回転させる。今日摂取した糖分ぐらいは全部消費してみせる。
まさか自分の暗殺計画がダイエットに役立つなんて!
「まずは自分の身を自分で守れるぐらいの力が必要。……後はノア達を騙せる演技力?」
とりあえず魔法にもっと焦点を当てて頑張るべきよね。自主練したいけれど、父に魔力のことで怒られたばっかりだし……。
自分の魔法を高める方法について悶々と考えていると、突然窓の外で何かが光った。
私は反射的に立ち上がり、警戒しながら窓の外を眺める。何かがこっちに物凄いスピードで飛んでくる。
人は本当に死を目の当たりにした時、何も動けないのかもしれない。恐怖で思わず固まってしまう。
不思議なことに、何故か時間がゆっくり流れているように感じる。こういう時って走馬灯が走るんじゃないの?
何にもないんだけど……。思い出すことなんて何もない。こんな時に私は本当に呑気なことを考えてしまう。
もうあの会議室に行かなくていいのか~。
私はそのままゆっくりと瞼を閉じて、瞑目する。こういう時こそ焦らないのが一番! 冷静に冷静に……。
……クロエ・リベラ、ここで死す?
……………………え、無理!! 嫌すぎる!! こちとら新鮮でぴちぴちな乙女なのよ!
心を落ち着かせることに失敗し、私は思わず怒りでまたもや無意識で魔力を放ってしまう。
父よ、すまない。
私は窓を開けて、遠くから飛んできた鋭いものを強く睨み燃やした。目の前でメラメラと火を出しながら壊れていく矢を見つめる。
間一髪! ……てか、こんな矢で私を殺せると思わないでよね!
私を殺すなら、巨大な斧ぐらい必要よ。私はそんなやわな女じゃない。なめるな、暗殺者!
矢が燃え尽きるまで私をじっとその場から離れなかった。
「一体誰の矢なんだろう」
目を凝らして、窓の外を眺める。
……なんて綺麗な星空。こういうロマンチックな空に女は弱いのよね。……じゃなくて、犯人を探さないと!




