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3話

 そういえばあの時のハゲ頭たちは布切れを腰巻として付けていたけど、一応衣服の文明?のようなものは進んでいそうということになる、同族の喧嘩で殺していたくらいだから知性は低いのかと思ったけどそれなりにありそうで怖い。

 トラップとかないといいんだけど


 奥へ奥へと進んでいくとヒカリゴケがまた増えてきて壁にほのかな明かりを照らしてくれる。

 今私の唯一の味方はこの子くらいなものだろう。コケって生きてるよね多分。


 疲労からなのか、水分不足なのか、はたまた全部か、フラっと身体が転げかけた。

 意識は一応しっかりしてるつもりなのだけど、それでも力がどうも入りづらい。


 とにかく進むペースが遅くなっても先に進まなくてはと、ゆっくり進んでいくと、小広間のような場所に出て

 端の方の岩場に隠れていたら休めるのではないかななんて思った。

 私がこう思うってことはあのハゲ頭たちもそういうところで休憩する可能性もあるけど、今見つかってしまえばどっちにしても終わりだ。

 来ないことを祈って少し休むことにする。



――――――――――――――――――


「俺、好きなんだ!―――のこと!」


 クラスの男子から告白を受けていた。

 そっか、こんな現状だから特に考える余裕はなかったけど、たしかに以前の平和な時なら私たちくらいの年齢は恋愛なんかあったんだろうなぁって今では薄れた感情で思う。


「どうして駄目なんだ?やっぱりあの子のこと気にして」


 あの子がどの子を指すのかすぐにわかった、車いすの友達だろう。

 たしかに車いすの友達と関わっていたら他のことが多少なりともおろそかになることもあるかもしれないけど、これは私がそもそも付き合いたくないという意思で思ってるはずだ。


「関係ないって言われてもいつも面倒見てあげてるじゃないかそのせいで!!」


 私が男にビンタをして、そのまま去って行った。

 見ている私も思わずスカッとした気分になったのでありがたい。


「んだよ‥」


 私の方がんだよだよ、私が好きであの子と関わっているのだから放っておいて欲しい



 「また振ったの?」


 またって私そんなに告白されてるってことなのかな、覚えてないからあれだけどみんな見る目無いんじゃないのかな。

 私なんか事故で助けられて、この車いすの友達に付きまとってるだけで何の魅力も今のところ思い出せていないのだけど。


「―――は可愛いんだから、恋愛とかしてみてもいいんじゃないかな?なんて思うかな」


 恋愛したいと思ってないし、それに私は今はこの子と一緒にいる方が幸せな顔をしている。

 やりたいことをちゃんとやれているんだ。だから大丈夫なんだと胸を張って言える。


「それじゃあ嫁の貰い手いなかったら私がもらってあげましょう」


 私が嫁なのかな?どちらかと言えば嫁なのはこの車いすの友達なんじゃないかなって思う。私が尽くしてるように見えて、その実この子にとても助けられている。

 記憶の私も、現在の私も


「ふふ、―――はいつもそうやって温かいことを言ってくれる。私にとってのお日様だよ」


 あぁ、そうなんだ。私にとってこの子はお月さまなんだ、私の足りない所を補ってくれる存在‥

 なんてこれじゃあまるで私たちが恋愛してるみたいだ。


 するとゴミ収集車が来て学校のゴミを回収していくところが見えた。

 この平和な世界では集めて処理するけど、あの世界では集めて、溜まりきったらどうなるのだろうか


「何見てるの?ゴミ収集車?」


 身長的に車いすに乗っているから塀の奥でやってる作業が見えてないようで不思議な顔でこちらを見てくる。


「何か興味があったの?もしかして大事な物捨てちゃったとか!?」


 違う違うそんなことなってないよと、私が首を振っている。


「びっくりした‥ゴミ収集車と言えばこの前も事件があったみたいだよ?ゴミあさりの」


 ゴミあさり?カラスか何かの悪戯とかだろうか?


