第1話少女の叫びと魔物
ゴブリンが五匹なにかを取り囲むようにして、奇声をあげる。
それはまるで、これからの獲物に喜び、叫んでいるようにも、また、これからの獲物に哀れみ、嘆いているようにも見える。
答えはおそらくどちらでもない。ゴブリンには知性がほとんどない。本能のままに行動した結果、それが全て。
そんなゴブリン達に囲まれた、黒の修道服に、無理やり縫い付けたようなフードを被った少女は叫ぶ。
「なんでこんなことに。私が望んだことはそんなにいけないこと!?ただ!私は!繋がりが欲しかっただけなのに。どうしてよ。」
少女の叫びは最後は呟きに変わり、静かな迷宮の暗闇では響くこともなく、これからの少女の運命かのように消えていった。
ゴブリンが一歩ずつゆっくりと少女に近付く中、少女はこれまでのことを走馬灯のように思い出していた。
あれは8歳の頃だったか。家族が魔物に殺された。本当に突然のことだった。基本的には迷宮内にしか存在しない魔物のはずだが、その日はどうしてか小さな村にその魔物は存在した。
理由はのちにわかった事だが、娯楽として魔物を檻に閉じ込め、飼う者達も存在する。それを売り買いしたりするわけだが、その魔物が突然変異、凶暴化し、檻を壊して脱走したとのことだ。
しかし私にとって理由なんてなんだっていい。そんなことはどうでもいい。
重要なことは、父と母が死に、妹も腕を引き裂かれ、私の腕の中で息を引き取ったという事実だけだ。そして私だけが、金髪の女性に間一髪のところで助けられた。
何度も泣いた。何度も吐いた。何度も悪夢を見た。何度も自殺を考えた。
けどその度に私をその魔物から助けてくれたあの金髪の女性の言葉が蘇る。
「人生に絶望するのは構わないわ。けれど諦めてはダメよ。家族を失った悲しみは分かる、私も経験があるもの。けれど家族はまたできるわ。生涯、自分を支えてくれるような繋がりがきっとまたあなたにもできる。諦めたらダメ。」
金髪の女性は、私の肩に手を乗せ、腰を落とし、私と目線を合わせて、ゆっくりと心を込めて呟いてくれた。
私はその時の言葉と瞳を一生忘れない。助けてくれた金髪の女性はどこまでも強い瞳をしていた。今でもその吸い込まれそうな力強い瞳を鮮明に思い出せる。
そして、私はその金髪の女性に連れられて、迷宮都市セルセイムに来て修道院で暮らし始めた。
そこでの生活は実際に楽しかった。家族のことを思い出すと、発作のように泣いたり吐いたり魘されたりと、さまざまな症状が出たが、みんな優しかった。
けれど、私は見目麗しい見た目をしているらしく、何度も人攫いにあった。
今ではその見た目が憎たらしく、素顔は完全にフードで隠している。
その度に謎の仮面の女性が助けてくれたのだけれども、金髪を隠せていない時点で誰かはわかっていた。幼いからといって助けてくれた恩人の特徴を忘れるほど私は恩知らずではなかった。
私は気づいてないふりを続けた。
見守ってくれていることが嬉しかった。
だから、私は気づかなかった。その女性が負けることがあるなんて。
結果として、女性の仲間が女性と私を助けてくれたが、私をいつも見守ってくれていた、金髪の女性は右腕を失った。
レイピアを鮮やかに扱っていた彼女の右腕を、私が、私のせいで、奪ったのだ。
女性は有名な冒険者だったそうだ。だが、女性は私のせいで冒険者を引退した。
本当に悲しかった。比べることなどできないけれど、家族が殺された時と同じくらいの悲しみを抱いていたと思う。
けれど、私は繋がりを諦めることはできなかった。女性がまた、諦めちゃダメと言ってくれたからだ。
その後は本当に私が繋がりを求めていいのか自問自答を繰り返していた。
