27 魔法学園へ出発
目を覚めると、もう窓の外は明るくなっていた。朝日の眩しさに目を細める。
……あれ? 朝?
体を起こし、窓を開ける。心地の良い風が入ってきて、意識がはっきりとしてくる。
「昨日王宮に行っていないわ」
メイドの仕事が思ったよりも忙しかったって言えば大丈夫か。彼らもただの駒の私にそこまで心配していないだろうし。
昨日机の上に置いていた魔法学園についての書類が目に入る。
魔法をもう一度ちゃんと習えるのだと思うと心が躍った。もう一度、あの楽しさを取り戻すことが出来るんだ。
ナターシャが私を起こしに来る前に、鼻歌を歌いながら着替えた。
いつもより可愛らしいドレスに少しだけ違和感を抱いたが、思ったよりも似合っていた。
……これは華美なドレスになりそうね。
私は学校でも浮かないような格好でいる為に、少しシンプルな淡い紫色のドレスに着替える。
鏡の前に立ち、自分の姿をチェックする。
「これなら、大丈夫」
高貴なお嬢様って雰囲気は隠しきれていないような気がするけれど、さっきよりましだ。
髪の毛を耳より少し高い位置で一つにまとめて、前髪を整える。耳には目立たない小ぶりのイヤリングを付けて、部屋を出た。
早く魔法学園へ行きたいという気持ちが強く、駆け足になってしまう。
これから父に縛られない生活が始まる。私は早足で歩きながら庭へと視線を向ける。通常よりも五倍ぐらい大きい野菜が目に入る。
やっぱり私にとって、父は仕事の出来る宰相っていうよりも野菜オタクの変人ってイメージが強い。こんなに野菜の愛して研究をしているが、別に父はベジタリアンってわけではない。
なんなら、食べることに関しては野菜よりもお肉の方が好きだ。父が野菜の何に魅力を感じているのかを未だに分かっていない。
……まぁ、前回食べた甘いピーマンは美味しかったから、別に彼がしていることに文句は何一つないのだけど。
庭を耕す使用人達の様子を見ながら、私は馬車へと向かった。
私の専属になったのか、御者はギルバートだった。勝手に彼は夜しか働かないものだと思っていた。
「おはようございます、お嬢様」
朝でも帽子を深く被っていて、顔は見えない。けど、口調や態度で好青年の雰囲気を放っていた。
「おはよう。今日は魔法学園までお願い」
私はそれだけ言うと、馬車の中へと入った。
なんとなく、彼とはあまり深くかかわり過ぎない方が良いような気がした。考えすぎかもしれないが、好青年の裏側にどこか悪意を感じた。
私に対するものなのか、貴族に対してのものなのか分からない。ただ、良い感情ではなかった。
みんな色んな思いを抱えながら生きているのね。悩みのない人間なんてこの世にはいないもの。
そんなことをぼんやりと考えながら私は魔法学園へと向かった。




