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2話

 ようやく進めることができるけど、果たしてこれは入り口に進んでいるのか、奥に進んでいるのかすら分からない、それとも出口も何もなくてただぐるぐる回って一生出られないのではないか

 そんな風に後ろ向きな考えがよぎるたびに私は頭を振って、とにかく進むことだけを考えるように壁伝いに進む。


 しばらくすると薄ぼんやりとだけど壁からコケ?のような物が発光して先ほどまで見えなかった反対側の壁が見えるようになっている。

 明かりがあるからか、心が少しほっと落ちつけた気がした。

 できればコケを持っていきたい気もするけど、このコケが良いものなのか悪いものなのか知識のない私にはさすがに触る度胸はなかった、壁には生えているのに天井や床には生えてないのはなんでだろうか?


 考えたいことが色々ありすぎるからもっとシンプルにしないとこのままじゃ精神的疲労が身体疲労と追いついてない。

 しかし結構進んだと思うけど、このヒカリゴケ以外めぼしいものが無い状態でまだ進むべきだろうか、私が知ってる所に戻れば一応舐める程度の窪みにある水分があるけど

 いや‥元々少量すぎる水を運動した後に舐めたところで圧倒的に足りないからやはり進むのが正解のはず‥



 またしばらく歩いていると、少し広い空間に出て道が分岐している。

 道が分岐してるのは嬉しい反面悲しい気持ちもある。

 一本道なら何も考えずに進めたけど、右に行ったりして行き止まりなら疲労するし、まっすぐ進んで道があればさっきまでの分岐の方が良かったんじゃ?と思う要因になってしまう。

 せめて水の調達だけでもなんとかしたいところではあるけど‥こればかりはもう運に任せるしかない


 道を覚えやすいということで右手伝いに行けるように右の道から進むことにして、少し進んだ先で濁った水たまりがあった。

 これは。何か分からないものを飲んでいた私も視覚情報が出ることによって飲む気が失せるというか、飲んでお腹を壊さないか不安でしかない

 一応飲むのは最終手段として置いといて、別のルートを進むべきだろうか、この先に進めないこともないけど、素足の状態で進めば寒いとも暑いとも思ってない私だけど体が冷えて悪影響が無いとも言い切れない


 一旦戻ろう‥


 戻ってきて、まだやらなければいけないけどそれでも体が思った以上に疲れているため少し休むことにする。

 思えば私はいつからあそこにいたのか、そう思うとどれだけ食べて、飲んでなかったのか

 今動けているのは極々最近の出来事だからまだ大丈夫だったのだろうか‥



―――――――――――――――――――



 学校では車いすの友達が周りから遠ざけられていた。

 事故からある程度回復して通い始めはみんな仲良くしていたのだけど、それでもしばらくすると車いすというハンデを背負った彼女に対して体育の時は「休めていいな」など心無い言葉を言われたり

 今まで一緒に行き帰りしていた子達も「今日は早く帰らないといけないから」と言って足早に帰って行ったり


「―――いつもありがとうね」


 そんな中、私は車いすの友達と常に一緒にいるからなのか、感謝の言葉を言われ、そして自責の念が私を襲う。

(違う、お礼を言うのは私なんだ)

 だって私を庇ったから、もし庇われなかったら今のこの子の立場に私がいたのだから


 どうしてそんなに強いのだろう。どうして私を庇ったのだろう。見捨てるという言いかたは悪いにしても、あんな状況なのだ、呆然と何もできなかったと言って助けない選択肢もあったはずなのに


