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クロエ・リベラ暗殺計画  作者: 大木戸いずみ
15/58

15 乗り込み作戦

「クソッ!」

 会議室に入るなり、ノアの苛立った声が耳に響いた。

 イアンは今日も裏門まで来てくれたが、明日からは勝手に入って来て大丈夫だと言われた。

 ……王宮に勝手に出入りできる許可を得られるなんて、かっこ良すぎない?

 私は特別になったような気持ちになり、心が躍る。

「クロエ・リベラを直接見たくて、今日屋敷まで行ったが会えなかったんだ」

 隣でイアンがそう説明してくれる。

 私は何も知らない振りをして「どうして?」と聞いた。いつこの大根芝居がバレるのかと内心ひやひやする。

「体調不良だったらしい」

「へぇ」

 余計なことを言わないように、短く相槌を打つ。

「やっぱり、王子が来るってことに警戒したのかもしれない」

 ジャックは眼鏡を光らせながら口を開いた。王子はその言葉に小さく舌打ちをする。

「……俺の評判は良いはずだろ?」

 はい、とジャックは即答する。

「良すぎて逆に怪しまれたのかもしれません」

 イアンがそう言うと、ノアは暫く黙り込んで何か考え始めた。

 私は窓の外へと視線を向ける。多分、ぼんやりと星空を眺めるのが私の癖なんだと思う。 

 星を見ながら、何か考えるのが好きだ。

 今朝父に怒ったけれど、媚びた方が魔法学園に入学出来たのかもしれない。可愛い娘でいた方が良かったのかしら……。

 けど、たまには本音をぶつけた方が良いような気もする。家族なんだし。

 私はふとノアからの視線を感じ、彼の方を見る。見事に目が合う。ノアは何も言わず、ただ私をじっと見つめている。

 ……何、この見つめ合いの時間。

 恋に落とす練習でもしてるの?  

 そんなに長く見つめなくても、ノアを一目で好きになる女性は多い。私は違うけど……。

「お前がリベラ家に乗り込め」

 ようやく発せられた彼の言葉に固まる。

 脳みそをトンカチで殴られたような気分だわ。自分の家に乗り込んで、自分の正体をノアに伝えるっていう作戦?

 どんどん訳が分からなくなってくる。

「どうして私なんですか?」

「女同士の方が話しやすいだろ。クロエ・リベラに心を開かせろ。それがお前の任務だ」

「けど、彼女誰にも会わないんでしょ? 私なんかが入れるわけないじゃないですか」

 私は必死に抵抗する。

 前に私が書いたクロエ・リベラの情報を今提供しても怪しまれそうだから出来ない。

「王子が行くよりかは効果があるだろ。今俺達に必要なのは、クロエ・リベラの確かな情報だ。彼女がどういった見た目でどんな性格なのか把握することだ」

 イアンが王子の提案に乗る。

 頼みはジャックだけよ!

 ジャックの方に視線を向けると、彼も頷きながら「僕もその案に賛成です」と答えた。

「どうやって乗り込むんですか?」

「使用人として雇われろ」

 私はノアの決定に呆然とするしかなかった。

「服は俺達で手配する」

 イアンがそう言うと、ジャックは何か紙にメモを取った。

 皆手際が良いな、と思わず感心してしまう。

 私、本当にリベラ家に送り込まれるんだ。…………それってまずくない?

「あの、やっぱり」

「明日の朝、ここに集合だ」

 私の意見に聞く耳など持たずにノアの澄んだ声が部屋に響いた。

 ナターシャ、これがこいつの本性よ。

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