女性の人生でとても大事なものを奪った私が、自分だけ幸せを、繋がりを求めていいのかと悩みながら生きていた。
そこで私は迷宮探索をする冒険者の存在に興味を持った。
女性が何を求めて迷宮探索をしていたのか、女性がどんなことをしていたのか。女性のことを知れば、私も女性のように強くなることができるかもしれない。
女性についても詳しく調べた。女性の名前は、アイシャ.クラウドテッド。金の鷲と呼ばれるギルドに所属する冒険者だった。
2つ名という特別な冒険者にのみ与えられる称号こそ与えられていなかったが、冒険者の中で彼女はレイピア使いで5指に入ると言われる最上級冒険者だったそうだ。
冒険者として強くなれば、アイシャのような力強い瞳を持つことができるのだろうか。その答えはいくら考えてもでるものではなく、結局私も冒険者になりたいと考え、冒険者ギルドの敷居をまたいだ。
結論から言えば、私に冒険者としての才能は皆無に等しかった。本当に悲しいくらいに私は戦闘の才能がなかったのだ。
私は冒険者として活躍し、アイシャのように強い女性になることは諦めた。諦めるなと言われたけれど、これは違う。
人には向き不向きがあるとわりきって、冒険者になることは諦め、繋がりは別の形で求めることにした。
冒険者になって活動してみたことが無駄だったとは決して思っていない。
なぜなら、冒険者として活動するうちに冒険者を好きになったうえ、冒険をすることの楽しさを知った。
だからこそ、繋がりは冒険者の方と、助けてくれたアイシャや、私の大好きな冒険者と冒険について語り合いたい。そう考えるようになったのも必然だったように思う。
そんな中で、ギルドという存在についてもその概要を知ることになった。
ギルドは、数人から数百人の冒険者の集合体。パーティーとは違う。そこのギルドメンバー全員を家族とし、家族が困っていたら助ける。それがギルドの掟だった。
私はそのギルドという存在に惹かれた。私にとってなにより望んでならない、繋がりもあるうえ、冒険者の手助けもできる。
幸いギルドを立ち上げること自体は誰にでもできる。お金だってそんなにかからない。大手ギルドになると維持費だけでも相当のものだが、ギルドを立ち上げ、Fランクギルドの維持費を払う程度なら私でもできると考え、17歳の若さで、私はギルドを立ち上げることとなった。
そしてギルドを立ち上げてからも、人は集まらない、厄介ごとには巻き込まれる、騙されて大量の借金はできる、本当に苦労の連続だった。とその時のことを思い返そうとして、そこで私の思考は途切れる。どうやら、それを思い返している時間はないらしい。
なぜなら、一歩ずつ近づいてきていた、ゴブリンが私の目の前まで来て実際に腕を振りかぶっているからだ。
私は次の瞬間には、くるであろう衝撃に備え、フードで隠された、目を硬くつぶり、歯を食いしばった。
そこから数秒が経っただろうか。一向に衝撃がこないことを不思議に思い、自然と目が開かれる。
「どう、して?」
少女の目が開かれた時に見えた光景は、何者かに突進され、ゴブリン達が吹き飛び、または矢を受け、倒れていく姿だった。
「まさか、助かったの?」
少女が淡い希望を抱き、周りを確認し、ゴブリンを吹き飛ばした存在を認識する。
それは、決して少女が想像していたような存在ではなかった。
少女は今、まさかアイシャがまた助けてくれたのだろうか?冒険者こそ引退したが、腕を失ってもなお強いアイシャが、まだ私を見守ってくれていて、助けてくれたのではないだろうか?とまで考えた。
そんな理想を抱き、期待を込めて実際に見た存在は、理想とかけ離れた存在だった。
