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俺の家まで追いかける狐君。もしかして、暇なのか?

立ち並ぶマンション、夜を感じさせる街灯。

魔族特区を抜けた俺は、そのなかを颯爽と走っていた。



ヤポン達から逃げるのは簡単だった。

もともと迷路みたいな道を通ってきていたのだ。

つまり、来たときみたいに右往左往して進めばいいというわけだったからな。



自分の現在地も、だいぶわかってきた。

知っている町並みが目に入ってきてくれたのは、幸運といわざるを得ないだろう。



後は、ここをこう曲がって、次に右に行けば………。



「や、や…………やっとついたぁー。」



思わず第一感情が口から漏れる。

たどり着いたのは、小学生の遊び場の定番、「公園」だ。



ん、目的地はここなのかって?

あぁ、なるほど。お前らは俺に家があると思ったのか。

残念だったな、今の俺に固定資産税を払う義務は、「ない」。



それにこの公園は使い勝手がいい。

北、南、東、西と東西南北に設置されたベンチ。

落書きがまったくされておらず、建設当時の面影を残すトイレ。

さらには、俺を警備員から隠してくれる木々達まで完備されている。



………どうだ、住みたくなってこないか?

俺としてはへたな借家に住むより、よっぽどましなのだ。



俺は安堵の表情を浮かべて公園に足を踏み入れる。

家に帰ってきたときの安心感は、誰もが知っていることだろう。



今日は、どこのベッドで寝ようか?

北か? 南か? うーん、そうだな、ここはなんとなく「東」にしよう。



そう思った俺は東のベッドに近づいていく。

あぁ、一応言っておくが、ベッドとは「ベンチ」のことだ。



後もう少しでたどり着く。

やっとだ、やっと寝ることができる。

ここまで長かった。辞職を余儀なくされ、オークに追いかけられ、

借金取りの狐の獣人にからまれ………。



だが、俺はすぐにベッドには寝っころがらなかった。

実は、寝る前に確認しておかなければならないものがあるのだ。



「え、えぇっと。確かここらへんに……。」



ベッドを素通りした俺は、その先にある茂みに手を突っ込んだ。

確かここに、大事なものを置いておいたはずなのだ。



しばらくガサゴソガサゴソしていると、手がなにかに触れた。

その感触は、茂みのそれとは違い、硬さがあった。



「お、あったあった。いやー、ちゃんとあってよかったぁー。」



そう言って俺が茂みのなかから取り出したのは、

昔から時代に深く関わってきた武器、「剣」だった。



俺は取り出した剣をじっくり眺める。

今の俺を他の人が見ると、変態銃刀法違反者が馬鹿をやっているようにしか

見えないだろう。



なぜそんなに剣を見つめるのか?

そこで、あぁそうか、お前は剣マニアなんだなという意味がわからない

称号をつけるのは、やめてほしい。

この行為には、立派な「理由」があるのだ。



実を言うと、これは親父の形見なのだ。

刑務所に入った親父が使っていた剣……ではなく、親父が生前、俺のために

残しておいてくれたものらしい。



らしい? その言葉遣いに疑問を抱くのは、人間として当然だろう。

そう、これは親父から直接もらったものではない。



親父が死んだとき、俺はまだ5歳だった。

当時の俺は、親父の棺の前で、わんわん泣いていたらしい。

まったく、自分のことながら情けない話だ。



その十年後、俺のもとをいきなり訪ねてきた、「親父の友人」と名乗る

人物から譲り受けたのが、この「剣」というわけだ。



俺は親父をよく覚えていない。

なにせ親父が死んだときはまだ5歳だ。

そのときのことを完全に記憶しているという者は、なかなかいないだろう。



だが、この剣を見ていると親父を思い出せそうな気がしてくるのだ。

根拠はない。だが、これを使っていたときの親父の顔が浮かび上がってくる

気がする。



「ひっひっひ。やっぱりここにいたんやな。」



はっと、声が聞こえる方へ振り向く。

そこにいたのは、さっきまいたはずの「ヤポン」だった。



「なんや、お前さん。わいがお前さんの居場所を知らんと思っとったのか?」



「な………………。」



「ふん、なんもしゃべれんくなったみたいやな。

 まぁええわ、じゃ、さっきの続きやらせてもらうでぇ。」



またもや後ろの二人が出てくる。だが今度は逃げるすべがない。

俺は一歩も動くことができなかった。



ドン。 



見上げるとそこには猿とサイが立っていた。

目には強者の称号である力強い眼差しが浮かんでいる。



「あ……あぁ………あ。」



恐ろしくてまともに発音できない。

俺は今、初めてまともな「恐怖」という感情が生まれたかもしれない。



ばごぉぉぉぉん。思いっきり殴られる。

視界がぼやける。一瞬意識がとおのきそうになる。



どかっ、ぼごっ、ばちいぃぃぃん。

俺はとにかく殴られまくった。



一発一発に痛みを感じる。たぶんこいつらはヤポンが雇ったプロなのだ。

こういう行為に慣れているということが、殴られている俺にはよくわかる。



これが弱いやつの宿命だ。強いやつは弱いやつを痛めつける。

弱肉強食の世界での常識はこんなものだ。



誰も助けてはくれない。そこから抜け出したいのなら………



--------自分で立ち上がるしかない--------



「ひゃっひゃっひゃ。お、おい、お前ら。もうやめてあげろよ。

 ひゃっひゃっひゃっひゃ。」



ヤポンにそう言われた二人の獣達は、ズンズン下がっていく。

残ったのは、ボロボロのボロ雑巾になった俺だけだ。



「ひー、ひーー。いやー、面白いものを見せてもらったわ。

 ん? お前さん、それは-------。」



ヤポンは雑巾が持っている剣に注目してくる。

もちろん俺はそれにかまう余裕はない。



「ははーん。お前さん、その剣、業物とみたわ。

 よし、お前さんがよければの話なんやけどな。その剣、わいにくれたら、

 借金、少なくしてもええで。」



悪魔の囁きだった。この剣をやつにあげれば、俺は助かる。

ドックン、ドックン。心臓の鼓動が俺を追い詰める。

ははっ、そうだよな。これをやればいいんだ。それだけで………。



「…………………。」



「ん、なんや。早く答えた方が懸命やで。それとも、また痛い目に

 あいたいんか?」



「…………………。」



「おい、どうしたんや? びびっとんのか?」



「…………………。」



「ふん、イライラするやっちゃのぉ。もうええわ。

 力ずくでもらいまっせ。じゃ、お願いしますわ。」



ドン……ドン………ドン。

俺は人生でこのときほど時の流れを遅く感じたことはないだろう。

ごつい二人が近づいてくるのが、何分間にも何時間にも感じられたのだ。



おそらく俺はこのあとまたボコボコにされるだろう。

そして、剣を取り上げられ、全てを失うのだ。だが………………。



こんなことは、もううんざりだ。自分の運命は自分で決めてやる。

世界のルール? 知ったことか。俺は俺のルールを突き進める。



これから、だ。俺はここから始まるのだ。

抗え、抗え、抗え、抗え。



-----------自分を信じるんだ----------



次の瞬間、俺は、いつの間にか剣の柄に手をのばしていた……………。






























































うぅーん。なかなか物語が進まないなぁ。

この先、どうしよっかなぁ。


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