「あはは、違うよ、ゴミはね色んな情報があるんだよ、例えばどんな食べ物を食べたとか、何を買っているのかとか、この人はどんなものがゴミなのかな?とか」


 ゴミなんて臭いしあまり近寄りたくないと思っていたけど、そっかゴミだけでも色んな情報あるんだ。

 それならもしかして‥


「―――どうしたの?顔色悪くなってない?」


 あぁ、そうか、また私はこの子に助けられて



―――――――――――――――



 私が目を覚めると、近くに『だすっだすっ』という足音のような音が複数聞こえる。

 ゴミ収集場に向かっているのだろうか、さすがにチラ見したくてもばれたら一巻の終わりなので息を潜めて早く去ってくれることを祈る。


 しばらくすると全員通り終わったのか、静かになって一息ついたけど

 これからどうしようか、という問題がある。


 頼りないにも程があるけどこの岩場の隙間をとりあえず安全地帯(仮)として使ってゴミ収集場を見張ってから、食事の残骸が運ばれるのを確認さえできれば、とりあえず今の枯渇した体のエネルギーを回復はできるのだろうけど

 見つかればここまで逃げてばれない保証はどこにもない、ハイリスクハイリタ―ンだ


 それに仮に食事場所が分かったとしても今度はそこへどうやって潜入できるかも考えないといけない。

 いっそ下まで行く道を考えて、ゴミを漁って残飯を食べたほうが堅実な気がしてきた。


 私のミス一つで軽く命が消耗されるようなこの状況、まともな状態なら間違いなく発狂していただろうな

 そこにだけは記憶がなくて感謝かもしれない。


 とりあえず何もしてないよりも、せめて収集場の見張りをしながら考えたほうがいいかもしれないと動こうとしたとき、また『だすっだすっ』と足音が聞こえたので、すぐさま同じ体制になって息をひそめる。


 何かゴミを捨てに来ただけで帰っていくのだろうか?それならもしこのルートが食料に関するところなら見ておけば良かったと後悔してしまう。

 しかしよくよく考えてみれば食事‥肉のような臭いはしただろうか?彼らの食生活がベジタリアンとかでない限りは何かしら臭いの痕跡があっても‥いや生肉で食べていたら分からないか


 悪臭漂うこのエリアで少しでも他の臭いが感じなかったのは食料ルートがこの先ではないととりあえず仮定していくしかない。

 まさかあんな醜悪な顔つきでベジタリアンですなんて思えないもの、固定観念に縛られたくはないけど、すくなくとも仲間を殺すような獰猛さがあるのは肉食界隈な気がする。


 悩んだことであの集団と鉢合わせにならずに済んだとはいえ、油断はできないということを再確認してゴミ収集場に向かうことにする。


 色々疑問は残ったままだけど、この洞窟のような場所ではハゲ頭が主な住処なのだろうか、そういえば先ほどの『だすっだすっ』という足音、ハゲ頭ににしては重い足音だった気がする。

 もっと狂暴な生き物とかもいるということかもしれない。



 とにかく戻ってきたはいいけど、ここに残飯を捨てに来るまで待たなければいけないとなると私の体力どっちが持つか怪しいところだ。

 正直体力は時間が経つごとに減っている自覚はある。それでも下手に動くよりここで待つ方が体力温存にもなる‥と思いたい。


 窮地に陥ると人は思考を停止する。という言葉をどこかで聞いた気がする。

 私もそれなのだろうか、それともちゃんと良い選択肢を選べているのだろうか


 駄目だ、何もしてないと後ろ向きな考えがよぎってしまう。

 今必要なことを考えないと、残飯の確認をしたらそこに向かうとして、争いになる可能性がある。

 素手‥どころか衣服の一つもない私が勝てる可能性なんて微塵も感じられないから戦うことになった時点で私の負けは間違いないとして、こっそりと隠れて食料と水を奪えればいいんだけど



 ・・・数十分は経っただろうか?こういう何もしてない待つだけの時間の時は想像よりも時間は経ってないものと思うけど、さっきから意識が飛び飛びになってるような気もしなくもない



