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第6話 この世界の魔法。

この世界には魔法が存在する。


人の身ではできない現象を引き起こすもの。奇跡。


地球に空気があるのと同じように、この世界には魔力があって、その魔力を使うことで魔法として世界に現象を発生させることが出来る。


使い方は簡単。体内の魔力を体外に導くだけ。


……はい。簡単じゃありませんでした。私も習得するのにだいぶかかりました。「体の中の血管に、血液じゃなくて魔力が流れている、って考えるんだ」これは兄さんの言葉。体に魔力が巡っているっていう発想。なんとなくわかった。


回路みたいなものかな、って思ってる。でもそれとは別に魔力を溜めるものもあるらしいし。心臓かな。魔法を使うのには魔力が必須。だからどれだけ体内に魔力を溜められるかで、どれだけ魔法を使えるか変わってくる。


私も兄さんも魔力の量は多い。多少の無茶はいけるよ、なんてのも言ってたな、兄さん。


魔力が切れれば外から魔力が勝手に溜まるわけだけど、満タンになるのには時間がかかる。戦闘中とかは魔力の残量を気にしながら戦わないといけないから、自分にどれだけの魔力があるのか知っておかないといけない。いずれ村を出て旅するなら私も知っておかないとだよね。


魔力切れるとなんだか体が怠くなる。重くなる、っていうか。動きたくなくなるんだよね。あっ、おわかりですか、私何度か魔力切れまで魔法使っちゃいました。もちろん家で、だけどね。外でやったらどうなるかわからないし。


私が闇系の魔法を使えて兄さんが光系の魔法を使えるように、魔法には系統がある。これは体内の魔力とそれを実行する時のなんとかが〜みたいなことを兄さんが言ってたけど、理解できなかった。人それぞれ得意があるように魔法にも得意がある、ってことだよね。自分の系統以外の魔法は使えないから、不得意ってこと。


国で騎士なんてやってるからか、兄さんに聞けば大抵のことは教えてくれる。村の人とは知識が段違い。


そして系統なんだけど大きく分けて、火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。


火属性

火を司る。火出せるのはいいと思う。自然発火。便利。火なら簡単に想像できるんだけどなぁ。でも使う人はたくさんいるからどんな魔法があるのかはわかってるんだった。そして恥ずかしい詠唱をしないといけないんだ……。ファイヤーなんとかみたいな感じかな。……いや、ここは地球じゃないんだからファイヤーなわけないか。アレクはこの属性。


水属性

水を司る。そこら辺の水飲んでお腹壊すこともない。使い勝手良さそう。夏でも氷出せるらしい。戦争だかで真夏に1つの国が氷に覆われることになった、みたいなのが教会の本にあった。たくさんの人が犠牲になって、今でもその氷は溶けてないんだとか。氷漬けで死ぬとか嫌だな……。氷出せるならお湯出せそうだけどそれは火属性の人と協力しないと無理っぽい。温度を操れるわけじゃないのか。


風属性

風を司る。シーナの使う魔法。使い方次第で空飛べるんだって。空飛んでみたいな。ゲームじゃシーナは風の刃で鍵とか壊して逃げて来たんだよね。風の刃か。見えない刃。怖い。


土属性

土を司る。植物生やせる。村の人にもこの属性の人がいて、魔法使って畑の野菜とか育ててた。というのも土と雷は光と闇の次に少ないんだと。土を司るのに植物?とは思った。土の栄養を操ってるのかなぁ。後、岩出せる。これはわかる。土っちゃ土。そして何より、上位の魔法では金属生成ができるらしい。錬金術だ。いいな。武器とか作り放題。王都とかの盛んな所では職人たちがこの魔法使ってるんだって。兄さんに教えてもらった。そして回復。植物を育てる時の要領でやってるんだと思う。ちなみにノアの属性。


雷属性

雷を司る。いや、雷を司るって何?電気、とはわかるけど、雷を司るの?この属性の人で微弱な雷を他人に当てて連れ去る、って犯罪をしたのがいて、あんまりよく見られてないらしい。でも闇よりはマシ。いいよね、雷撃ち出すとか。ちょっと間違えたら自分も感電しそうだけどさ。ほとんど話したことがないけど、攻略対象の1人、シーナと逃げてきた男の子ルフトの属性。……のはず。ゲームではそうだった。


光属性

光を司る。光って言っても種類はたくさん。明るくするだけなら火でもできるし。対魔物戦で無類の強さを誇る属性。勇者。普通、乙女ゲームとかでもヒロインが光属性で〜みたいなの多いのにヒロインは風。謎。光の剣とか使ったり、ビーム撃ったりするんだって。あと治癒。味方を強化することもできるんだと。どうりで兄さん騎士で訓練とかしてるはずなのに筋肉ムキムキになってないと思った。それを言ったら頭のてっぺんに拳骨落とされた。痛かった。


闇属性

闇を司る。私の扱える属性。悪くない。少し間違えたら魔物を強化してしまうらしい。まあ、“魔”物だしね。闇と魔。相性よさそう。んん?その原理で行くと魔法はどうなるんだろうか。うーん、わからん。あとで兄さんに聞こう。


時々、本当に時々2つの属性を使える人もいるらしい。何千年に1人とかの割合で出てくるんだって。


地球にはないものだけどファンタジーとして知識はあった。だから魔法について調べるのはとても楽しい。





●●






「こんにちは。今日も会いましたね」


「……こんにちは」


教会、書庫。


奴はいた。書庫の床に座り込み、取り出した本を読んでいる。狭い書庫で顔を合わせないなんて無理な話で。


「今日も魔法についてですか?」


「そう」


あ〜直視は避けたい。今日は髪を下ろしていて、腰まであるサラサラとした青い髪は座り込んだ状態の彼を覆っている。服装はよれた薄いシャツにグレーのズボン。イケメンは何でも着こなすというのは本当らしい。シャツが中途半端にズボンに突っ込んであるから普通の人なら変に見えるはずなのに。しかもボタンをきちんと上まで閉めていないから変なエロさがある。下ろした状態の彼はゲームでもレアだった。ずっと見てたい。


