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4話

「ぐぎゅ、うぎぎ」


 自分で殺した死体を担いでゴミ捨て場に近づいて行くとき、ちゃんと確認していたことがある。

 このハゲ頭は右利き、それでいてナイフは左腰に収める。つまり岩陰に潜みやすい内側ルートだと突き飛ばした後に戦闘が始まってしまい、負けてしまうルートが完成されてしまう。


 なので私は多少リスクを冒してもばれやすい奥側の岩陰に隠れていた。

 ハゲ頭が涙をしゅんしゅんと鼻を確かめつつ、歩きを再開してこちらに段々と近づいてくる。


 大丈夫、できる。もう極限なんだ、私はこれが失敗にしろ敗走しても再起はできず死ぬだけ、この作戦が私にとっての分岐点。


 …行く!!


 私は横を通り過ぎようとしたハゲ頭に腰のナイフの方へ手を伸ばしもう片方の手で突き飛ばすために首元をガードしながら突っ込む。

 ハゲ頭は焦ったのか躓きそうになってる様子で、そうなると一度跨ってマウントを取った方がいいのかもしれないと思い、足を蹴って近づき相手が後ろへ倒れそうになる中ナイフへと手を伸ばして掴みそのまま奴の胸に乗る。


「うぎゃっぎゃ!」


大きな声を出して他の連中が起きてしまったら終わりだ、焦りと共に私はこいつの首元へナイフを切ろうとするけど腕を動かして邪魔をされる。

 急がなきゃいけないのにという焦燥感もあるが、このままではいけないと上に思いっきり振りかぶって奴の喉‥ではなく口に突っ込んだ、こいつも気づいた時にはガードが間に合わずそのまま口内にナイフが叩き込められ喋ろうにも喋りにくい状況にはなったはず


「うぎゅぃすぅぃぐうぃうぃ」


 それでも仲間に助けを求めてるのか、はたまた私に対して怒りで恨みを呪詛のように唱えているのか、あとは私はこいつの首に全体重を乗せて絞め殺せばいいはずだ。



―――――――――――――――――


 これはどういうことだろう。意識が途切れてしまったのだろうか

 私は誰もいない部屋にいた。


 急いで意識を戻さないとと思っても、あぁもしかしたら私は死んだからここに来たのかもしれないなんて楽観的になってる部分もあるせいか、どうにも焦りがなくなっていく


「―――の家にお邪魔するなんて初めてだな」


 誰かが家に帰ってきたのか、私の方に男性の声が聞こえてきた。

 察するに私の家にこの声の主が招かれたか押し掛けてきたのかなんだろうけど、こんな知り合い今までの記憶では出てなかった気がする、新しい友達?


「ここが部屋?へー綺麗じゃん、何もなさすぎる気はするけど」


 笑いながら入ってきて、私がこんなチャラそうな人間を招くなんてあるのだろうか?もう過去の私にとっては黒歴史確定である。

 見た目も喋り方もどうもすきになれなそうな印象しか残らない。


「それにしても良かった、俺断られると思って誘ったのに全然受けてくれてさ」


 それは間違いない、私も断ると思っていたのに記憶の私は何を考えているのだと問いただしたい気持ちなのだから


「あ、ベッド座っちゃうけど大丈夫?シャワー浴びてくるなら待ってるけど」


 私は小さく首を横に振って飲み物を取りに行って、男は男で勝手にタンスとか開けたりと不作法極まりないことをしてる。

 本当になんなのだろう、私はどうしてこんなことを?私の昔はこんな風に過ごしていたのかと思うと記憶を取り戻したら今の私もこの時の私みたいになるのだろうか


 そんなことを考えていると私がジュースを持ってきて、それを男の人に渡すと、私も飲み物を軽く口にして椅子に座り他愛もない話をし始める。


「のど乾いてたから助かるよ、それにしても―――ちゃんは可愛いね、スタイルもいいしさ」


 その話を私は延々とニコニコ笑顔で聞いている。何が楽しいのだろうか

 そして私はベッドの方に行くと男が気持ち悪い笑みになりながらも待ってましたと目を輝かせて両手を震わせながら‥


「あれ?なんか俺緊張しちゃってるみたい?かも?」


 私はそのまま男を押し倒して笑顔を崩さないまま指を首に添えて段々と力を強めていってる


「ちょ、―――!なにを」


 男は抵抗しようとしてるけど、力が入らないのか、もがこうとしては苦しみからが汚い声を出しながら白目になってやがてぴくりとも動かなくなっていく

 これは、いったいどういうことなのだろう。


 今までも別に私が思い出したい記憶を思い出せたわけではないけど、さすがに唐突すぎて困惑してしまう。


 私は殺したソレを面倒くさそうに足を掴んで下に、お風呂場に運び、そこにはあらかじめ用意されてあったであろう解体のための物で解体していく


 私は一体何をしているの?