 ・・・耳に集中して音を聞くようにしているけど、実は聞き逃していたらどうしよう。



 ・・・私は間違えたのかもしれない。迷わず動いていたらあの子にも‥



「ぎぎっ!」


 声が聞こえた。

 私はハッっと意識を取り戻して、ゴミ収集場の道を覗いてみると、ハゲ頭の生き物が3体収集場に入ってくるのが見える。


「ぎゃっぎゃ!」

「ぐぎぎ」


 何か骨のようなものを捨ててる‥?白いものにピンク色の肉片のような物がついていたから恐らく残飯なのだと思うけど


 捨て終わったハゲ頭たちは入ってきた道に戻っていくのを確認して、私も時間を少しおいて追いかける。


 落ち着いて、冷静になりながら追いかけないと、3体確認して、この先に行けばもっと数がいることを考えたら盗むのは難しい。

 そうとなれば何かで注意を逸らしてるうちに盗まないといけない、いや、あいつらも生き物なら睡眠は必要なはず。

 私が我慢すればまだチャンスはあるはず‥ある‥と思いたい


「ぎぎ」

「ぐぎぎゃっ!」


 低い鳴き声のような声が近づくにつれて、腐った臭いとは違う異臭が濃くなっていく。

 臭いだけでなく、先の方では今までの洞窟とは違ってちゃんとした明かりも見えてきた。


 明かりの方を岩陰に隠れて見てみればカンテラのようなものを吊り下げているのが見える。そんな知能あるんだと驚きを隠せないけど、それだけではなく木のテーブルや椅子なんかもある、ボロボロではあるが


 目に見える範囲で6体はいるハゲ頭を見て、それぞれ何かコミュニケーションをとっているのか、鳴き声を上げては石のようなものを転がしてる?

 まさかゲームでもしてるのだろうか


 まぁでも何かしてるなら好都合なことに変わりはない、その間に何か食べれるものか飲める物がないか周りを見ていると、ハゲ頭の1体が立ち上がって壺のようなところに行って小さい桶のようなものを突っ込んでそれを飲み始める。

 汚い‥と言いたいけどそんなこと思ってる場合ではない、間違いなくあの壺の中に飲み水が入ってるのだ


 食料に関してはぱっと見ないけど、先ほどゴミに捨てたことを考えたら食事時ではないだろうし、あとはこいつらが眠ったりしてくれれば助かるのだけど


 しばらく待っていると、1体、また1体と布の上に寝そべっていく

 もう少しで水が飲めると思うともう底を尽いていたと思っていた身体に心なしか力が入る気がした。


 4体が眠りにつき、残り2体になってる中、2体はまだ飽きもせずに石ころを転がして一喜一憂を繰り返している。


「ぐぎぎ!ぐぎゃっぎゃ!」


 ゲームで負けたのか、一体が文句を言ってるような怒鳴り声を上げている。

 せっかく他の4体が眠ったのに起きてしまうからやめてほしいと思うのだけど、と思っていると段々とエスカレートしたのか揉み合いまで始めてる。


 知能が低いのかあるのかいまいち分からないけど‥?


「ぎぃー!」


 やがて1体が突き飛ばして、勝敗がついたかなと思っていたら、腰のナイフを抜き出して突き飛ばしたハゲ頭に飛び掛かって何度も何度も体を刺している。

 たかだかゲームで負けたからと言ってそこまでするのだろうか、というよりもこの惨状を他の仲間がもし起きていたらどうしていたのだろうか


 やがて絶命を見たハゲ頭は悲しそうに泣き始めた、情緒不安定にしてはかなり手慣れた動きに感じたけど


 ハゲ頭は証拠を隠滅するためか、死骸を担いでゴミ捨て場に向かおうと準備を始めている。

 

 この状況で私が出来ることといえば岩陰に隠れて死骸を運んでいるところを襲い掛かるということ

 もしくは残り4体が眠っているということを仮定して、ゴミ捨てを放置してその間に眠っている4体を始末できるように組み込めばどちらでも大丈夫と言えば大丈夫


 ただそれぞれメリットデメリットが明らかになっている。

 私としては目標だけのつもりではあったのだけど、これはもう少しうまくいけば欲を出せば上々の成果を得れるチャンスになるかもしれない。


 私は先ほどの騒動があったとしても、いつものことなのか、それでも起きなかった4体の方を見てもぐーぐー寝息を立てて身体、肺のある位置を上下しているところを確認して、即座に死体を運ぶハゲの方を確認してもうこれから出かけるところのようで私の岩陰の近くを通ることは間違いない。

 他にゴミ収集場が無い限りは私が入ってきた道が最短のはずだから


 さぁ。心臓がこれから起こることの焦燥感で絶え間ない心臓音を私に伝えるべくドクドクと鼓動を繰り返す。失敗すれば食われ、犯され、嬲られ、どんな非常事態最悪のことも想定してでも、私はこいつらに勝つ、勝って生きるんだ。

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