41 制御不可能
この学園に来たばかりで舐められたくない。もしここで無様に負けたら、これから一生こき使われるかもしれないし……。
私はその場に立ち上がり、カイを睨む。犬猿な仲ってこういうことを言うのだろう。
「その椅子も机もお前には必要ないだろ」
カイはそう言って、私の椅子と机を一瞬で燃やす。私の新しい席が数秒もしないうちに灰に変わった。
マシュー先生の大きなため息が聞こえる。
詠唱なしに出来る魔法と出来ない魔法がある。昔、マシュー先生にそう教わった。私はまだ詠唱があるレベルには達成出来なかったけれど……。
きっと、カイは四年生だしそれぐらいはマスターしているはずだ。……でも、詠唱を使う魔法って相当ハイレベルだから、もしかしたらカイも使えないかもしれない。
「あんたの席も要らないよね」
怒りに任せて私も魔力を放出し、カイの椅子と飛ばされた机を燃やした。
いついかなる時も冷静に魔法を使う。幼い頃にそう習ったけれど、私には無理みたい。
「こんな狭い教室じゃなくて外で戦うか?」
「それはやめて下さい! 私が解雇されます!」
カイの言葉にマシュー先生が声を上げる。カイは軽く舌打ちをしたが、マシュー先生の言葉に従った。
カイは私へと目を向け、じっと見つめる。目を逸らしたくても逸らせない。カイの灰色の瞳に吸い付けられる。
……何? そんなに見つめて愛の告白でもされるの?
そんな熱い瞳を向けられたら、なんだか体が熱くなってきたわ。…………体が熱い? アツイ!!
気付くと、私のドレスが盛大に燃えていた。火には強いけれど、流石にこれは危ない。
マシュー先生も止めろ! ここには私の味方がいないと思った方が良いのかもしれない。
私は自分の魔力で燃え上がっている炎を沈下させる。このドレスの命日は今日ね。
「謝ったら消してやろうと思ったが、自分でやったか」
カイは私が自分でドレスの炎を消したことに少し興味を示した。
「レディへの扱いが全くなっていないわね」
私は俯きながら全魔力を放出しようと集中する。教室中が段々熱くなり、この部屋を守っていた魔法壁がパリンッと割れる音が聞こえた。
それでも私は自分を抑えることが出来なかった。上手く魔力をコントロールできない。
「嘘だろ……」と、カイが目を見開きながら後退る。
「まずい! メイ! 落ち着きなさい!」
マシュー先生が何か必死に私に叫んでいるが、聞こえない。
何も考えられなくなって、頭が真っ白になっている。理性を保てない。
窓ガラスが勢いよく割れる。自分の瞳が熱くなってるのが分かった。周りの状況を理解しているのに、自分の力じゃどうにもできない。
全員火の耐性がある為、そこまで大きな怪我を負うことはない。マシュー先生は防御魔法で必死に私の魔力に耐えている。
不思議なことに、どんどん力がみなぎってくる。
今まで溜まっていたものが、爆発したような感覚。危ないことだと分かっているのに、不思議と心地よかった。
「なんて魔力だよ」
カイの口の動きでそう言ったのが分かった。
教室の壁が崩壊していくのが分かる。地面がギシギシと音を立てて、今にも落ちそうだった。