―――――――――――――――――――


 疲労感が凄かった。

 唐突な記憶のフラッシュバックもそうだけど、今首を絞めて殺したハゲ頭の状況に意識が戻った私は使った筋力での疲労も急にきて、凄く疲れている。


 どれくらい記憶を見ていたか分からないけど、とにかく死体をなんとかしなくては

 いや、それよりも水を飲まなければと、他の4体がまだ眠ってる確認して、壺の方に行き桶で汲み口にする。


 味は泥水のような、美味しいとは言えないけど、乾ききっていた喉が満たされていく、いきなり飲みすぎるのも体に良くないと聞いたことがあるのでそんなに一気に飲まないようにしなければいけないけど、できれば水筒のようなものがあればいいんだけど

 贅沢は言えないか、いざとなったらまた睡眠してる最中に忍び込むしかないだろう。


 ハゲ頭の死体に戻り、口に突っ込んだナイフを引き抜き、見てみると結構な刃こぼれをしてるナイフで、これで首を切ろうと思ったら失敗していたかもしれない、突き刺して正解だった。


 このハゲ頭たちは腰に必ずナイフを持ってるのだろうか?と疑問に思い、もう一体の腰回りを調べてみるとナイフではないが小さい棒きれを腰につけていた

 さすがにこれは武器にはならないだろうと思うけど、何か別の使い道でもあるかもしれないから一応持っておこう。


 腰布ももらっておきたい気持ちはあるけど、付けると身体がかゆくなりそうなほど雑な布切れだ、無いよりはマシなのかもしれないけど、あっても無いのと変わらないと思うと微妙か


 とりあえず一体をゴミ収集場に運ぼうと思ったときに、ふと思ったのだけどあれだけの鳴き声があったのに他のハゲ頭が起きてないということは、あと4体くらいならナイフで殺しても問題はないのではないだろうか


 そうすればあの部屋を探索できる‥よし、殺そう。


 思いついたが吉日、善は急げ、できる限り足音を殺して、布にくるまってない首が見えるハゲ頭から順番に一突き


「うぎっ…」


 結構振りかぶってやったのにかなりの抵抗感を感じる、というよりナイフが先の方も欠けてボロボロだ、これじゃあ残り3体は厳しいかもしれない

 このハゲ頭はナイフを‥持っている、刃の部分はボロボロだが先が大丈夫そうなので、この調子で残り3体を殺ろう。


 振りかぶって一突き「ぐぎゅ」振りかぶって一突き「ぎっ」振りかぶって一突き「うぎっ」

 ナイフを持っているのは2体、棒切れ1体

 最後のハゲ頭を殺したところでまたナイフが使い物にならなくなってるので、実質刺突専用ナイフが二本が今回の成果かもしれない。殺してよかった。


 一仕事終えた後の一杯も味はともかくとても美味しくいただけた。


 あとはこの部屋に食料の何かがあればいいのだけど、と思っていたら奥の方にまだ通路がある。

 もしかしたらここは寝室のような場所で奥にまだハゲ頭の仲間がまだいるかもしれない


 この洞窟の広さにもうんざりするけど、このハゲ頭の残り何体ともしれないと考えるとより億劫だ。

 

 見渡した感じは食料になりそうなものは見つからないので、この先に行くか悩むところではある。

 水分補給できただけでも御の字と言いたい気分ではあるけど、最初に襲った奴みたいにリスクある戦闘があるなら体力的に私は死ぬ確立の方が高い


 我儘を言える状況ではないとしても、いや、もう今更なのかもしれない。

 私は生きないといけないんだ、生きて、もしかしたらこの世界にいるかもしれない私の友達に会わないと


 一呼吸して、覚悟を決めて私は一体のハゲ頭を掴みお腹を噛む。

 ネズミならまだしも、さすがに大きさ的に噛みづらいし、固く、噛みちぎるのに力がいりすぎる。

 食べるにしても解体したいけど、ボロナイフを消耗してしまうと考えるとそれが良い事なのか悩ましいけど、食べないよりはマシか、最悪一本使い捨ててももう一本あるから


 お腹を何度も刺して、少しでも食べれるように細かく突いて突いて突いて、口の中に入れれるサイズに何度も突いて口に含む。

 味の感想は不味いとしか言いようがない、血生臭いし、柔らかそうという理由でお腹の肉を選んだのももしかしたら悪かったかもしれない、妙にネチネチとした食感は私は好きになれそうにない