「いつも思うのですが、なぜ僕をきちんと見ないんですか?」


私は推しを前にして普通になんて接せる人じゃないからです。


「必要がないから」


必要はある。上から下まで眺めてたい。どこがどう好きだ、ってずっと話してたい。でも引かれるからしない。引かれたくはない。


これ以上何か言ってこないように、目当ての本を取り出し、開く。


『何故彼らは闇に魅せられたのか』


地球にあればだいぶやばい感じの題名の本。過去の闇属性の魔法を使う人たちのことが書かれている。


どれだけ大きな被害を出したのか。どれだけ残虐性のある人物たちだったのか。


いいことをしたなんて全く書いてないな。私、普通に旅なんてできるんだろうか。


「思い出したのですが」


ノアの声が書庫に響く。


「何」


「旅の途中、闇属性の魔法の使い手に何度か出会ったことがあります。最後に会った彼女は、そう、彼女は。瀕死にした魔物を笑顔で嬲り、魔物の悲鳴を聞いて喜ぶ(ひと)だった。しばらく彼女の家でお世話になりましたが……ある夜、寝ている僕は悪夢で起きた。ハッと目が覚めましたが、体は動かない。暗闇の中、僕の傍に彼女が立って僕を見下ろしている。口の端を嫌な感じに上げ、僕へ手を伸ばす。恐怖でした。触れた箇所から何かが流れ込んでくる。堪らず僕は声を上げた。その時でも体は動かない。彼女は言う。『ひとも魔物も、口から出る悲鳴は同じね。もっと聞かせて?』と。気がつけば彼女の家ではなく、どこかの洞窟に移動していました。父が僕の声を聞いて彼女を殴り、気を失った隙に僕を担いで逃げてきたと。そう聞きました。また、とある村では闇の魔法を使う者が崇められていて、危うく洗脳され奴隷になる所でした。また別の場所では────」


「もういい」


なんだよ悪いことしか言わないじゃないか。何、お前もそうなんだろ、って言外に言ってます?


魔物を笑顔で嬲ってる女はもう最初からやばい奴って気がつけよ。


「はじめの彼女の使う魔法は、精神を蝕み、何日か後遺症に悩まされました。どうしようもなく苦しく、辛く、一日中狂ったように頭を掻き毟り声を上げ地面に蹲っていました。旅どころではなかった。父は早くできるだけ彼女の家から遠く離れた場所へ移動したかったらしいのですが、僕がこんな調子ではどこへも行けない。幸い、父も僕と同じ土属性の魔法の使い手であったので、洞窟の入り口を空気孔を残して塞ぎ、中の声が聞こえないようにした。二日目になると僕は自傷行為を始めた。持っていた短剣で手足を突き刺し、剣を取り上げられると頭を地面に打ち付け始めた。父は僕を縛り上げるしかなかった。三日目は落ち着いていました。普通に話せた。もう大丈夫かと荷物をまとめ移動することにしたのですが、夜になり、僕がおかしいことに父は気がついたそうです。この日の夜の記憶はありません。目の焦点が合っていなく、口をだらし無く開け涎を垂らしている。意味の無い言葉を発し、フラフラと歩く僕は突然魔法を使い父を攻撃し出した。そこそこの魔法を使える僕は、父に気絶させられるまで攻撃を止めなかったそうです。四日目の昼、僕は目を覚ましました。父は隣で横になっています。見れば父の左足が無い。途中で力尽きたのかまだ完全に傷は塞がっていなかった。驚いた僕は慌てて回復魔法を使い、傷を塞ぎ父を起こしました。治癒とは違い、無くなったものを再生することはできないから。起きた父から話を聞き、二日移動した後この村へ着きました。怪我をした、とは言いましたが僕が父の足を奪った、と教えたのは貴女が始めてです」


一方的にね!


ものすごく重い話だった。誰かが死んだとかいう話ならもっとあれだったけど、この話も充分やばい。止めて、と口を挟む間もなかった。


「結局何を言いたいの」


「この村を出る、と言っていましたが貴女の使う闇の魔法は貴女の考えるほど良く見られていません。気をつけて、と」


良く見られていない魔法を使う女の家でお世話になる奴の言葉か、これは。


「わかってる」


馴れ合うことは難しい、ってこと。そんなのわかってる。本でもこんなに悪く書かれているんだし、良くは見られてない。ノアの言ってた闇の魔法を使う者が崇められていた村、っていうのも多分その闇属性の魔法を使う人が村人たちを洗脳してたんだろうし。


「父の足は貴女のお兄さんに治してもらいました。まだ少し、この村にはお世話になると思いますが」


それだけ言うとノアの視線は本に戻った。


何が言いたかったんだ……。


それだけやばい人がこの世界にはたくさんいるってこと?お前は同じになるなよ、ってこと?なるかよ!……いや、前世の記憶が戻る前までならわからないな。やりかねん。


でも今は違うから。


「私は魔法をそうやって使うつもりはない」


これだけは言っておかないと。ノアの話を聞く限り、闇属性の魔法の使い手は少ないとはいえいることにはいるんだから。もし何かあって、それを私のせいにされたらたまらん。


「そうですか」


顔を上げることなく、ノアはそう一言返事をした。

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