まず初めに認識したのは、全身骨の魔物、スケルトン。しかもそいつはやけに骨の体が大きく、通常のスケルトンの二倍に近い大きさだった。間違いなく普通のスケルトンではない。
次に認識したのは、小柄で赤い帽子を被ったゴブリンだった。その個体も普通ではない。いや、見た目は帽子の色が普通の緑の帽子ではなく赤色の帽子をかぶっていること以外は、普通のゴブリンだ。
しかし、弓を持ち、スライムを肩に乗せているあたりが帽子以上におかしかった。
そしてゴブリンの肩に乗っているスライムに眼を向けた。
初めに認識した二体が普通のモンスターでなさそうだったため、よく観察して特殊な部分がないか探したが、見つからない。おそらく普通のスライムなのだろう。
四体目として認識したのは、犬のような体をしたコボルトだった。
この個体も普通ではなさそうだ。少し大きめの体躯に、右前脚の鋭く伸びた黒く長い爪。通常のコボルトは白い爪が短めに生えてることを思い出し、この個体がどうみても普通ではないことは明らかだった。
五体目として認識した魔物に対して、私は今日一番の驚きを示した。
五体目の魔物はレッサーヴァンパイアだった。ヴァンパイア種、それは迷宮内でも本当に珍しい存在だ。レッサーでない、ヴァンパイアは圧倒的な力を誇り、美しい見た目だと聞く。迷宮内でも数十年に一度、上級冒険者が、深層と呼ばれる深い領域で見ることがあるというくらい貴重な存在だ。
とはいえ、レッサーヴァンパイアは弱いうえに、見た目が醜い。しかして、進化すればヴァンパイア種となる存在のため、その存在は貴重などという言葉すら生温い。
今見える五匹の魔物を全て認識したところで、周りに他の魔物がいないところまで確認して少しずつ少女は自らのおかれた状況を認識していく。
「あれ?私、今の状況まずくないかしら?さっきのゴブリン達なんて、生温いレベルの凶悪な魔物に囲まれてるじゃない。おかしいわよ!私、今助かったと勘違いしたのに。さらに絶望的な状況になるなんておかしいじゃない!」
それは我に帰った少女の魂の全力の叫びだった。
それを聞いていたスケルトンは人間味に溢れた笑い方で笑う。それも人語を話しながら。
「あははははは。面白い娘だ。レッサーの右目の美しさに目を奪われていると思ったら急に喚き散らすなんて、情緒不安定なのかな?」
スケルトンは両手を広げて、少女をからかうような言葉をかける。
「何笑っているんだ。人の言葉まで使いやがって、一体なんなんだお前らは!」
少女は自体が飲み込めず、人語を解しているという重要なことすら見逃し、スケルトンの発言に反発する。
要は少女は混乱しているのだ。
「貴様らのようなわけのわからんやつらに弄ばれ、殺されるくらいなら、私は自ら命を絶つ。逆らっても勝ち目などない。逃げ切れる可能性すらないのだからな。」
そう言って、少女は自らの首にナイフを突きつけるが、少女の持つナイフはそこからピクリとも動かない。
自殺しようとする少女の頭に女性から言われた諦めるなという言葉が反芻するのだ。
少女の中で諦めるなという言葉はもはや楔に近かった。この状況の中で覚悟が決まらなかったわけでは決してないのにナイフが全く動かない。
しかして少女のその行動は状況を一変した。
対面するスケルトンがなぜか尋常じゃないほどに焦りはじめた。
「ま、待て。待つんだ。自殺など両親が悲しむぞ。考え直せ。」
骨しかなく、舌すらない口の一体どこからそんな大きな声を出しているのか分からないが、スケルトンは大声で叫んで少女の自殺行為を止めにかかった。
そこで少女はスケルトンの姿を眺めて、不可解な目を向ける。
なによ、こいつ私を弄んで殺すつもりなんじゃないの?
