第12話 庇う気持ちがミリほども湧きません。
あんまり相手がビクビクしてるとイライラしてくるってことがわかった。
「はぁ……」
「何かしたの?この人すごいことになってるね?」
「ローズに怯えるなんて愚かだな。根本的に信じるもの変えてやるべきか?」
「……え?」
お兄さんを見下ろしながらため息を吐いていたら後ろから2人分の声が聴こえてきた。
振り向けば、ルスと兄さんが立っている。ここがだいぶ狭い場所だから2人が立つと定員オーバー感ある。
「遅いから来ちゃった。シンくんがうるさくって。ボクも気になってたから」
「何もなくて良かった。信者に捕まったのかと思った」
そんなに心配されるほど時間経ってたかな?全く時間のこと気にしてなかった。
「どうしてここが……」
「ん〜。ボクの力、とでも言っておこうか。神に不可能はないんだよ」
ドヤ顔でそう言うルス。その通りなんだろうけどムカつく。
ノアの顔でドヤ顔してる、っていうのもムカつく原因の1つ。絶対にノアはそんな顔しないってわかってるけど、ノアの違う一面が見れたみたいな気分になってしまう。
「おい、お前。どうしてこうなった?ここは何だ?話せるだろ、全部吐け」
「けほ……お前ら…………。マジだ話せる!……え、でもあんた達敵で……いやもうエルピス様にも見捨てられたしここにもいられないのか……。はい。上司が裏切りその上司に見捨てられて、上司の居場所を吐けと所属する組織に尋問されてました。ここは見ての通り裏切り者だったり捕らえた者を一時的に保管しておく場所」
私がルスを見てる間に兄さんが治癒か何かで治したらしく、お兄さんは急に饒舌になりベラベラと話し出した。
「ここくるまでに通路が4つに別れた場所があった。あれはどこへ繋がっているの」
「うわぁぁあああ!?いた、そうだ、闇がいたんだった、来るな、寄るな!」
「……一回死ぬか?」
●●
ラクスよりチャラ男の方が近いなって感じ。あ、このお兄さんの私への態度の話ね。闇は穢らわしいから寄るな、なんなら自分たちのために役立ってくれ、みたいな。
近寄るのも話すのも無理!って態度取られてる。兄さんはプルプル震えながら貴重な情報源だから、って我慢してて。
兄さんへの態度は普通……というかそれより上かな。やっぱり信仰する光だから?ルスへは、中身が神だと知っているらしくとてつもなく礼儀正しく接してる。
兄さんたちが来る前は私に対してあそこまでビクビクしてたくせに。
「派閥ごとに持っている実験場への道ですよぉ。許可された者しか入れないように魔法がかかってる。だから敵対派閥の実験場へは入れない。左から、神肯定派、エルピス様、否定派、でここがみんな使える総合尋問室だとか牢屋とか。1番広いとこ。収容されているモノは多いけどぉ、存在を知っているのは極一部っていうね」
「で?そのエルピス様とやらはなんで裏切ったんだ?」
チャラ男=エルピスだったよね、確か。前にこの人叫んでたから。
確かに見てない。ノアを連れていたのはチャラ男で、戦争のためにルス教は人体実験をしていて。ノアもその1つに使われてしまった。
だけどチャラ男はルス教を裏切っていて……?
「主を降ろす儀式のためにエルピス様は動いていたんですよぉ。でもルス教は主を人の身に降ろし、殺すことで世界を掌握しようとしていたみたいで。人の身に押し込められたくらいで主は死にませんよねぇ?ねぇ、ルス神」
「…………。そうだね。普通そんなことでボクは殺せないよ。だってボクはこの世界の主人だ。この世界があるからこそボクが居て、ボクが在るから世界が存在する。ボクを殺すなんてそれこそ──世界を壊すくらいのことでもしなきゃ、ボクはこの世界の主人であり続けるよ。世界とボクの繋がりはそれくらい深いものだから」
普通、か。
この言い方だと普通じゃない方法がありそうな感じ。後半の世界を壊す以外に。ほら、枢機卿も言ってた。教皇がいれば神は殺せるって。
あの、魔法攻撃反射っていうチート持ちの戦闘無理そうな教皇が?何か別のそう言った力を持ってるっていうこと以外に考えられないよね。
ルスは死なせない。ルスの死は、そのままノアの死にもなるから。……自我が無い時点でノアは生きていると言えるのかな?でも消えて無いってルスが言ってたか。出てこられてないだけ、って。
なら大丈夫。ノアは、生きてる。
「やっぱり!上はそのつもりだったらしいんだけど、エルピス様はそれに逆らって止めたから追われてるところ、って感じですねぇ。エルピス様実は肯定派だったのか……。俺はエルピス様の助手みたいな立場で、エルピス様他に俺みたいなの作ってなかったからぁ、見捨てられた俺が何か知ってるんじゃないのか、みたいな感じで尋問中、的なぁ?何もわかんないんですけどぉ」
イラつく話し方するなぁ。頭悪い人みたい。だから捨てられたんじゃないの?みたいな、とか感じ、とか。
知性を感じられない。
「へぇ。何も、わからない、か。事実みたいだな。アイツが自分の弱点になるようなものを放置しておくとは思えない。喉の魔法はコイツが知られたくない何かを知ってると思わせておくためのものか。ふん、何も知らないのならお前に用はない。とりあえずローズへの態度、謝罪しろ」
「へ?ジョ〜ダン〜。なんで?なんで闇に頭下げんの?する必要ある?無いで……がっ!?ぐ、ぅ……!」
「あはは、怒らせちゃった。ローズちゃん、先に戻ろうよ。多分エグいことになるよ、ここ。グロはちょっと……。ボク影の中歩いて戻りたいな。あそこ、落ち着くから」
兄さんの顔は能面みたいになっていた。
ルスの言う通りだろうね。話しててもイラつくだけだったし、何か味方してくれたわけでもない。この人はただの敵。
兄さんがそうすることで落ち着くのなら任せましょう。
エタりそう