「私の感謝はね、私と出会ってくれてとか、私の傍に居てくれてとか、全部だからね」


 もし私は庇われなかったとして、この車いすの友達が足を無くしたとしたらどうだろうか、友達になれていたのだろうか

 他のクラスの人達みたいに疎遠になっていたんじゃないだろうか


「大丈夫、私たちはどんな時でも友達になれていたって自信あるんだ」


 私はこの子のように強くなれるのだろうか


「だからそんな悲しい顔をしないで」


 私はこんな大切な友達を忘れて、名前も思い出せなくて、そして私自身すら忘れているのに。

 けど、だからこそ思い出さなきゃいけない

 私のこと、この子のこと、そして会わなきゃいけない



―――――――――――――――――――



 目を覚ますと、壁に寄り掛かった状態で結構眠っていたためか身体が痛い。

 ベッドが恋しいと言いたいところだけど、私が普段どんなところで眠っていたかなんて記憶に残ってないからそんなに恋しくないかもしれない。


 とりあえず来た道と、濁った水たまりの通路以外に進んで出口を探さないと

 そう思い、また右て伝いに道を進んでいく。


 薄ぼんやりと明るいとは言え、足元が見えないというのはどうしても恐怖を誘う。

 素足だからというのもあるけど、こんな洞窟とも迷宮とも言えないところなのだ、実は下に穴があって落下死なんて笑えないことも平気で起こるかもしれない。

 奥に進めば進むほど、引き返した方がいいんじゃという弱音をぐっとこらえる。


 そして僅かにだけど、進んでいくと何かが腐ったような臭いが強くなっていく

 なにが腐った臭いなのかは分からないけど、吐き気を誘発するような臭いに段々耐え切れなくなりそうで、さすがにこれ以上進むか悩んでしまう。


 少なくともこの先に食料が無いというのは確実だろう。

 あったとしても腐った何か、汚水よりもはるかに危険なのは間違いない


 普通なら引き戻ってもう一つのルートを確認してからの方がいいに決まってる。

 それでそのルートが良いなり悪いなりはっきりと分かったうえでなら迷いもなく進めるしわざわざリスクがあると感じて進むにはデメリットが大きすぎる。


 ただこういうところにおいて何の保証もない、戻って行き止まりであれば体力をただ無駄に消費したという事実は覆らない


 行かなきゃ‥だよね


 迷っていてもそれ以上の進展はない、ならばと口で呼吸をして改めて前を進む。

 この場合鼻呼吸でも良いのかもしれないけどさすがに臭いがきつすぎる。嗚咽が止まらなくなるくらいなら口の中に吸って、腐敗ガス出てるかは分からないけどそれを吸ってしまった方がいいと思った。


 進むにつれてヒカリゴケの群生が少なくなっていって、また暗闇の方が濃くなっていく。

 気のせいでなければ足がべたついてる?私の汗がべたついているのかとも思ったけど、『ねちゃっ』と粘つくような気がして、元々何か粘着性の物が床下にくっついていたのだろうか


 そして、先ほどまで通路と呼べるくらいの広さの私が進んできた道よりも更に広い、大広間とよべるような場所に着いた。


 乱れた蜘蛛の巣のように不安定な通路がそこらかしこに繋がっており、上の方、下の方まで足を滑らしたら真っ逆さまで赤い花が咲くことは間違いないくらいの高さ


 試しに我慢しながら鼻で臭いを嗅いでみるが、嗚咽に交じりながらも、恐らく下の奥底から臭いが上がってきてるんだろうということは分かった

 この下がここら一帯の生物たちのゴミ集積場とかなのだろうか?それにしたって、まだ生物らしい生物にはネズミくらいしか会っていないのだけど


 さすがにここで休むには何者かが通りそうなこの分かりやすいルートで休むつもりにはなれないけど、この複雑な通路先は色んな洞窟の出入口に繋がっていて、どこに行けば何があるのか皆目見当もつかない。


 これまで通りに右手伝いを信じて進むなら、ちょっと下がった位置にある空洞に行かなければいけない

 ここまで知的生物がいそうな雰囲気が漂っているなら、本格的に逃道の確保をしたいところではある。



 とりあえず誰にも見られないように、素人なりにコソコソと歩いてみて洞窟のところまで来れたところで突如大きな鳴き声が聞こえた


「ぎゃっぎゃぎぎぎぎゃ!」

「ぎゃっぎぎぎぎ」


 灰色の130センチくらいのハゲ頭、それでいて、それよりもさらに小さいハゲが蹴られて虐められているのだろうか?


「ぐぎぎぎゃっぎゃ!」

「ぎぎーーーーーぃぃぃ!」


 ハゲ頭が小さいハゲを蹴り飛ばして、遥か底に落としていった。

 どういう虐めかは分からないけど、少なくとも友好関係なんて絶対に取れそうにないような生物っていうのは分かった。

 私があそこに出れば殺されるか食われるか‥よく見ればハゲ頭はこん棒のような物を腰に巻き付けている。

 武器、私も欲しいけど、まだ慌てるときじゃないはず。

 今一匹に見えるこれはもしかしたら下の方の洞窟ではまだ何匹もいて、複数に囲まれる可能性もあるし

 実力差自体どれだけあるのかさっぱりわからない。


 このまま洞窟に入ると後ろが不安だけど、とりあえず進んで安全確保を最優先に探してみるため進むことにする。

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