「あんた、何者なのよ。」
問答無用で殺されるわけではないと分かり、頭が冷静になってきた少女は謎のスケルトンに問う。
「ふざけて悪かった。俺は、スキルで魔物に憑依している人間だ。君に危害を加えるつもりなどない。」
スケルトンは、骨ゆえに表情などないが、真面目な声音でゆっくりと自らのことについて伝える。
しかし、スケルトンの言葉で少女の頭はさらに混乱することとなる。
こいつ一体なにをいっているの。魔物に憑依するスキルってそんなの冒険者についての書物を読みあさっていた私ですら見たことはもちろん、聞いたことすらないわ。
しかし、一瞬の思考と、困惑の末に、冒険者について詳しく知っている少女だからこそすぐに1つの結論へと至る。
その結論は、ユニークスキルというスキルの存在だ。稀にその者のみにしか使えない、世界で唯一のスキルが発言する者がいるという話だ。実際にそういったユニークスキルを所持した冒険者は存在する。
ユニークスキルは強大な力を内包しているため、ユニークスキルを待つ冒険者はそれぞれ順調に成長すれば、深層にも潜れる冒険者へと育っていることも。
中には魔物に憑依するというスキルよりも、世界の理から外れたユニークスキルも存在するし、実際にその冒険者の名前も知っている。
迷宮都市最強と言われる冒険者もその1人だ。そこまで考えたところで、少女はこのスケルトンの話を信じることにした。
信じようが信じなかろうが、私の運命は変わらないのだ。このスケルトン達がただの魔物なら私は死ぬ、ただそれだけの話だ。
だったら信じて生き残れる可能性にかけて話を進めたほうがマシだ。
と、そこで少女の頭に1つ名案が浮かぶ。
「ねえ。あなたギルドには所属してるの?パーティーは?」
見たところ魔物とはパーティーのように組んでいるようだが、人は見当たらない。ギルドどころかパーティーにすら所属していないユニークスキル保持者の可能性があるということだ。
そんな人物が自分の目の前に、自分を助ける形で現れた。もはや少女の頭には運命という言葉すら浮かんでいた。
「ギルドにもパーティーにも所属していない。この能力自体、話したのは君が初めてだ。口が滑ってしまった。」
そう言ってスケルトンは首をだらりと下げ、落ち込んでるそぶりを見せる。表情がないため少女からは本当に落ち込んでいるのか全く分からないが。
「なら、私のギルドに入りなさい。」
スケルトンの返事を聞いて、少女の中でその言葉しか出てこなかった。いろいろと理由を告げて、入ってもらえる口実を作ろうと頭では思考を一瞬の間に巡らせていたにも関わらず、少女の口からは真っ直ぐなその言葉だけが出てきた。
「だが、断る。」
スケルトンは即答だった。迷うそぶりなど一瞬たりとてない。問答無用で断った。
「な、なんでよ。」
まさかギルドの情報について尋ねたりすることもなく、即答されるとは思ってなかった少女は困惑する。実際のところ、ギルドの情報は未だに少女1人しか所属していないとてもギルドとはいえないギルドとしか言えないため、聞いてもスケルトンは断っていたことだろうが。
「理由は3つある。1つ、現状、1人でも困っていない。2つ、俺のスキルについては今のところ誰にも言うつもりはない。3つ、魔物とパーティーを組みたがるようなやつなどおらん。」
3本指を立て、1つずつ指を折りながら説明するスケルトンはどことなくシュールな光景だ。
「なら、あなたのスキルの情報について言いふらすわよ。」
もうギルド存続のために、先ほどまで無理に才能のない冒険者の真似事をして、命の危機にまで追い詰められていた少女に手段を選んでいる余裕はなかった。
「言いふらすなら言いふらせば良い。実際に目で見てみなければこんなスキル誰も信じん。そして俺は人まででは決してパーティープレイはしないし、人語を話したりもしない。」
「どこかで見られてて不思議に思っている人がいるかもしれないわよ。そういった人がいれば噂は信憑性を増して伝わるわ。」
「例えそうならそうで構わない。現状隠すつもりというだけであって、ばれたらばれた時だ。誰がそのスキルを所有しているかまではばれない。それにパーティーを組まない理由は俺が必要としてないからだ。」