 せめて焼肉にできたら少しは変わるかもしれないけど、そう考えて今更ながら天井にぶら下がっているカンテラを思い出した。

 火力は少し頼りないけど、ナイフでもう少し小ぶりになるまで解体すれば美味しく頂けるかもしれない


 テーブルを動かして上のカンテラを持ってみると明かりは灯ってはいるけど、これ炎じゃない

 なんだろうか?石が光を放っている。


 どういう原理か分からないけど、火でなかったのは残念だけど、この光る石は持っていこう、欲しい時に光ってほしいからハゲ頭の布切れを石に包んで持っていくとして

 不味い食事の続きをしなければ‥



 吐き気をしながらも意識を別のことに持っていきながら無理やり食べた後は、水で飲みこんで満腹である。

 死体処理もしなければならないと思ったけど、この血まみれの惨状は隠しようもないし放置してもいいとは思うのだけど、最初のハゲ頭の情緒不安定な行動からばれない可能性もまだあると思うと処理場に捨てたほうがいい気もする。


 せめて出口までの距離が分かればいいのだけど、それまでは隠密重視でいかないとな。


 1体運んでは休憩を繰り返して、結構な時間経ってる気もするけど、この寝室?のところにくる生きてるハゲ頭が来ないので都合はいいのだけど焦って不安になる気持ちも出る。


 最後の1体になったところでこいつを肉として持っておくべきか悩む。

 肉を解体して、一応おにぎりサイズのブロック状に突いて、水で洗って布切れに包んでおく


 水洗いしたから多少臭いをごまかせると言いたいけど、これはあとで安全地帯に戻った時に食べて消費するしかないかもだね。

 ゴミ収集場の臭いがあるから大丈夫だと思うけど、新鮮な血の匂いに敏感だったりするとかだったら笑えないので、これは後で食べるお弁当です。


 そういえばもう捨てたから思い出したけど、小腸をどうにかすれば水筒が作れるって話あった気がと思い出した。

 最後のナイフを水筒作りには使えないので結果的にこうなることは変わりなかったけど、余裕があれば使えそうなものをもっと視野を広くしないといけない、水と食料で少し浮かれすぎている。


 水の桶を汲んだ後そのまま収集場から上に向かい、岩陰に隠れれるところまで向かって本格的にゆっくりと食事をするとしよう。



 食べた!不味い!けどお腹満たされてます!

 私今生きてます!


 食べすぎッてくらい食べた気もするし、今までが極限すぎていたからか、この満腹感だけでかなり体力がすでに戻ってきてる感覚すら感じてしまう。


 油断はできないけど、あとは軽く睡眠をして再度通路の選択に入らないといけない。


 そう思ってるとうとうとしてきて、本当にこれは久しぶりによく眠れそうと思えた。



―――――――――――――――――


 私が学校で登下校をしてる姿があって、その先に車いすの友達。

 車いすを押して、私は満足そうに車いすの友達に対して笑顔で話してる。


「最近―――はどうしてたの?」


 最近は何といえば良いかサバイバル生活を少々してると言ったらいいのだろうか


「楽しい?」


 聞かれたら困る、私は全然楽しくないけど、やっぱりサバイバルだからどうしても生きることが大変で忙しいことばかりだよ


「けど元からサバイバルしてたよね?―――は?」


 元から?私ってそんな子だったの?今思い出してる限りは全然そんなことないと思うんだけど


「殺したよね?」


 殺したってハゲ頭を私は殺して‥あ、あとネズミ殺して


「俺の事殺したよなぁ?」


 私が車いすの友達を殺すなんてそんなこと、そう思って座っている顔を覗き込むとそこには私の部屋で首を絞めていた男が白目を剥きながら笑顔になっていく姿だった。



―――――――――――――――――


「ぁっ‥はぁ‥ぁぁ‥」


 喉の痛みすら気にならなくなるほど大きく息を呼吸して、私は汗もかいていた。

 ちゃんと水分が体に入ったからなのか、汗も出てるんだと小さく納得しつつも


 まさかこんな悪夢が出てくるだなんて、気にしないようにしていたのにちゃんと思い出せと私を戒めてくるかのように


 こんな‥こんなどうでもいい悪夢に惑わされてる場合じゃないんだ私は!

 速くこの状況を抜け出して友達のところに行かないといけないんだ、あの子は歩くこともできない、あの子一人では生きることができない、だから私がいないと駄目なんだ


 私が、守ってあげなくては

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