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クロエ・リベラ暗殺計画  作者: 大木戸いずみ
13/58

13 父の呼び出し

 あれから素晴らしい案が出ることもなく、私は家に帰らされた。 

 帰りもイアンに裏門まで送ってもらい「また明日」と言って、去って行った。

 イアンと仲良くなりたいとは思わないが、もう少しフレンドリーに接して欲しいと思いながら彼の背中を見つめていた。

 御者と軽く会話を交わし、彼の名前がギルバートだということを知った。それ以上深い話をしなかったが、少し距離が縮んだ気がする。

 今のままで計画が進むと、私は毒殺で殺されてしまう。それは何としても避けたいところだ。

 一体何人の人間を暗殺してきたのか分からないが、私はきっとまだ王家の怖さを知らない。

 その日、ぐっすりと眠ることが出来た。

 

 コンコンッと扉を叩く音で目が覚める。

 もう少し寝ていたかったが、私はなんとか瞼を開けて「どうしたの?」と寝起きの少し掠れた声を発した。

「お嬢様、旦那様がお呼びです」

「お父様が?」

 ナターシャの言葉に脳が起きた。

 父が私を呼び出すなんて珍しいわね。いっつも部屋に乗り込んでくるのに……。

 丁度いい、私も父に話があった。

「あ、入っていいわよ」と、私はナターシャを部屋の中に入れる。

「失礼します」

 彼女は少し深刻な顔つきで部屋に入ってきて、ベッドから降りる私をじっと見つめる。 

 ……どうしてこんなに見つめられているのかしら。愛の告白でもするつもり?

「あ、あの……」

「な、なに!?」

 ナターシャに合わせて、私も緊張感のある話し方をする。

「じ、実は……」

「じ、実は!?」と、あえて大袈裟に反応する。

 じれったい。早く教えて欲しい。

 私にそんなに言いにくいことって、何だろう。もしかして、父が死んだとか?

「ノア王子がいらっしゃるんです」

「え、どこに?」

「旦那様の部屋にです! いつの間にそんな関係になったんですか!」

 ナターシャの大きな声が部屋に響く。

 私は起きたての脳みそをもう一度眠らせてしまいたかった。

 どうしてノアがここにいるの? もしかして、メイがクロエ・リベラってバレた?

 それとも血迷って、堂々と父の前で私を殺しに来た? 

 刺されるのだけは勘弁して欲しい! 痛いのは嫌よ!

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 混乱している私に、ナターシャは顔を覗き込む。

「え、ええ。……ちょっと、体調が優れないから今日はお父様のところへ行けないわ」

 私は咳き込む真似をする。

 私の演技力が酷過ぎて、ナターシャは嘘だと気づかれているだろう。それでも、私はどんな言いがかりをつけても、この屋敷でノアに会うことは避けたい。

「ノア様に会いたくないのですか? 先ほど玄関でお見かけしましたが、本当に優しそうな美しい方でした。使用人たちにも微笑みかけてくれて本当に素敵な方でした。ノア様を見慣れる日なんて来ないと思います」

 ……え、誰? そんな人知らないわ。

 そんなの私の知っているノアじゃない。

 ナターシャ! 騙されないで! って叫びたかったけど、夢を壊しちゃいけないし、何よりノアの本性を言ったところで信じてくれないだろう。

 興奮しているナターシャには悪いが、私は父の部屋へ行くことを断固拒否した。

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