スケルトンの表情は変わらないが、少女はその空洞の瞳があったであろう場所から確かに、強い意志を感じ取った。これは説得は、脅しは、無意味であろうと。
その意志を感じ取り、諦めかけた少女に恩人の言葉が蘇る。
「諦めるな。」
その言葉が少女にもう一歩踏み出す勇気を与えた。
「なら、私は死ぬわ。あなたが私のギルドに入ってくれないというなら死ぬ。もう何度もこの人生に絶望してきたの。もう嫌、諦めもつくわ。」
その言葉はスケルトンに憑依した何者かにさらなる脅しをかけるための半分嘘で、半分真実の言葉。しかし半分真実ゆえに、その言葉には確かな重みと真剣さがあった。
だがスケルトンの結論は変わらなかった。
「知らん、一度は止めた。先程の自殺行為は、俺がふざけたせいで死ぬかと思ったからだ。勝手に絶望して勝手に諦めて死ぬというなら死ねば良いさ。俺はそこまで付き合うつもりはない。」
スケルトンはそうして少女から目を離す。付き合いきれないそういったそぶりを見せることで、少女の自殺を止めることと、自分を諦めさせることの2つを達成しようとしたわけだ。実際のスケルトンに憑依している人物は、死ぬほど慌てふためき、もしスケルトンの姿でなかったら、狼狽を隠すことができていなかったことだろう。
「そう。」
その一言だけ呟き、少女の両手で握られたナイフは高く、首筋を狙う形で構えられる。
少女の眼は、確実に覚悟を決めた眼をしていた。鋭く釣り上げられた瞳がゆっくりと閉じられていく。
その瞳が閉じられた瞬間、高く構えられたナイフが、少女の首筋に吸い込まれる形で、勢いよく振り下ろされた。
「ッ!!アイリス!」
スケルトンは名前を呼ぶだけで、その名前の者に意図を伝え、その者は正確に意味を汲み取った。
その瞬間少女のナイフは首筋にわずかに切り傷をつけたところでピタリと止まった。
アイリスと呼ばれたレッサーヴァンパイアがその右腕を突き出し、魔法を発動したのだ。その魔法によって少女の自殺行為は止められる。
「やっぱり、助けて、くれ、た。なによ、悪い人じゃ、ない、じゃない。お願いよ、私のギルドに入っ、てよ。私と一緒に、生きてよ。」
緊張の意図が切れたのか、そこで少女の意識は途絶え、紐の切れた人形のようにパタリと音を立ててその場に倒れた。
「はぁぁぁぁ。何だってんだこのめちゃくちゃな子は。面倒事は勘弁してくれよ。」
スケルトンは右手を髪の生えてないツルツルの頭に置いて、嘆く。
「絆様。どうなさるのですか?」
そのスケルトンに向かって先程魔法を放ったレッサーヴァンパイアが問いかける。
「どうもなにも、折角助けてやったのにここで死なせるわけにもいかないだろう。ギルドに入らないと自殺するというならギルドに入ってやるしかないさ。絶対に俺のスキルについてはギルドメンバーに黙っててもらうし、パーティープレイとやらにも参加するつもりはないが。まあ、形だけだよ。」
やれやれとスケルトンは表情のない顔を左右に振ることで呆れた態度を示す。
「全く、絆様は本当にお人好しですね。言葉はきついことが多いのに、結局は自分を曲げてでも他人を見捨てられない。でも、私はそんな絆様が好きですよ。」
レッサーヴァンパイアはそう言って醜い顔で微笑む。
「グギャギャギャギャ。ご主人の甘い部分は全員周知のことだろう。我々がその部分も含めてフォローしていけばいいのさ。」
赤い帽子を被ったゴブリンは汚い笑い声を上げながら、声をかける。
「ガルルルルル!」
コボルトは鳴き声をあげて、主人の意向に従う意志を伝える。
スライムも体を震わせて主人を信頼している意図を伝える。
「お前達は本当にできた仲間だ。すまないな、そしてありがとう。」
スケルトンはそう言って、倒れた少女の近くに寄って呟く。
「どうしようもないお転婆娘さんや、仕方ないからあんたのギルドに俺は入ってやるよ。」
そう言って少女を自分の背に抱えて迷宮を歩き出す。
その時に、そしてその出会いこそが、この迷宮都市最大派閥として成長していく、ギルド"繋がりの楽園"が一歩、歩み始めた瞬間だった。
次話から、主人公が少女に出会う前の話を書いていきます。