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記録の星

作者: 久崎みかん

とある豊かな星で文字が生まれました。文字は世界中に広まり、様々な情報をまとめる媒体として進化を続けます。ある者は日々の記録を、またある者は自身の中にある世界を、文字を使って世に残しました。文字にする、ということは忘れ去られたとしても読み返すことで思い出すことができる、ということでありとても重宝されました。

そして、文字による記録はさらに進化を遂げ、人々の記憶を記録するようになりました。その時感じたこと、見た映像、すべてを記録します。うれしい、かなしい、たのしい、さみしい、あつい、さむい、心地よい、気持ちが悪い。どんな複雑な感情も文字にして小さな瓶に閉じ込めていきます。初め、人々はこの技術を大変喜びました。いつまでも色あせることない思い出として永遠に存在するのですから。当時感じた喜びを、悲しみを、その記録を見聞きすることで取り戻せるのです。

いつしか、この星の住人全員が記憶を記録するようになりました。そして、記録を見返します。過去の自分がそのままに蘇る、そんな時間を重ねていきました。

それが百年前のこと。今、この星では記録の瓶にあふれ、人々はうつろな目をして何かを探しています。それは大切にしていた時間。忘れたくない時間。そう、記録してしまった大切な記憶。記録するうちに本当に覚えていたい記憶をなくしてしまったのです。心に残るはずの何かを求めて記録に縋る。しかし、記録から満足のいくものを得ることはできません。落ちている瓶からは他人の、大事な記憶を探す記録しか見ることが出来ません。すべてを残そうとするあまり、大切なものを失ったのです。

この星の名は「メモリアル」。記憶を記録することでオモイデを失った人々の星。あなたも記録しておきたい思い出があるのなら、立ち寄ってみてはいかがでしょう。


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